もぐささん(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『もぐささん』とは、栃木県出身の漫画家・大竹利朋が2013年12月19日から2014年2月13日まで『となりのヤングジャンプ』(集英社)にて、連載していたフードラブコメディ作品。ある日、主人公の小口虎雄は“普段は大人しい女の子“という印象しかないクラスメイト・百草みのりの大食いを目撃してしまう。その後、学校でも異常な食い意地と食欲を周りに隠しながらも、食の魅力に負け、幸せそうに食べるみのりを知っていく。美味しそうな料理と食い意地が張っているみのりの可愛さに心惹かれていく漫画となっている。

神下との交流

自分と合う最高のパートナーを想い焦がれる神下(右)

サークル「くいしんぼう」の新歓コンパに遅れて登場したのは、幹事長である神下であった。
神下はビールにトマトを素手で潰し入れ、それを飲みながら「サークルの幹事長の神下だ」と自己紹介した。神下はどんな女性も見惚れるようなイケメンである。そして自己紹介後「俺が考案したスペシャルデザートを食べてくれ」と自作の料理を持ってきた。
それはデザートピザだったが、普通のものとは違う。マシュマロとピーナッツバターをベースに、コーヒーゼリーと納豆をトッピングしたものだった。
神下は「食とは冒険!常に新しい組み合わせに挑戦してこそ!」という信条を掲げているためにこうなった。一応、神下の中では「納豆がコーヒーの苦味を優しく引き立てる。納豆もピーナッツもコーヒーも豆類だから合うはず」という理論はある。しかし周囲の人は、イケメンから用意された料理がゲテモノであることに落胆とドン引きを感じていた。

しかし、みのりだけは「どんな味がするんだろう!」と心の中でワクワクしていた。味わったことのないものを味わってみたいと、みのりは神下の信条も受け入れていた。誰も食べないためにみのりも手をつけられない。
まずは自分からと神下がそのピザを一口食べる。「うまい!春風のような味がする」と言われ、みのりはますますそのピザが食べたくなる。細井も食は細いものの、食への冒険心はあるのでそのピザを一口食べた。そして「これはいけるかもしれません、今まで食べたことのないような味がします」と高評価だった。細井に勧められ水戸も一口食べてみる。「悪くないかも」と案外いけたようで驚いていた。
みのりもこの流れで食べてしまおう、とピザに手を伸ばした時にうっかり醤油をこぼしてしまう。ピザを食べ損なったみのりだったが、神下は同じく食を愛するもの同士からみのりの食い意地を見抜いているようだった。

とある休日、アルバイト探しに街へ繰り出すと偶然神下と出会う。
「俺の冒険に付き合え」と強引にみのりの手を引っ張り、ソフトクリーム屋へ連れていく。そしてソフトクリームの上に唐揚げを乗せ、神下は食べろとみのりに勧める。一口食べると、みのりの脳内には小さい頃に行った遊園地が思い浮かんだ。
それは遊園地のフードコートで、唐揚げとソフトクリームを欲張って食べた時の味だった。みのりは感動しながら感想を神下に伝えると、お前面白いなと神下に気に入られてしまう。
それから突然、神下は「百草。俺の恋人になれ、そして朝昼晩と毎日一緒に飯を食おう」と告白した。みのりは「付き合っている人がいるので」と小口のことを思い出しながら、きちんと告白を断る。恋人のことを聞かれたみのりは、京都で料理人になるために修行をしている、と小口のことを話す。神下は「道は違えど同じ食の冒険者か、それは素晴らしいパートナーだな」と小口のことを誉めた。

神下は「食への冒険」を第一にしており、彼女とショートケーキを食べに行った時も、ショートケーキに梅干しを乗せたらフラれた。他にも彼女が作った料理を勝手にアレンジして、フラれたこともあった。だからこそ、同じ熱量で食の冒険をしてくれるパートナーを欲しがっているようだった。

そんな話をしている間にソフトクリームが溶け始め、偶然近くで遊んでいた子供のボールがみのり達の元へ転がってきた。神下はボールを拾うからと、ソフトクリームをみのりに預ける。その間にもどんどんソフトクリームは溶けて、液体が滴りそうになっていた。それをもったいないとみのりは死角で、ソフトクリームの雫を口で受け止めた。
しかしその瞬間を神下に見られており、「お前食い意地やばいな」と驚いていた。
恥ずかしさから逃げ出すみのり。すぐに神下に追いつかれ「そんなにその食い意地が嫌なのか」と聞かれ、みのりは「こんなの恥ずかしいし嫌いです」と答える。
しかし、神下は「俺はいいと思うぞ、その食い意地」とみのりの食い意地を受け入れたのだった。その理由は「自分の大好きなやつに似ている」から。その大好きなやつとは実家で飼っているパグ犬の「パグミ」ことで、犬とそっくりと言われみのりはショックを受ける。
神下はその後、みのりの食欲は黙ってくれているが時々「パグミ」にかけて「モグミ」と呼んで揶揄うようになる。

アルバイトを始めるみのり

「アルバイトは2割引き」に負けてアップルパイを食べるみのり

1人暮らしのお金も全て自分で払うため、アルバイトを探し始める。
面接を申し込んだ先は、若者から働く大人まで人気のコーヒーチェーン店「パラダイスコーヒー」だ。小さい頃、母と東京へ来た時に訪れたことのあるお店でもある。その時初めてキャラメルマキアートを飲み、その美味しさに感動したこともあり、このお店に決めた。

店長の苦木(にがき)と面接時、苦木に「うちの店で好きなメニューはあるかな?」と聞かれ、食い気味に「アイスキャラメルマキアートキャラメルましましです!」と答えてしまう。苦木は「面接に来てくれた人には出してるから」と、アイスキャラメルマキアートキャラメルましましをみのりに出してくれた。
みのりはキャラメルマキアートのあまりの美味しさに面接に集中できず、苦木が飲み物を飲むタイミングと同時に一気に飲み干した。天国かと思うほどの美味しさにうっとりするみのり。面接も終わりに近づき、苦木は「最後に何か言いたいことや質問は?」と聞いた。みのりは勢い余って「おかわりしたいです!」と言ってしまい、苦木も少し引いていた。完全に不合格だと肩を落としたみのりだったが、無事に合格しパラダイスコーヒーでアルバイトをすることとなった。

早速翌日からアルバイトが始まり、同い年の猫居(ねこい)と共にレジ周りの仕事をすることになった。
みのりはショーケースのケーキを見ると食べ尽くしたくなるので、アルバイト中は目を逸らしながら仕事をしている。また前日からメニューを見ては自分でドリンクをカスタムするならと考えていたため、レジの仕事はすぐに覚えることができた。
バイトの終わり時間が近づき、1人の客に「熱々のアップルパイとホットコーヒー」とオーダーされ、みのりはアップルパイをレンジで温める。温め終わりレンジを開けると、シナモンの芳しい香りが立ち込めた。嗅げば涎が出てしまうと、みのりは呼吸を止めて客の方へアップルパイを持っていく。客に声をかけたが1回では反応してくれず、呼吸の出来ないみのりは瀕死の状態になる。2回目の声かけでようやく客は気づき、みのりは息を吸うことが出来た。
一命を取り止めバイトを終えると、苦木から「アルバイトは店のものを2割引きで食べられるぞ」と聞き、みのりは我慢していたアップルパイを食べてしまうのだった。

水戸と細井の恋模様

みのりと水戸が街を歩いていると、偶然カフェで女性と仲睦まじく話す細井の姿を目撃する。
その光景を見た水戸はその場から走るように逃げていき、みのりは慌てて後を追いかける。水戸に追いつき理由を聞けば、「細井さんのこと好きかもしれない」とみのりに告白した。水戸は「元ヤンの自分が細井と釣り合うわけがない」と思っており、見ているだけの片思いで充分だった。しかし、いざ細井が他の女性といるところを目撃してしまうと、辛い気持ちが溢れてきた。
翌日、また偶然にも駅で細井とその女性が会っている場面に遭遇してしまう。水戸がショックを受ける前に、その女性は細井に向かって「じゃあまたねお兄ちゃん!」と笑顔で去っていた。このことから女性は単なる妹だと知り、水戸は細井と仲良くなりたいと再熱する。

水戸はみのりをハンバーグ屋に誘い「細井さんと2人きりで話がしたいけど、どうしたらいいのかな?」とみのりに相談する。「百草さん彼氏いるし、恋のアドバイスが欲しいの!」と切実に頼み込まれる。メールで細井を誘うことにし、みのりと水戸で文章を考えていく。みのりは「同級生だからラフな感じに、カフェで妹さんを見かけたことも織り交ぜて…」とアドバイスしながら、文章を完成させて細井に送った。
数分後に細井から返信が来た。「妹と行ったあのカフェはおすすめだよ、また行きたいな」という文面から、みのりはカフェに誘うことを水戸に提案する。水戸は一度は打つものの、そんなことは送れないと削除する。みのりはケーキについて熱く語ったら細井から誘われるのではないかと思い、ケーキに関する厚い文面を作成する。
水戸はやはり勇気が出ず、みのりに「パフェ奢るから送って!」とお願いした。みのりはパフェの誘惑もありつつ、友達の恋を応援するために送信ボタンを押した。そして細井から返ってきた文面は「今度2人で行きましょう」だった。喜ぶ水戸とみのり。約束通り水戸はみのりにパフェを奢り、幸せいっぱいでみのりは食べていた。

その後、「くいしんぼう」メンバーで行ったバーベキューなどで、水戸と細井は度々接近するようになる。2人きりになったり、主に水戸から話しかけたりなど、仲は深まっているようだが、付き合うまでの関係には発展していない。

小口との再会

大学1年生の夏、小口が仕事で東京に行くことになり、その時に会おうというメッセージが送られてきた。
みのりは早く会いたい気持ちから、当日駅のホームまで小口を迎えにいく。小口を待っている間、ホームから出汁のいい匂いがしてきた。ホームにある立ち食い蕎麦屋だ。
憧れと空腹からみのりは食べたくなるが、間食をしないと決めているみのりは必死に堪える。
しかし、お腹が鳴り始めた。立ち食い蕎麦が提供されるまで約3分と聞き、私なら2分で食べられると確信する。小口が到着するまでに食べ切れると思い、みのりは野菜かき揚げ蕎麦を注文した。時間は少ない。みのりは恥ずかしさよりも、早く食べ切ることを優先する。勢いよく啜って食べ、かき揚げもつゆに浸して一口で食べ切った。
これで終わったと思いきや、かき揚げのかすがつゆに浮いて、キラキラと輝いている。たまらずみのりはつゆも飲み干した。
その様子を到着した小口が見ており「3ヶ月ぶりだけど相変わらずだね!」と笑われてしまうのだった。3ヶ月ぶりの小口は大人びて見え、みのりは色んな意味で照れていた。

小口とのデート

小口とのデートで食べた「スカイツリー天丼」とみのり

みのりと小口は、みのりの提案で浅草・仲見世通りでデートすることとなった。
みのりはこのデートで必要以上に食べず、小口に大人になったと思われたいという目標を立てる。もちろんデートなので、小口から「何か食べよう」と誘われた時は食べるルールだ。

デートが始まり、雷おこしや団子など程よく食べ歩きをしていく。そんな時、芋羊羹が目に入り、みのりは食べたい気持ちから小口の方を見た。小口はあまり興味がなさそうで、小口から食べようと誘われることもなさそうだった。みのりは芋羊羹を諦めよう、と心では思っているがどうしても食べたい。その気持ちから小口をじっと見つめてしまい、食べたい欲を視線で訴えかけてしまう。
小口はそれに気づき、みのりの分だけ芋羊羹を買ってきてくれた。小口は「食べるの我慢してるでしょ?俺はずっと百草さんにいっぱい食べてほしい」と言われ、いつもの私でいいとみのりは喜ぶ。その後は、浅草メンチカツや人形焼き10個をペロリと平らげた。

デートをしていく中で、みのりは小口に最近のことを聞く。小口は京都でのことを、みのりに話し始めた。まだ修行して1年目ということもあり、包丁は握らせてもらえない。毎朝早くから市場の買い付け、仕込みの手伝いや皿洗いなど、雑務ばかりこなしている。もちろん大変だが、これを乗り越えれば成長できるという確信があり、小口はキラキラした顔で夢を語っていた。そんな小口を見てみのりは、やはり食に溺れているだけの自分が恥ずかしくなってしまう。

夜になり、夏祭りへと向かう。出店の誘惑、そして小口から勧められることによって、みのりもついつい食べてしまう。
成長している小口とは違い、何も変われていない自分が情けなくなり、みのりは泣き出してしまう。そして自分の思いを小口に告白した。「食い意地が張っているばっかりで、わがままばかり。小口くんは大人になってるのに」と弱音を吐き出す。
すると小口は「俺もわがままあるよ」と呟いた。そして「俺、実は百草さんが作った料理が食べたいと口にする。みのりはプロの料理人を目指している小口に、食べさせられるような腕も料理もないと戸惑う。小口は「そうじゃなくて、純粋に好きな人が作った料理食べたいだけだよ」と言った。みのりは初めて聞いた小口のわがままに「今度会った時は絶対に料理を振る舞う!」と約束した。
最後は小口と緊張しながら手を繋ぎ、愛を深めることが出来たのだった。

島原まりとの交流

デートを終えたみのりは、前期授業のレポートを終わらせるために水戸と食堂へやってきた。
そこに偶然現れたのが、ハンバーグ定食を持った島原まり(しまばらまり)である。島原はナイフとフォークを使い、上品にハンバーグを食べていた。その様子にみのりも水戸も目を奪われる。
昼食時ということもあり、水戸のお腹が鳴る。水戸はおやつとしてバナナを取り出し、みのりにも分ける。食べている時にうっかり水戸がペンを落としてしまい、島原の方へ転がっていく。島原をそれを拾い、水戸の元へ届けてくれた。水戸はお礼としてバナナを島原に渡す。島原は「いいのですか?バナヌありがとうございます」と、独特なバナナの発音をしながらお礼を言った。
そしてテーブルに戻り、島原は鞄から突如お皿を取り出した。バナナをお皿の上に乗せ、ナイフとフォークで皮を剥いていく。加えてバナナを輪切りにし、皮を器のようにアレンジして食べ始めた。
その上品な食べ方にみのりは感銘を受け、もっと近くで見たいと勢い余って自己紹介する。島原も自己紹介し、水戸も加わり3人は友人となった。島原はサークル「くいしんぼう」にも加入した。

みのりの料理修行

小口に喜んでもらいたい一心で、母にレシピを聞きオムライスを練習することにしたみのり。
拙い手つきで野菜を切り、フライパンでチキンライスを作る。無事成功し、卵で包もうとするがうまくいかない。何度も何度も挑戦するが、見栄えが悪いものばかり。自分では美味しいと感じる味も、小口が食べたらどう思うかと不安になっていく。
そんな時、小口から電話がかかってくる。小口に、小口のためにオムライスを作っていたことを明かすみのり。すると小口は「今すぐ東京に行こうかな」と呟いた。小口はどうやら仕事で怒られているばかりで、少し凹んでいるようだった。元気付けたいみのりは「来週末、お弁当作って京都まで行くよ!」と小口に宣言するのだった。

宣言したはいいものの、料理の腕に自信がないみのりは水戸と島原に相談する。その結果、3人でお弁当の予行演習をすることになった。当日、島原のマンションにて料理をする3人。島原は料理下手で、この中では一番料理の出来る水戸が先生となり予行演習は進んでいく。
卵焼きやアスパラベーコンは完成し、残るところはメインの唐揚げだ。みのりは小口食堂の味を再現したいと思っており、調味料の分量を変えた試作品を6種類用意していた。そしてそれぞれ揚げて、3人で試食する。それも美味しいが決め手がない。

そんな時、島原が「男の人の意見も必要だから」と神下と細井を呼んでいた。神下は唐揚げを1つ食べ「これじゃダメだ、お前は唐揚げのことを何も分かっていない」と言い放った。
そして神下は「今から俺が唐揚げを作ってやる」と言ってキッチンに立つ。水戸とみのりは、また変なものを入れるのではと心配していたが、神下は至って真面目に手際よく作っていた。完成した唐揚げをみのりが食べる。それは美味しいものだった。
神下は「俺のもお前のもうまい、ただ俺が言っているのは美味しさのことじゃない。食べる人のことを考えて作っているのかということだ」とみのりに言った。「私だって小口くんのこと考えてます」と反論するみのりに、今度はタッパーに入った唐揚げをみのりに差し出す。「これは俺が朝揚げた唐揚げだ。食ってみろ」と神下に言われ、今度はそれを食べてみる。当然冷めているが美味しい、しかしどこか油っぽさも感じた。
神下は「それが6時間後の唐揚げだ。お前が小口に食べさせる味だ」と指摘した。神下の思いは「お弁当とは至福の時間であり、その時間を台無しにするな」ということだった。そして「冷めても美味い唐揚げを作れるように腕を磨け」と真剣に神下は伝えた。
神下の実家はお弁当屋さんであり、母1人で切り盛りしているため、お弁当に関しては口うるさい一面があるようだった。
そして神下は京都黄金院の生八ツ橋46種と引き換えに、みのりに冷めても美味しい唐揚げの作り方を伝授した。

手作り弁当を持って京都へ

手作り弁当の小口の感想を、緊張しながら待つみのり

水戸や神下たちの教えてもらいながら、小口へのお弁当を完成させたみのりは京都へ降り立っていた。
小口が修行している料亭がある祇園四条へと着いたみのりだったが、予定より1時間も早く着いてしまった。小口に会うまでの時間、ぶらぶらするつもりだったが甘味処を見つけてしまい立ち寄る。中に入り、しらたま抹茶パフェを注文する。
近くのテーブルには舞妓が掛けており、はんなりと上品に食べる様子に見惚れるみのり。そのうちにパフェが届き、味わいながら食べていく。
その時、小口から連絡が入った。仕事の用事で、昼休みの時間内に料亭へ戻れるか不明とのことだった。みのりは「それなら私が小口くんの元へ行くよ!」と返信をして、目の前のパフェを食べ切り店を出た。
タクシーに乗って向かおうとしていたら、店から舞妓が出てきて、みのりに話しかける。「あんさん、忘れ物どす」と手渡されたのは、小口のための弁当だった。みのりはうっかり店に置いていってしまったようで、舞妓が追いかけてきてくれたのだった。みのりは再三、お礼を伝えてタクシーに乗り込んだ。

タクシーに乗り、小口の元へ向かうみのり。再会した小口は仕事用の割烹着を着ており、普段とは違う様子にみのりはときめいていた。
早速、河原にかけて弁当を手渡すみのり。小口は喜びながら蓋を開けた。中身はオムライス、タコさんウィンナーや茹で卵、ベーコンアスパラガスなど彩り豊かだ。小口は「すごいよ!」と驚きながら喜び、オムライスを一口食べる。小口は「すっごく美味しいよ!めっちゃうまい!」とぱくぱく食べてくれた。
みのりはそこで、先日から気になっていた小口の悩みを聞いた。小口は親方から怒られてしかいないこと、一生懸命頑張っても足りない自分に落ち込んでいた。そして京都でやっていける自信も失っていることも、みのりにこぼした。みのりは月並みな言葉でしかフォロー出来ない。
そんな時、小口がもう一段お弁当があることに気がつく。そこには唐揚げが敷き詰められていた。みのりは小口食堂の味を真似て作ったが、自信がないことから言わずにいた。小口は「小口食堂の味を意識してるなら食べたいよ!」と唐揚げを口に入れる。懐かしい味がして、小口は「初めて料理を人に食べてもらった嬉しさ」や初心を思い出した。それにみのりが一生懸命に作ってくれたことも感じられ、小口は嬉しくなる。みのりは安心したが、本当のところを小口に告白する。
小口のことを考えて作っていたら1日3食唐揚げになってしまい、最終的には自分が食べたいから作っていた、と。「だから小口くんのために作ってたのか分からないけど…」と恥じるみのりに、小口は「1日3食唐揚げ!?と驚いていた。そしてその食に対する真面目さと素直さに、小口は心が軽くなる。みのりは一生懸命唐揚げと向き合って、1日3食唐揚げだった。自分はまだ一生懸命さが足りないと、「俺はまだ頑張るよ!」と前を向けたのだった。

小口は仕事があるため、弁当を食べ終わった後はすぐお別れとなった。みのりはそのまま帰る予定だったが、食べ歩きをしていたら新幹線を逃してしまい、京都で一泊することになる。小口のことが忘れられないみのりは、小口のいる料亭を少しだけ見に行こうと決める。
ホテルを出て、料亭まで歩いているとお腹の虫が鳴ってしまう。偶然、昼間の舞妓と出会い一緒にまかないを食べに行くこととなった。舞妓が案内した先は、割烹「百葉(ももば)」であり小口の修行先の料亭だった。

舞妓と共に百葉に入り、カウンターにかけると向こう側に小口がいた。お互いに驚き、そのままみのりは小口のまかないを食べることになる。
小口が出したのは「京味噌の焼きおにぎり、じゃこの混ぜおにぎり、京野菜とお麩の味噌汁」だった。上品な舞妓の隣で食べるのはと、みのりは恥ずかしかったが小口のまかないを食べたい気持ちが勝ち食べ始める。あまりの美味しさに「めっちゃうま〜!」と目を輝かせて、小口を褒め称える。
小口が照れていると、居合わせた小口の先輩が安心したようにその様子を見ていた。そこで先輩は「いつも厳しくしているけど、それは親方がお前に期待しているからや」と教える。怒られているばかりの小口はその言葉に驚き、厳しいのは自分を信じてくれているからだと嬉しくなった。
みのりもその姿に感化され、自分も夢を闘いたいと思うが夢が定まらず、悩み始めるのだった。

実家へ帰省するみのり

夢が決まらないことに悩んでいたみのりは、偶然かかってきた母からの電話で「あったかいご飯作って待ってるから、いつでも帰っておいで」と言われ帰省する。

栃木へ戻ってきたみのりは家族と会い、母と妹・うみとスーパーへ行く。その道中、窓から見えた景色は変わっており、自分以外が変わっていることに寂しさを感じる。うみも中学生になっており、化粧品に興味が出てきているようだった。自分だけ何も変わらず、周りは成長したり、夢に向かって闘っていることに落ち込むみのり。

買い出しを終え、実家のキッチンで母とうみと料理をすることとなった。母は「1日3食間食なし、食欲と闘うと言ったけどうまくいってるの?」と核心をついてくる。みのりは「私ダメダメなの…何一つ成長できてない」と告白する。母は「みのりは成長してるよ」と笑って否定した。みのりがスーパーで値段を見てお肉を決めていたこと、料理の手際や、うみに包丁の扱い方を教えていたこと、全て見ていた。「それはちゃんと成長している証拠よ」と励ましてくれるのだった。

父も帰宅し、家族全員で夕食をとっていると、父から「みのりは将来どうするんだ?」と聞かれる。まだ決まっていない、ということが恥ずかしく口籠もっていると、母は「ご飯も夢もゆっくりでいいのよ」とアドバイスをした。焦る必要はなく、毎日ゆっくりでも成長しているのだから夢は見つかる。
それを知れたみのりの心は、少し軽くなった。

多部との再会

翌日、みのりは多部と再会する。相変わらず「大食い勝負するぞ!」とみのりを外へ連れ出した。
多部が案内した先は、宇都宮餃子店だった。行列について待っていると、たまに周りの人が多部に話しかけてくる。というのも、多部は大食い女子大生グルメレポーターとして、主にテレビで活躍しているようだった。そのため地元では顔を知られており、時々話しかけられているようだった。

店に入り、机いっぱいに餃子を頼む2人。勢いよく食べる食べとは反対に、昔以上にゆっくり食べるみのり。その様子を見て多部は「1日3食にしてるんだってな、そんなに食欲が恥ずかしいのか」とみのりに聞く。みのりは「恥ずかしいよ、…多部ちゃんは気にしなさそうだからいいよね」と少し嫌味っぽく返してしまう。
しかし、多部は怒ることなく「分かるぞ、その気持ち」と共感する。多部は「テレビに出ると、ネットなんかで豚だとか食い意地モンスターだとか、悪いことを言ってくる人もいる」と自身にあったことを話し始めた。人と違うすることをすれば、反発されることもある。それが大人の世界だから仕方がない、と多部は割り切って達観していた。
多部は笑い「だけど、あたしの食いっぷりを好きって言ってくれる人がいる。あたしはそれで十分だ!むしろ食欲には感謝してる!」と言った。

みのりは母から言われたことや、多部との会話で心が変わっていた。この異常な食欲のおかげで、小口ともみんなとも出会えた。そう思えるようになったいた。食欲は闘う相手ではないと、みのりは自分の食欲を受け入れたのだった。

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