坂本ですが？（アニメ・漫画）のネタバレ解説・考察まとめ

『坂本ですが？』の概要

『坂本ですが？』とは佐野菜見により、2011年から2015年に掛けて『ハルタ』(KADOKAWA)で連載された漫画、及びアニメ作品である。
「このマンガがすごい! 2014」にてオトコ編第2位を獲得。
元々は『Fellows!』volume18に載った読みきりであったが、人気を得て連載化された。
2016年にはスタジオディーン製作でアニメ化し、TBS系で全12話が放映された。
アニメ冒頭に流れるナレーションをルパンの次元役で有名な小林清志が担当した。
全13話であるが、熊本地震の影響で12話は放送されずBlu-rayのみ収録されている。

主人公「坂本」によるクール＆スタイリッシュな日常を描いたギャグ作品。
荒唐無稽とも取れるほどのスタイリッシュでシュールな展開でコミック一巻発売時から話題を呼び、アニメも好評であった。
アニメでは、作中不良キャラが喫煙するが「不良であるという演出的な表現である」と認められそのまま放送された。
声優は坂本の「緑川光」を始め、レギュラーキャラからモブキャラまで「石田彰」「杉田智和」「堀江由衣」などの豪華有名声優が多数起用された。

『坂本ですが？』のあらすじ・ストーリー

春の話

県立学文高校の1年2組、スタイリッシュな高校生・坂本は、そのクールな行動で学校中の注目を集める人気者。そんな彼を中心とした1年間の学園生活を綴った物語である。

入学直後、既に注目を集めていた坂本を快く思わない不良3人組が、坂本をターゲットにする所から話は始まる。不良3人組の熾烈ないじめも坂本にかかれば優雅なひと時にしかならず、不良3人組は坂本を理科室に連れ込み直接暴力を振るおうとするが、火災が発生する。しかし坂本のスタイリッシュな発想、行動により無事沈静化させ、不良3人組とも和解し、坂本の学園生活は進んでいくのである。

季節は春。2年生の不良、丸山は坂本をパシリとしてこき使うが一方の坂本は、丸山に対して完璧な「おもてなし」を披露。丸山を満足させる。が、余りにも行き過ぎた「おもてなし」を命じた事により、丸山は終始坂本に付きまとわれる事となる。その状態が続き丸山は恐怖から坂本を解雇。その後丸山は坂本恐怖症となる。

夏の話

2年生の不良、丸山が1年の坂本に怯えているという現状は、示しがつかないと同2年生の8823（ハヤブサ）先輩は坂本に正々堂々としたタイマンを申し込む。しかし当の坂本はタイマンを受ける理由がない。
指定場所に来ないことを危惧した8823先輩の舎弟2人は、坂本の友人久保田の大事なものを奪う。
その時に「8823参上！」のメッセージを残し、その罪を8823がやったのだと坂本に勘違いさせる。
これを見た坂本は久保田の為に8823先輩の下に向かい、斬新な手法で8823先輩と対峙し、悪行を行ったのが舎弟であったという事の真相に気づいた上でこれを打ち負かす。そして坂本は8823先輩・舎弟2人と久保田を和解させた。

秋の話

秋。文化祭の季節。8823先輩をはじめとした不良グループも文化祭を楽しもうと準備を進めていた。そこへ彼ら不良すらも恐れる3年生、深瀬が現れる。
深瀬は件の坂本に強く感心を持ち、”人を1人学校から消してしまうゲーム”を始める。文化祭の準備の最中、坂本のクラスにいる不良（すっとこどっこいズ）を言葉巧みに誘導し、1年2組の文化祭の展示物を滅茶苦茶に破壊し、その罪を坂本に擦り付ける。
坂本の居場所をなくすという深瀬の思惑だったが、坂本は持ち前のスタイリッシュな立ち回りとクールな思考ですっとこどっこいズが犯人である事を見事証明し、且つ彼らと1年2組を和解させる画期的な案を文化祭で行う。深瀬の”ゲーム”を見事破ったのである。

冬の話

冬。街に雪が降る。雪は初めてだという坂本に不良3人組の1人、あっちゃんは雪遊びを坂本にレクチャーするが、あっという間にマスターしてしまう坂本。悔しがるあっちゃんに深瀬が現れ、「坂本に認められたいなら彼と戦い勝たねばならないのではないか」と言われ、あっちゃんは坂本にタイマンの雪合戦を挑む。結果は坂本に思いやりのカイロをぶつけられるという形で終わり、あっちゃんはその行為を受け坂本に認められるどころか相手とも捉えられてないのだとショックを受ける。そんな彼に深瀬は「坂本さえいなければそんな悲しい気持ちを持つ事もなかったのに。皆を狂わせる彼を消す方法を知りたくはないか」と彼をそそのかす。

坂本のクラスメイトで写真を撮るのが趣味の恵は、一年間で撮り溜めたクラスメイト達の写真を皆に見せて、焼き増しの注文を皆から受ける。あつしは坂本の写った写真を貰おうと手を上げようとして止める。
雪合戦の一件があってからあつしの様子はおかしくなっていた。
自分が写った海での写真を一枚持ち出し、その時のことを思い出す。坂本が海に潜ったのを真似して、泳げないのに坂本に続こうとしている所の写真であった。
本当に坂本が居ない方が良かったのかと迷うあつしの元にまた深瀬が現れた。
深瀬は「坂本のせいであつしは自分を見失っている。何故ならあつしは不良であり学校行事に楽しく参加するような人間では無いのに、坂本の影響で行事にちゃんと参加するようになっていた」という事を指摘する。
自分はワルだと言うあつしに深瀬はタバコを渡す。坂本と出会ってからはタバコをシャボン玉遊びに変更し、以降吸っていなかったのである。
深瀬は、坂本は手の届かない存在であり、だからこそ人を狂わすのだとあつしに言い、坂本を消すある方法を教えた。

卒業式の話

3年生の卒業式の日、坂本は1年生にして生徒代表のスピーチをする。式の最中にバットを持ったあつしが乱入し、坂本を消し去ろうと壇上で暴れる。8823先輩達はあつしを止めようとするが、坂本はそれを制止する。
坂本は壇上であつしの攻撃を華麗に避け、それを卒業式のための催し物かのように演出し、教師達はすっかり坂本に騙されてしまう。
坂本とあつしの攻防は体育館中で行われ、体育館のギャラリー（バスケゴールの付近にある細い通路部分）であつしは体勢を崩し落ちそうになってしまう。坂本はあつしの手を取り助けるも、あつしはバットで坂本の手を攻撃し、手を離すように言う。
あつしは「もう自分なんかどうでもいい」と泣き出すが、坂本はあつしのそういう自分をさらけ出せる所が魅力だと言う。
坂本の手の握力が持たずあつしが落下してしまうが、坂本は自分のズボンを利用して手すりにぶら下がり、あつしを身を挺して救った。あつしは坂本のズボンが半分脱げて太腿が露になってしまったのを見て、そこまでして救ってくれた事を知り暴走をやめた。二人の行動は演出として扱われ、生徒達から拍手が起こった。

あつしは泣きながら坂本に謝り、8823先輩は深瀬に唆されたんだろうとあつしを慰めた。坂本は8823先輩に怪我した手を応急処置してもらい、止血しに保健室へ行った。
保健室には3年生である深瀬が式に出ずにゴロゴロと寝ていた。
坂本が3年の卒業式なのにここに居て良いのかと聞くと、深瀬は卒業するつもりはないようであった。
深瀬から見ると卒業とは夜の海であり、入ったら最後海の藻屑になるだけで、そうとは知らない生徒達が希望を頼りに海へ向かう姿を特待席（留年）で眺めるのが乙だと語る。坂本は「それは随分と窮屈そうだ、自分なら海へ飛び込んで新大陸を目指す」と深瀬に言う。

8823先輩は深瀬をこのままにしておくわけにはいかないと思い、心中する覚悟でいた。坂本は8823先輩達に良い考えがあるとある計画を持ちかける。
深瀬は卒業生退場の時にだけ式に出て、退場する卒業生を眺めていた。そこに坂本と8823先輩率いる不良達が登場し、「外の世界がどんなに荒波だろうと、てめえだけの灯台見つけて泳ぐのが筋ってもんですよね」と言い、不良たちは腕を組む。
何をしているんだと戸惑う深瀬に坂本が膝カックンし、深瀬は不良達で作られた波に乗って退場していった。坂本は「やれやれ。ちゃんと泳げてるじゃないですか」と見送った。
卒業式は無事成功し、深瀬は以降学校へ現れる事は無かった。

終業式の日、坂本は某宇宙開発組織に招かれたという理由で転校し、学校を去ることになっていた。クラスメイト達は坂本との別れを悲しみパイ投げをはじめ、坂本にパイをぶつけようとする。
各々坂本にパイを投げなら、坂本に対する気持ちを語っていく。坂本はパイを全て避け、坂本以外のクラスメイトは皆パイで顔が真っ白になった。
坂本はそんなクラスメイト達にいつものクールな顔で別れを告げ、教室を離れた。
靴箱では8823先輩が坂本を見送った。窓からパイ塗れのクラスメイトたちが涙ながらに坂本を見送る。坂本はそんなクラスメイト達を見て、これまで一度も見せた事が無かった切ない表情を一瞬だけ見せた。
校門で風紀指導の教師の角田が帰っていく生徒を見送っていると、そこに顔がパイで汚れた生徒が通りかかる。角田が「誰だ？」と尋ねると、その生徒は「坂本ですが？」と答えた。

『坂本ですが？』の登場人物・キャラクター

坂本（さかもと）

CV：緑川光

本作の主人公。下の名前は不明。
私立イノセンス学園出身。
顔は美しく、勉強もスポーツもできる上に人格も良く、動物に好かれ、困っている人を助け、謙虚で向上心があり、もはや超能力では無いかという程の有能さを発揮し、どこを取っても完璧な完全無欠の人間である。
全ての行動がクールでスタイリッシュであり、女性からの人気は高い。
口数は少なく不明な点が多いが、そのミステリアスさが魅力のひとつでもある。
男性からは敬遠されがちに思えるが、人間として規格外なためか久保田やあつしなど男子生徒からの人気も得ていて、8823先輩とも信頼関係を持っている。
学校以外の場所でもその行動は変わらず、街中でも1人でも坂本は坂本らしい謎の行動を取り続けている。
クールな一方、悪事を働く人間を下衆と呼び、久保田が酷い仕打ちを受けた時は勝負しに行くなど男らしさや人間味も見受けられる。
特に最終回の転校する日は、クラスメイトに見送られて作中で初めての悲しげな顔をし、坂本もまた人間であったのだと気づかされるシーンであった。
そしてそんな「らしくない」自分の顔をパイで隠し、タイトルの「坂本ですが？」という台詞を回収した。
転校理由は「某宇宙開発組織に招かれ」としているが、本当のところは不明。

1年2組

久保田 吉伸（くぼた よしのぶ）

CV：石田彰

坂本のクラスメイトで友人。髪型に拘りがある。
最初は不良たちにパシリにされカツアゲされていたが、坂本との付き合う内に立ち向かい、その後はいじめられている様子は無い。
8823先輩を慕うヤンキーたちによって自慢の髪の毛を剃られて坊主にされたことがあり、坂本は傷ついた久保田を見て8823先輩と勝負しに行った。
久保田は8823先輩と実行犯のヤンキー達に土下座で謝られ髪に良いワカメを差し出されたことで許し、皆でワカメパーティーをした。
作中で坂本と一番仲が良くいつも一緒に居て、放課後は坂本に勉強を見てもらっている。
本作のヒロイン的ポジションにいる。

前田 あつし（まえだ あつし）