銀と金(福本伸行)のネタバレ解説・考察まとめ

『銀と金』(ぎんときん)とは、1992年~1996年に『アクションピザッツ』(双葉社)において連載された福本伸行による漫画、及びそれを原作とするテレビドラマ、Vシネマである。銀王と呼ばれる裏経済界を牛耳る男・平井銀二との出会いをきっかけに裏社会に飛び込んだ森田鉄雄。株の仕手戦や巨額なギャンブルなど、バブル崩壊後の時代にうごめく闇の金脈を求めて繰り広げられる彼らの命を賭けたマネーウォーズが描かれる。

神威家の長男で衆議院議員。これまで兄弟たちを競わせ争わせてきた元凶である家長権そのものにうんざりし、秀峰の検査入院をきっかけに彼ごと葬り去ろうと計画を立てる。兄弟の中ではリーダー格であり、勝広によれば「秀峰と瓜二つの芯からの悪党」。

神威 勝広(かむい かつひろ)

神威家の四男。上の三兄弟に比べて出来が悪く、家庭内では長年にわたって差別、あるいは虐待をを受けてきた。邦男と共に秀峰と兄達への復讐を実行した際には、ショットガンやサブマシンガン、さらには防弾服にヘルメットと完全武装した姿で臨み、その場にいた松井組の組員を皆殺しにしている。森田を殺そうとした際、背後から抑えていた邦男に銃弾が当たる可能性を考え撃てずにいた隙を突かれ、秀峰に刺殺される。

吉住 邦男(よしずみ くにお)

4人の兄とは腹違いの神威家の五男。軽度の発達障害を抱えていたため、幼い頃から監禁・虐待され、その後は神威家で下男のような暮らしをしていた。心優しい性格だが、神威家に生まれてしまったことで、幼いうちに死別した母親と勝広以外からは愛情を受けてこなかった。兄の勝広と共に神威家への復讐を決行するが、森田の説得に一瞬心が揺らいだ隙を突かれ秀峰に射殺される。

河野 洋一(こうの よういち)

民政党総裁で農業水産省のトップ。次期内閣総理大臣の座を狙っての選挙資金確保のため、300億円を賭けた銀二とのサシ競馬勝負に乗る。人脈、財力、権力、あらゆる手を使って勝負を有利に進めるが、銀二の策略、そしてわずかな運にも見放され敗北する。

『銀と金』の用語

金の橋

3枚の絵画の中から本物のセザンヌの作品を当てるという森田と中条の勝負で使われた、文字通りの札束で作られた金の橋。もともとの取り決めでは5メートルの距離から絵画を鑑識することになっているが、それよりも近づきたいときに1センチの距離を100万円で買い、札束を専用の器具に固定、その上を歩いて絵画まで近づくことになる。中条は最終的に3億円を支払い3メートルの距離を買うが、結局自らの直感を信じることができず外してしまう。

誠京麻雀

蔵前が行っているオリジナルのルールが付加された特殊麻雀。銀二・森田との勝負もこのルールのもと行われた。
基本的なルールは通常の麻雀と変わらないが、ツモるごとに参加料として場にチップを支払わなければならない。局ごとに100万円から始まり、親にツモ順が回って来るたびに倍に上げるかどうかの選択権が発生する。そしてその半荘が終わった時点でたまった供託金はトップの総取りになるという麻雀である。供託金を支払いたくない場合は降りることも選択可能だが、その場合は全ての牌をツモ切ることになる。
また、通常の3倍のチップを支払うことにより一巡につき一回まで正規のツモの次の牌をツモり直すことが可能である。
さらに、役満を和了した場合、供託金とは別に祝儀が発生する。1000万円を基準の1として、参加料と供託金を掛け算で算出する変動相場制である。例えば参加料のチップが400万円でそこまでの供託金が12億円の場合、0.4×12億円で、4億8千万円の祝儀が発生することになる。

『銀と金』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

他人を信じられない人間は、とどのつまり自分も信じられない、信じることが出来ない…!

森田との勝負に敗れた中条の敗因をつづる文章の一節。
画商になってからの30年、中条は虚栄と欺瞞がはびこる世界でただただ人を疑い、騙す事で生き抜いてきた。そうした過程で身についてしまった、まずは猜疑心から入る習性が土壇場で出てしまい、もともと持っていた絵画への純粋な思い、直感をもってすれば容易に当てられる選択を自ら蹴散らしてしまう。己の所業による因果応報を浮き彫りにするシーン。

「開き直れん悪党なんて見苦しいだけ…迷えばいい人間か…?悩めば素晴らしいんかい…?」

ある食品メーカーの株を暴落させるため、毒物混入事件を起こしたことに対して激怒する森田に川田が言い返したときのセリフ。
実際の所業とは裏腹に、臆面もなく善人面をすることで体よく利益を貪る輩がいる。そうした輩に対してアンチテーゼを貫こうとする川田だったが、自身の主張をまくし立てるうちに最後には涙を流してしまう。その涙を見て彼が全くの冷血漢ではなかったことに安堵し、少し溜飲を下げる森田。勝つために悪党になろうと決意しつつも、そのラインを決めかねている二人のキャラクターと共有する葛藤が描写されているシーン。

「オレが積もう…!ヒジの高さまで」

7trie05051986
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@7trie05051986

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