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keeper9のレビュー・評価・感想

老トイプーと私
10

老犬との何気ない日常に涙でる……作者いいやつ

18歳くらいなのかな?老トイプードルと、駆け出し漫画家と思われる主人公女子のノンフィクションマンガ。途中に会社に行っている等の描写もあり、兼業作家さんなのでしょう。老トイプーと漫画家女子の話といっても、何か感動的なことが起こるわけでもなく、普通の女の子の日常と老犬の毎日が繰り返されるのですが、それがなんかほっこりしてあたたかくて、泣ける!そしてたまに出てくる漫画家女子の実家の犬のクリスの話もくすっときます。若い時は立派で元気だった犬が、もうなにもできなくてほにゃほにゃになって、おしめを付けてるんですけど、それをかわいいかわいいしている作者はきっと優しい人なのだと思います。毎日おしめつけてるんだよね?それも頭が下がりますね…!たまにでてくるご近所ちゃん(女子)とのやり取りも百合風味があり、これはこれでよいなぁとも思います。作者と犬と、その周囲の人間関係が温かい良作。絶対に読んで損はないので、ぜひぜひ読んでほしい作品です。グランドジャンプの連載作品らしく、単行本を買おうと思ったら出てないのが残念。コミックシーモアとヤンジャン、ゼブラックのアプリで読めます。私はシーモアで読んでいますが、シーモアの感想欄も温かいコメントが多く、作品も感想も優しい世界なところもいいです(笑)。

B壱
7

皮肉な能力者たちの争い

主人公と親友が争うという、悲しい状況になる本作ですが、問題となるのはそれ以上に彼らが持つ能力を維持するための"条件"です。

彼らはいわゆる能力者であり、この世界でその存在は"道化師"と呼ばれています。
道化師は先天性のものではなく後天性で、その条件は"虐待されること"です。

主人公である将太郎の能力は"生物の骨を咥えることで、その能力を利用できる"というもの。これは犬の骨を咥えることでその嗅覚などを使用できますが、その真価はそれだけではなく同時に複数の骨を咥えることで、複合的に生物の能力を使用できます。
将太郎が能力を維持するための"条件"は、一日一善。

一方、親友のエミネの"条件"は一日一悪です。

彼らは互いを思いやり、友情を大切なものと感じていますがその"条件"ゆえに一緒にはいられず、しかし将太郎はエミネと会うために、エミネは将太郎を守るための力を失うわけにはいかず、本当はしたくも無い一日一悪という"条件"に苦しみ、その正反対の将太郎も彼を傷つけるような自分の"条件"に苦しんでいる、という矛盾した状態です。

本作は多くの設定や伏線が回収されないまま連載が終了していて、一応の完結は迎えていますが未完の名作、といった印象です。

スクールガールズ
7

2020年にスペイン映画界に巻き起こった新風『スクールガールズ』

『スクールガールズ』は2020年に公開されたスペインの劇映画で、脚本と監督はピラー・パロメロ。出演はアンドレア・ファンドスとナタリア・デ・モニーナ。本作は、修道院に通うセリアが友人たちとの新たな経験を通して思春期への扉を開け、家族を、そして自分自身を知っていく過程を描きます。
ベルリン国際映画祭への出品と新人監督賞・クリスタルベア賞へのノミネートを皮切りに、今日までスペイン国内を中心に26もの映画賞を受賞。名実ともに2020年のスペインを代表する映画となりました。
監督・脚本を務めたピラール・パロメロ監督自身も4歳から修道院で学んでおり、長編デビュー作にしてスペイン映画界アカデミー賞とされるゴヤ賞作品賞・脚本賞を受賞した本作には、ピラール・パロメロ監督自身の体験が色濃く反映されています。
ピラール・パロメロ監督は、「きわめて保守的なスペイン修道院の教育と、オリンピック開催の熱狂渦巻く、外の世界に溢れる刺激には大きなギャップがありました。しかしわたしたち―1992年当時の教育を受けた女性たちこそが「勉強をし、独立して、なりたいものになれる」とはっきり感じることができた初めての世代だったのではないかと思います」と語っています。
韓国のキム・ボラ監督が自身の経験を踏まえ、14歳の少女ウニを主人公に描いた韓国映画『はちどり』と共鳴するような、1990年代とそこに生きる少女たちのささやかな前進を描いた作品です。
主人公セリアを演じるのは、本作が初主演となるアンドレア・ファンドス。ピラール・パロメロ監督は「彼女こそがこの映画の魂」と絶大な信頼を寄せます。
母親役にはゴヤ賞2冠のナタリア・デ・モリーナ。『悲しみに、こんにちは』のプロデューサーでもあるヴァレリー・デルピエールがプロデュースを務めました。

SiM / Silence iz Mine
8

バンドレビュー

『SiM』とは、主にライブパフォーマンスが魅力的な日本を代表する4ピースレゲエパンクバンドである。
彼等のライブではファン同士が激しく密集して体をぶつけ合う『モッシュ』や、密集した人の上を人が流れる『クラウドサーフ』などを思わず行ってしまうほど、ファンを熱狂させてしまう魅力がある。
ギターやベースに強い歪み(音色を強調し激しくする効果)をつけ、重硬で攻撃的なパンクが持つ勢いのあるサウンドと、レゲエやスカが持つリズミカルで哀愁や情緒のあるサウンドを併せ持っている。
歌詞はほぼ英語で書かれており、CDを買うと意訳の載った歌詞カードを見ることができる。
彼らが主催の音楽フェス「DEAD POP FESTIVAL」が毎年地元神奈川で行われており、楽器を体験して演奏できるブースやCDやアパレルブランドの専用ブースで購入できたりなど、他にはない体験が出来ることも特徴である。

FUNAN フナン
8

知るところから始めよう

舞台は1970年代カンボジア。クメールルージュによる独裁体制と大量粛清の時代を生きる親子の物語だ。約4年間で200万人が命を落としたと言われている。知識人に見える全ての人を粛清し、国民から知性を奪い、民主主義や資本主義を真っ向から否定した。愚民政策とも言われる恐ろしい政策だが、果たして現代のわたしたちは主権者としての自覚を持って政治に参加しているだろうか。ハッとさせられる部分がある。
ストーリーとしては大きな起伏はなく、テーマに反してあっさりしている印象も受ける。想像しかできないが、当時はただ耐えることしかできなかったのではないだろうか。あまりにも惨い現実を生き延びるためには、感情を押し殺して、ただひたすら1日1日を生きる。いつの間にか人間的な感情も薄れていってしまうのだろう。その点に関してはよく描かれている。
アニメーション作品ということもあり、実際に行われていた残虐な拷問や殺害のリアリティさには欠ける。だが、むしろ見えないことで、当時の凄惨さがイメージとして浮かび上がってくる。クメールルージュに関する知識が十分にあれば物足りなさを感じるかもしれないが、何も知らない人や、子供でも見ることができる作品だと感じる。まずは知る。そういう意味ではこの作品は入り口を広げてくれる、重要な役割を担っている気がする。

キャットウーマン
8

孤独な女性の復讐?

バットマンも暗闇に生きるヒーローだけど、セレブな男性が正体というところが今ひとつ“ダークヒーロー”とは言えない気がする。私は原作コミックは読んでおらず映画だけを見てのレビューなので、悪しからず。
キャットウーマンは、会社の機密を知ってしまったがために理不尽にも社長(もしかしたらただの上司かもしれない)に殺された可哀想な女性。自分でチクチク縫った衣装はセクシーだけど、生身で戦い血を流すのは悲しみが滲み出ている。
でも、私は『バットマン リターンズ』(1992年)でミシェル・ファイファーが演じたキャットウーマンのほうが好き。
セクシーでかわいくて、でもか弱くて、バットマンにはない魅力があると思う。バットマンとも理解しあえないところがリアル。
私が女性なのもあるせいかスーパーマンになってしまうバットマンは好きではなくて、初期の暗いところが好きだからかもしれない。
監督のエログロさもほどよくて、バットマンに惹かれても復讐をやめない哀しいキャットウーマンがとても魅力的。
ゴッサム・シティは、ティム・バートンが大好きな要素が詰まっているけど、バットマンが脇役っぽいこの作品は他のものより哀愁に満ちていて、シリーズ中で一番好きです。