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Tachi551

Tachi551のレビュー・評価・感想

魔王 JUVENILE REMIX
10

主人公はどっち?

この漫画は、伊坂幸太郎先生の魔王やグラスホッパーをもとに描かれています。ですので、原作を読んだことのある方は絶対気に入ると思います。内容としましては、第一章と第二章に分かれており、それぞれ安藤兄弟の兄と弟の話になっています。第一章では兄と兄のライバル的存在の対峙、第二章では兄の叶わなかった思いや目的を弟が果たすという構成になっています。すべてを読み終えると、そっちが主人公だったのかとなるような構成で、伏線もしっかり張られています。またこの兄弟には超能力があるのですが、二人とも非常にちっぽけで一見いらないなと思うような能力です。その能力をうまく使って敵に立ち向かっていく様は無謀のように見えますが、二人の覚悟と責任感が感じ取れて心打たれます。敵の超能力が強力なのも相まって敵との対比が非常にうまく表現されております。また、ストーリーには様々な殺し屋が登場しますが、どの殺し屋もキャラクター性や能力が印象に残りやすく、見ていてとても心躍ります。その中でも蝉という殺し屋がいるのですが、このキャラクターはかなり人気で、その人気ゆえに同じ作者からスピンオフ漫画も登場しております。どちらの漫画も非常に面白いので、是非読んでみてください。

SING/シング / Sing
5

人間社会の事情を動物社会で演じているハッピーエンドの物語

動物の擬人化系映画の部類です。企業経営者にオーディションを受ける側の動物と家族などなど、人間の社会に起こる事情やしがらみを動物世界で表現しているストーリーはすんなりと受け入れやすいです。コアラの見た目であるバスター。バスターは一応、劇場の支配人という肩書きを持つものの、その内情は火の車であり、決して思わしくはありません。そんなバスターは一年発起して懸命に劇場の再変に務めるのですが…。
オーディションにより集まってきた人材の能力、人柄が力となり、潰れかけた劇場の経営者であるコアラのバスターは九死に一生を得ることとなります。社長や経営側が人間として優っているとは限らない、人材のお陰様で今日があると言う教訓を知らしめてくれてるいるという、教訓を含むストーリーが見どころです。
豚の姿をした子沢山主婦は思いもしない能力を持っており主婦にしておくにはもったいないレベル。いい奴ばかりではない貪欲にむさぼるハツカネズミはそのキャラクターのままでつきすすみます。人間社会においても存在している性格のキャラクターなので、どれだけ数多くの動物が登場しても飽きずにエンジョイできます。しんみりしたコアラのプライベートからは一転し、オーディションからはテンポよく進展してゆくので楽しいです。

Official髭男dism / オフィシャルヒゲダンディズム / ヒゲダン
10

現代ポップロック業界を震えさせる逸材

令和に現れた時代の寵児たち
という思いがこれほど似合うアーティストはいない。

ピアノロックというジャンルのアーティストはこれまで数多くいたが、
ここまでの域に磨き上げているバンドは他にはいないのではなかろうか。

しっとりと儚く、一人の女性を思いあげる歌を作り上げるかと思えば
熱く聞くものの背中を押すような力強い楽曲。
聴き心地が良い楽しい気持ちにさせるアップテンポなナンバーまで生み出すことができる

アルバムに収録されている楽曲の一つ一つの充実度。
楽曲センスの幅の広さに驚かされる。

難しいリズムの曲をグルーヴたっぷりに作り上げた編曲のクオリティ
ピアノの存在感はしっかりとありながらも
屋台骨として支えているギターやベースドラムの確かな技術。

そして、楽曲の完成度もさることながら
このバンドの魅力は何と言ってもボーカル藤原の類い稀な歌唱力によるものが大きい。
高く深く広がるような高音域でかつハスキー。

歌を歌っているにも関わらずまるでパーカッションを担っているようなリズム感が
聞くものの奥底からビートを生み出すかのようだ。

Official髭男dismは
ピアノロック、というジャンルを問わず
日本音楽シーンを背負っていくバンドだ。

ぼくんち / My House
10

常識や倫理観を越えた、生きることの温かさ。悲しく優しい『ぼくんち』の物語

映画化もされたが、原作こそ名作。
本物の爆笑ルポのパイオニアであり、叙情的作風でも才能を発揮する西原理恵子の原点であり、真骨頂だと思います。
優しく味わいあるゆったりした描線で描かれる人物達の、ひたすら単純な書き方の笑顔、それがマンガ全体の印象になります。
環境に恵まれない人々、こんな町に生まれたばかりに…と、愚痴るのも馬鹿馬鹿しいような問答無用の無法地帯が舞台です。
作者の幼い頃見た風景かなと思わせるうらぶれた漁師町、そのさらに端っこに暮らす健気な兄弟が主人公です。そして、出奔した母の替わりのようにやって来た姉、この姉がいつも笑顔でひどいエピソードもカラッと笑って受け止めます。それと共に無邪気な笑顔を見せる下の弟はひたすら無垢、まわりの大人達のしようのなさ、カッコ悪さを兄と見つめての感想がモノローグされます。ミもフタもない素直な感想ゆえに、笑える上にしんみりとさせられます。
「こんなひどい暮らしを子どもにさせるなんて!」とかの当たり前の常識は読むうちにどうでもよくなり、不道徳で良くない町のやるせないおかしさに夢中になってしまいます。
兄弟はよくない仕事ながらも大人と働き、優しい姉にプレゼントしたりします。第三者の憐れみも同情も無意味、生きるために必要なことをそれぞれがするだけなのです。例えば、「望んだより、ちょい下くらいで上出来」という感じでしょうか。
その中で生まれる悲喜劇が作者独特のギャグとセリフで容赦なく笑わせてくれて、辛いのか面白いのか、とにかくやるせなく、切ない。
最後になるにつれて、大人になっていく兄、変わらず運命を受け入れ続ける姉。ラストは自身の境遇、悲しみを飲み込んだような弟の笑顔が胸に迫ります。読んだ人は誰もが思い出すのは、きっとあの笑顔だと思います。