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9ppastelcolor123のレビュー・評価・感想

旅芸人の記録
8

ギリシア現代史を「旅する」長尺の歴史映画『旅芸人の記録』

『旅芸人の記録』は1975年に公開されたギリシア映画で、監督はテオ・アンゲロプロス。1839年から1952年までの20世紀中葉のギリシア史を跡付けています。
『旅芸人の記録』は1974年に軍事政権が崩壊し、ギリシアが民主的な統治に戻った後で一般公開されました。しかし、テオ・アンゲロプロスは独裁政権下の1974年、すわわち権力から自分の作品を守らなくてはいけなかった時期を通して映画の作業を続けていました。作業を続けるために、自分は第二次世界大戦下の枢軸国支配の時期を舞台に移し変えた神話「オレステス」を製作しているのだと主張してきました。アンゲロプロスは軍事政府が『旅芸人の記録』の構想を与えたと言い張っています。アンゲロプロスは以前は社会主義新聞の映画批評家であり、2つのことを分析したがっていたのです。ギリシア史の中の存在を左翼の視点から考察することと、ギリシアに民主主義を確立することがいかに難しかったこと。映画は1975年に公開されました。
多くの批評家たちが『旅芸人の記録』をアンゲロプロスの傑作であると主張しています。16人の批評家と16人の監督が本作を最も好みの1作であると、2012年の英国映画研究所の視覚・聴覚投票において宣言しています。テオ・アンゲロプロスの多くの映画と同様に、『旅芸人の記録』は長回しの、静的なテイクを用いており、複雑なトラッキングショットと組み合わせることで、美しい風景写真がシュルレアルな雰囲気を醸し出します。映画内のショットは予告なく時系列を前後することが多くて、重要な場面のあとには観客が起こったことを思索できるように「間」が取られています。
『旅芸人の記録』はギリシアで大きな商業的な成功を収め、また国際的にも評価を勝ち取りました。多くの批評家は本作を新ギリシア映画の最高の達成とみなし、20世紀後半における最重要な映画の一作であるとしています。日本の映画監督・黒澤明は『旅芸人の記録』を好みの一作として挙げています。

めがね
8

自分を解放してみる

穏やかな内容の中に、クスッと笑いやジーンと胸打つ大人にオススメ映画です。現実から離れ、自由を求めて小さな島にやってくる主人公は小林聡美さん。そんな主人公に、やや土足で踏み込む人々はもたいまさこさんなど、待ってましたの方々も多いはず!市川美和子さん、加瀬亮さん、光石研さんと素敵な顔ぶれに、ナイスキャラで登場する薬師丸ひろ子さんにも注目です。
無理だと思って場所を変えてみたものの、自分が求めていたことに気がつき、受け入れていく主人公。不思議なメルシー体操を真剣に毎朝していたり、涎がでそうなかき氷で島の人々が繋がっていたり、黄昏を勧められ考え実践してみる姿など、副題にあるように、何が自由かを知っていく主人公。
真っ青な海を眺めながら、語らい黄昏れる。一人一人の思いや価値観はあるものの、人と繋がり同じ時間を過ごす。贅沢な大人ならではの時間の在り方ではないか。別の場所に居場所を見つけ、人を愛おしく待ち焦がれる季節。一年の中にそんな場所と時間があることは、人生の豊かさではないだろうか?と思わされる内容です。ただ、時間がゆっくり過ぎると思う方もいるかもです。
ちなみに撮影場所は与論島のようで、画面越しにも美しさが伝わってきます。視覚にも優しい。受け入れ、受け入れられ心の薬になる映画です。のんびりしたい時に是非!かき氷を片手に海を眺めてみたい。

Idlewild / アイドルワイルド
8

歌う都市生活者の孤独

UKロックに興味があり、自分のエゴイズムを吐き出せず、持て余している人に触れてもらいたいバンドです。
勧める理由はただ一点、デビュー以降、ボーカル中心のロックバンドとして成長しながら、一貫して孤独な人間の視点で歌うことを続けているという点です。
彼らの楽曲にはフロントマンであるロディ・ウォンブルの世界観が非常に強く反映された歌詞が色濃く存在しています。

このバンドは1990年代後半にデビューしており、いくつかのアルバムをリリースしながら時代とともに成長していきました。
伴うように楽曲も勢いを強く感じるものから、間への意識を感じる落ち着いたものへと移行しています。
グランジの影響を感じさせるパンクバンドから、徐々にクラシカルなギターロックバンドへと変化していったのです。
活動拠点を移しながら楽曲を作り続けた彼らの変遷がそこにあります。

しかし一方で、歌詞から孤独の色が消えることはありません。
十代の子供から大人に成長した一人の人間の視点があり続けます。
そこには自己憐憫などは存在しない、ロディ・ウォンブルの見た世界が存在します。

大仰な夢を見ることもなく、かと言ってかわいそうな自分があるわけでもない。
そんなありふれた人間の詩才を乗せたUKロックバンドの楽曲が響く人間はきっと少なくないはずです。
毒になるわけでも薬になるわけでもありません。
それでもこのバンドは人の心に届く楽曲を演奏していると私は思います。