Idlewild / アイドルワイルド

Idlewild / アイドルワイルドのレビュー・評価・感想

Idlewild / アイドルワイルド
8

歌う都市生活者の孤独

UKロックに興味があり、自分のエゴイズムを吐き出せず、持て余している人に触れてもらいたいバンドです。
勧める理由はただ一点、デビュー以降、ボーカル中心のロックバンドとして成長しながら、一貫して孤独な人間の視点で歌うことを続けているという点です。
彼らの楽曲にはフロントマンであるロディ・ウォンブルの世界観が非常に強く反映された歌詞が色濃く存在しています。

このバンドは1990年代後半にデビューしており、いくつかのアルバムをリリースしながら時代とともに成長していきました。
伴うように楽曲も勢いを強く感じるものから、間への意識を感じる落ち着いたものへと移行しています。
グランジの影響を感じさせるパンクバンドから、徐々にクラシカルなギターロックバンドへと変化していったのです。
活動拠点を移しながら楽曲を作り続けた彼らの変遷がそこにあります。

しかし一方で、歌詞から孤独の色が消えることはありません。
十代の子供から大人に成長した一人の人間の視点があり続けます。
そこには自己憐憫などは存在しない、ロディ・ウォンブルの見た世界が存在します。

大仰な夢を見ることもなく、かと言ってかわいそうな自分があるわけでもない。
そんなありふれた人間の詩才を乗せたUKロックバンドの楽曲が響く人間はきっと少なくないはずです。
毒になるわけでも薬になるわけでもありません。
それでもこのバンドは人の心に届く楽曲を演奏していると私は思います。