とにかく新しい音楽を知りたい、でも何から聴けばいい?Radioheadです。
私がなぜ友人たちにRadioheadを勧め、なぜ友人たちは皆Radioheadの虜になったのか。
1992年、イギリスでとあるロックバンドがデビューした。Radioheadである。私が勧めた時、友人たちは口を揃えて言った。
「なんか暗いけど、かっこいい音やね。ボーカルの声がちょっとね」
私も第一印象はそうだった。陰気で、卑屈で、切なげな雰囲気のあるロックバンドというやつだ。そしてどこか新しかった。新鮮で今まで感じたことのない感覚だった。高校時代の私は、「Radioheadを聴いている自分、知っている自分はなんてイケてるんだ!」と思ったものだった。今でも思っている。そう、Radioheadを聴いているとイケているような気がしてくるのだ。
しかし彼らのアルバムを順に聴いていくにつれ、少しずつ不穏になってくる。別のミュージシャンのプレイリストに飛んだと錯覚してしまうほど、楽曲の空気感が様変わりしていくのである。聴き終わった私はもうイケていなかった。Radioheadの魅力を全て理解できない自分に劣等感すら抱いていた。頭を抱えた。
彼らは時代ごとにプレイスタイルや音を次から次へとアップデートし、ジャンルの壁すら超えていった。陰気で卑屈に思えたロックバンドが、気づけば三本のギターのアルペジオの海を美しい旋律が泳ぐポストロックへ、電子音や今まで聴いたことのない楽器の響きの隙間をか細いボーカルが囁く新世界へ、打ち込みのビートの上をぼやけたギターの変則コードがループする異世界へと変貌を遂げていくのである。
彼らのキャリアで一貫しているのは、革新性である。それは彼ら自身のプレイにも言えることだが、その時代の流行や音楽業界全体の風潮等へのものだ。しかし、Radioheadを聴く我々は、そのような難しいことを考えて頭を抱える必要はない。ただ彼らの音楽に耳を傾け、聴き馴染みのない音の中で何かを掴もうとすれば良いのである。
あらゆるジャンルの音楽を吸収し、再構築を繰り返しているRadiohead。その革新性の中にあなたが一つでも「好き」を見つけられたのだとしたら、新たな楽しさや美しさを日々の生活で見つけることができる。他のミュージシャンにだって見出すことができる。私の友人たちは、Radioheadきっかけでクラシックやエレクトロ、ジャズにまで興味を持ち、今日も新たな「好き」を掴もうとしている。
あなたはこれからまず、Radioheadを聴く。Fake Plastic Treesが良いだろう。あなたのこれからの日々の、何か良いことが起こるきっかけになれば幸いだ。