なぜ人は山へ向かうのか
主人公の三歩は、山岳救助のレスキューボランティアとして活躍。時には山へ来た人への道案内、時には怪我人の救護活動、時には山岳救助隊のヘルプに入る。
様々な場面で活躍する三歩と、それに携わる人のドラマ短編集が本作である。
三歩が長野に留まる理由は何か。初めから最後まで読むと、あなたはきっと知ることが出来るはず。
やがて物語は、三歩を通して繋がる人びとへ焦点が当たる。レスキューヘリとの物語。山岳ボランティアたちとの物語。長野県警の人たちとの物語。山小屋との物語。そして、山へ足を向けた人との物語。
三歩の人としての魅力は、どこから来るのか。それを先の人々との繋がりを通して見えてくるはず。
「『嬉しい』とは何でしょうか。おーい。おーい。と呼びかける声だ」と三歩はいいます。
「優しい」とは何でしょうか。それは、よく頑張ったと言える気持ちのこと。
山は嬉しくて優しいもの。山はいつもそこにあって、いつも自分を見ていて、いつでも迎えてくれる。
だから、皆、山が好きだ。
それを三歩は本作を通して教えてくれるはず。
山には、様々な人間ドラマがある。一編ずつのドラマで紡がれたこの物語を読んだ後、あなたはきっと心地よい感動に包まれるはず。