岳 / 岳 みんなの山

『岳』とは、2003年19号から2012年12号まで『ビックコミックオリジナル』(小学館)に連載された、石塚真一による山岳救助が題材の漫画である。雑誌掲載時のタイトルは『岳 みんなの山』であった。コミックスは通常版が全18巻、完全版が全9巻刊行され、累計発行部数は450万部を超えた。
主人公である島崎三歩(しまざきさんぽ)と新人の椎名久美(しいなくみ)が、山岳遭難救助隊で活動する姿と山を訪れる人々との交流を描いた物語。舞台は北アルプスで最も人気がある穂高岳や槍ヶ岳周辺および長野県松本市である。
2008年には「マンガ大賞」と「第54回小学館漫画賞」の一般向け部門を受賞した。さらに2012年には「第16回文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門で優秀賞を受賞した。2011年5月7日に実写映画が公開され、初日2日間で映画観客動員ランキング第1位となった。また観客の4割は原作の読者で、ぴあ初日満足度ランキング第1位となった。島崎三歩役を小栗旬、椎名久美役を長澤まさみが演じた。

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岳 / 岳 みんなの山
10

なぜ人は山へ向かうのか

主人公の三歩は、山岳救助のレスキューボランティアとして活躍。時には山へ来た人への道案内、時には怪我人の救護活動、時には山岳救助隊のヘルプに入る。
様々な場面で活躍する三歩と、それに携わる人のドラマ短編集が本作である。
三歩が長野に留まる理由は何か。初めから最後まで読むと、あなたはきっと知ることが出来るはず。

やがて物語は、三歩を通して繋がる人びとへ焦点が当たる。レスキューヘリとの物語。山岳ボランティアたちとの物語。長野県警の人たちとの物語。山小屋との物語。そして、山へ足を向けた人との物語。

三歩の人としての魅力は、どこから来るのか。それを先の人々との繋がりを通して見えてくるはず。
「『嬉しい』とは何でしょうか。おーい。おーい。と呼びかける声だ」と三歩はいいます。
「優しい」とは何でしょうか。それは、よく頑張ったと言える気持ちのこと。
山は嬉しくて優しいもの。山はいつもそこにあって、いつも自分を見ていて、いつでも迎えてくれる。
だから、皆、山が好きだ。
それを三歩は本作を通して教えてくれるはず。

山には、様々な人間ドラマがある。一編ずつのドラマで紡がれたこの物語を読んだ後、あなたはきっと心地よい感動に包まれるはず。