愉快な動物と人間の青春群像劇
『動物のお医者さん』は、獣医を目指す大学生達のほのぼのした日常を描いた漫画です。
主人公は公輝(ハムテル)と、シベリアンハスキーのチョビ(女の子)。ふたりの出会いは高校時代の帰宅時にH大獣医学部を通った時。とある教授からなかばチョビを押し付けられる形で始まりました。
その時一緒に居たのは公輝の腐れ縁の友人、二階堂。そしてその教授からハムテルは「君は将来獣医になる!」と予言されます。予言通り?というか、ペットの診察代がかからないという理由で獣医学部へ進学したハムテル。そしてくっついてきた二階堂。そこへ待っていたのはチョビを押し付け…いや、出会わせてくれた漆原教授でした。
彼以外にも個性豊かな教授や先輩、そして動物達に囲まれて楽しくも刺激的な学生生活が始まります。
研修中に豚に餌をやるアドバイスをくれたのは、同じ獣医学部の院生、菱沼聖子でした。彼女は公衆衛生学講座で研究しており、美人で頭もよく運もよく特許レベルの菌も発見するほどの優秀な女性。しかしとてもとろい。動きも頭の回転もとろくて口喧嘩にならないと、ライバルにも呆れられています。
彼女は健診の採血で血が止まらないのに気づかずに、スプラッタ状態で校内を歩き回るなど常々奇行を繰り返します。しかしとてもオシャレでチャーミングで憎めない女性です。ある意味ヒロイン的存在です。
他にもいろいろなバイトを紹介してくれる清原や、潔癖症で漆原教授にモヤモヤイライラしてしまう菅原教授などが、ハムテル達の学生生活を彩ります。
個性豊かなのは学校の人たちだけではありません。ハムテルはチョビの他に、おばあさんのタカと、関西弁を喋るミケという猫と暮らしています。
タカは上品で厳しくてマイペース。「孫が獣医学部に入学した」と近所の人達に自慢したせいで自宅に動物を持ち込まれ、ハムテルが四苦八苦するなど割とトラブルメーカーな存在。だけど気が弱く優しいハムテルはいつも振り回されてしまいます。
ミケはチョビに「教育的指導!」といって、チョビの鼻をバシッと叩くなどスパルタな姉貴的存在。食い意地がはっていて残りの素麺を食べて、うんちに混ざり回虫騒ぎにもなりました。
ハムテル自身は今で言う振り回され系主人公で、いつも冷静沈着、合理的な性格。そんなハムテルに同情しながらもクスッと笑える日常がつまった珠玉の名作です。