『三国志』の新たな魅力がここに
日本、特に漫画における『三国志』というと、劉備を主とする蜀の国が中心となって描かれることが多いです。
桃園の誓い、水魚の交わり…情に篤い劉備とその仲間たちとの関係は善きもの。その一方で、魏の曹操は悪者として描かれがちです。
この漫画はその曹操を主人公とし、才気溢れる彼の生涯を非常に鮮やかに、魅力的に追い続けた作品です。
突拍子もないアイデアや行動で散々周りを振り回したかと思えば、歌舞音曲・書に詩・料理等々、あらゆる分野で類稀なる才能を発揮して人心を掴んで離さない。そんな曹操の姿に、読み手であるあなたも魅了されてしまうはずです。
ちなみに劉備はというと、人情というよりは任侠の人。騙されやすくもあるけれど、ひとたび冷徹な目をすれば、こちらが驚くような行動を見せます。曹操が主人公とはいえ、やはり彼に惹かれてしまう人も多いのではないでしょうか。
もちろん劉備だけではなく、人中の呂布・悪逆の徒董卓・孫一族や数多の武人・軍師など、良い者も悪い者も総じて読み手の心を揺さぶりその人生に涙せずにはいられません。
残酷な描写も多々ありますので、暴力的な表現が苦手な方には少々読み辛いかと思われます。しかし、巻が進むにつれ作者の画風も変化していき、終盤ではエグみの抜けた美しさを感じられます。長大な歴史の一幕を、また違った見方で学んでみませんか?