闇芝居

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闇芝居のレビュー・評価・感想

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猫好き程悲しみと切なさが染みるお話…12期第3話「黒豆」

このお話は闇芝居の公式YouTubeで、期間限定で無料公開されていました。
とある独身のハンサムなリーマンの主人公は、飼っていた猫の黒豆が天寿を全うして、ペットロスになっています。ある日、黒豆の鳴き声と黒豆が立てる物音が聞こえてきました。姿は見えないけれども黒豆が戻ってきてくれた喜びで主人公の心は明るくなります。書き手も父親の実家で黒猫を飼っていましたが、寿命が来て庭に埋められたと父から聞いた時は、あ、もう猫ちゃんはいないんだと、心中が切なさでいっぱいになったので、主人公の飼い猫が戻って来た喜びに共感しました。
とある雪の降る日、主人公が出張に出かけると大型トラックにぶつかってしまいました。家を出る前に黒豆が怒って唸り、この事故が起こると教えてくれていた、それなのに無視してしまったことを主人公が謝っていると、実体がはっきり見える黒豆がやってきました。愛猫の姿がやっと見えたことに喜ぶ主人公でしたが、黒豆に触れようとした自分の手が透けていたので、すべてを察しました。やっと同じ場所で黒豆と一緒にいられるね、主人公さん良かったねと、主人公が死んだ切なさと主人公と黒豆の再会の喜びの2つの感情で、書き手は涙がボロボロと零れました。

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怨みの吸着力は時と距離を超える!12期第10話「硯」

先祖の所持品が詰まった蔵を掃除している若い夫婦が、一部が欠けている硯を見つけます。旦那さんが硯を使って習字をするべく、墨と硯をこすりつけますが、旦那さんは上手く擦れないと違和感を感じます。書き手はこの時、固いもの同士の摩擦による不穏な音(オノマトペでいうならば、ごぉりぐぉうり)で三半規管と肩の筋肉を震せて、アニメ制作陣の音のこだわりを味わっていました。
実は硯は先祖が盗んだ品で、返せと追ってきた男性を硯で殴って逃げ切り、殴った際に欠けた状態のままで蔵に保管していたのでした。先祖は男性だけでなく、男性の家族にも流血するほどの怪我を負わせていたので、末代まで呪うと誓った男性の怨みが硯に付いていたのです。そしてその呪いは時を超えて旦那さんを蝕み、狂った旦那さんに襲われそうになった奥さんが、旦那さんを硯で殴り殺してしまいました。
少し話はそれますが、手放した悲しみが大きすぎて、新しい持ち主を呪って家族まで巻き込むうえに、お祓いすらも不可能なアクセサリーの話を聞いたことがあります。硯のアニメを見た後でアクセサリーの件を思い出し、人間の怨みは物に付くと、距離も時代もお構いなしに吸着し続け、加害者本人か否かは関係なく他人を蝕むものであると痛感しました。

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早くプロに金庫の処分を頼まないから…12期第1話「開けなければ大丈夫」

主人公の青年と不動産屋の中年男性が、いわくつきで家賃が安いアパートの一室に内見に来ます。部屋の押し入れの中に絶対に開けてはいけない巨大な金庫がガムテープで封じられています。不動産屋が言うには、その部屋の住人が頻繁に入れ変わるうえに、金庫を開けてしまったらどうなるのかは不明だけれど「開けなければ大丈夫」とのこと。なぜに早急に除霊のプロ等に処分を頼まないのか。心霊現象で問題が起きているなら客に物件を紹介するな、元住人の家族に訴えられても知らないぞと、書き手は問題を放置する不動産屋にツッコミが止まりませんでした。それでも主人公はその部屋に住むことを決めます。
案の定、すぐさま部屋の幽霊たちが主人公に「金庫を開けて」と話しかけてきます。部屋の中で幽霊を見ない日はなく、主人公は「開けなければ大丈夫」という不動産屋の言葉通りではないがゆえに、怒りを強く感じます。幽霊を恐れる気持ちは無く、「またかよ」と呟くだけの精神の強さを書き手は賞賛しました。それから数日が経って幽霊たちが現れなくなったある日、主人公は金庫を開けてしまいます。しかし金庫の中は空でした。主人公はなんで何も入ってないんだよ、俺はルールを破ったんだから何か起これよと変な方向に焦りだします。そして主人公は、自分が金庫の中に入ります。金庫を開けたせいで自分が金庫の中の怪異になったと思い込んで、新しい住人が金庫を開けるか否か、心持ちにしながら。
主人公は、一体いつから狂ってしまったのでしょうか。幽霊たちを恐れなかった時から、無自覚のうちに仲間になってしまった、だから自分が怪異になったと思い込んだのではないでしょうか。書き手は、それ見たことか、事故物件を封鎖しないで客に売るからまた犠牲者が出たぞと、無責任な不動産屋を叱りつけたくなりました。

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9

怖いどころかスッキリした第12期第11話「読み聞かせ」

図書館で行われる夜の絵本の読み聞かせイベントにやってきた若いカップル。会場にいる進行係や既に席についている女性たちの顔が口以外見えないので、あ、これはカップルが女性たちに襲われてバットエンドだな、と推測しました。しかし、結末は違いました。絵本に出てくるどうぶつの森に住むキツネは、恋人のウサギに隠し事をしています。それは、多くの女の子の動物たちを言いなりにしていて、お金を稼がせていることです。現実でいう、今もどこかで起きている洗脳と性的搾取です。ここで、カップルの男の方が帰ろうとします。しかし、途中退場禁止のルールで帰れませんでした。絵本の続きが読まれます。キツネに利用された挙句に死んでしまった女の子の動物たちは、幽霊となってウサギの前に現れ、キツネをどうしてやろうかと話し合います。結果、キツネは森の掟に従って処罰されることになりました。「森の掟?」と男が疑問を口にしたその直後、いっしょに読み聞かせに来た彼女と周囲の女性たちの顔が、絵本の中でキツネに騙された動物たちに変わりました。そう、キツネと男は同一人物で、女性を性的搾取と金儲けの道具として扱っていたのです。そして、森の番人である狼が図書館に現れて、キツネは今までの報いで食べられてしまいました。
人によっては、なぜ悪い魔法のような復讐劇が図書館で起こったのか考察をしたり、非現実的な復讐話に震えるかもしれません。ですが、書き手は他人の心体や人生を壊してでもお金を求めたクズ男の、ざまあカンカンな末路にスッキリ爽快な気分になりました。

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7

殺人鬼より怖いハエの浸蝕!12期第9話「面会謝絶」

最初に言ってしまうと、このアニメは虫が大量に出現する閲覧注意なホラーであり、オチについての説明の描写がないまま主人公がバッドエンドを迎えます。虫に耐性があり、考察好きな人向けの内容になっています。
主人公よしのぶは、旅行中に交通事故に遭ってお母さんと山奥の病院に入院しますが、お母さんだけが面会謝絶状態になります。院長先生にお母さんの容態を聞いても、「人の心配している場合か」と、濁す言い方をされる始末。この時、院長先生は飛んできたハエが自分の鼻の中に入っても微動だにしません。この病院はハエが人の周りをやたらと飛んでいて、誰もそれを嫌がったりしないのです。ハエのぶんぶんと鳴らす羽音すらも嫌いな書き手からしたら、日常的にハエがたくさん飛んでいるなんて、耐えられません。ましてや体内にハエが進入するのは、ホラー映画で殺人鬼が突撃してくるよりも恐ろしいです。お母さんの病室に鍵が掛かっていないので部屋に入ったよしのぶは、お母さんがゾンビのように狂暴な顔で肉を貪っている姿を見て、病院に何かされたんだと思い、お母さんの手をとって逃亡の決意をします。外に出たよしのぶは、事故で大きく歪んだお母さんが運転していた車と、車とぶつかって壊れた石碑を発見します。その石碑はよく見るとハエの模様が刻まれていました。ふと気づくと、お母さんが生きている犬を食べているので、「やめてくれ」と訴えていたら、よしのぶはハエの大群に囲まれました。そして、ハエに体を犯されて狂ったよしのぶは、院長先生に「病院に戻ろう」と言われ、ハエが群がっている瞳で返事をするのでした。物語はここで終わりです。
あの病院が立っている土地は、古くからハエを神として奉っているから石碑が建てられたのではないか、病院の関係者、院長先生は神であるハエと主従関係を先祖の代から結んでいるから、傍を飛んでいても体内に入っても追い払えなかったのでは。よしのぶとお母さんがハエに犯されたのは、石碑を壊した罰当たりな罪人だったからなのか。
身近な害虫に浸蝕されるトラウマ要素が濃いめですが、考察が止まらない一作でした。

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「早く帰れ」と言われたらさっさと帰るのが少年にとってのただ1つの救いの道!アニメ12期第8話「子削儀」

『闇芝居』の公式youtubeチャンネルにて、期間限定配信で見ました。少年、父、母の一家が父方の田舎へ、祖父母への連絡をせずに車で訪れました。祖父母は息子一家に帰れと憤慨します。しかし、雨が酷く降り出したので一家は帰れません。祖父母の暮らす村は「子削儀」の祭りの期間に入っていました。ずっと昔に、口減らしのために子供を手に掛けていたことから、祭りの期間中は子供を隠さないといけない、ホラーの定番である、悲しい成り立ちから出来た因習を行っていたのです。
少年は子削儀の期間が終わるまで屋根裏部屋に隠れることになりました。雨で冷える暗い部屋の中に少年が1人でいると、窓の外に異変を感じました。見ると、案山子の首が切られていたうえに、2階の窓の外に少年と同い年の子供たちが、こっちにおいでと少年を誘います。「自分以外の子供は1人も見かけなかったのに。この子ら絶対に幽霊だな。大人たちの都合で死んじゃった子供たちかな?」と推測していると、幽霊に操られて窓を開けて外に出てしまい、髪と手足が異常に長くて体が巨大で、子削儀のせいで我が子を殺され、狂った母親が変貌したと思われる化け物が接近。「連れて行かれるのかな、食べられるのかな」と少年の末路を想像していると、母親に名前を呼ばれて正気に戻り、ギリギリセーフでした。
雨が弱まってきたから帰ることにした一家は、祖父母の家から出ます。ここで書き手は出てきた3人に違和感を覚えました。両親は傘をさしていて、少年だけ雨合羽を着ています。しかも、車に乗らずに違う道を歩いて、ここで物語は終了します。「なんで?」と困惑しましたが、3人の会話に雑ざって聞こえてきた祖父の言葉で、両親と祖父母は少年を生贄にしようとしていることを察しました。
祖父が孫を化け物から守りたくて、祭りの最中に来た息子一家に怒っていたと思っていたのに、最後には「孫を生贄にすれば今年は豊作だ」と言いました。
子供の幽霊に誘われた=化け物に見つかった。執着されるうえに解決策がないから生贄にするしかなかったという線も考えられます。さっさと帰らなかった一家にも非がありますが、少年1人に村の掟を破った尻拭いを命をもってやらせることを想像できるオチは、後味がとても悪かったです。