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怨みの吸着力は時と距離を超える!12期第10話「硯」
先祖の所持品が詰まった蔵を掃除している若い夫婦が、一部が欠けている硯を見つけます。旦那さんが硯を使って習字をするべく、墨と硯をこすりつけますが、旦那さんは上手く擦れないと違和感を感じます。書き手はこの時、固いもの同士の摩擦による不穏な音(オノマトペでいうならば、ごぉりぐぉうり)で三半規管と肩の筋肉を震せて、アニメ制作陣の音のこだわりを味わっていました。
実は硯は先祖が盗んだ品で、返せと追ってきた男性を硯で殴って逃げ切り、殴った際に欠けた状態のままで蔵に保管していたのでした。先祖は男性だけでなく、男性の家族にも流血するほどの怪我を負わせていたので、末代まで呪うと誓った男性の怨みが硯に付いていたのです。そしてその呪いは時を超えて旦那さんを蝕み、狂った旦那さんに襲われそうになった奥さんが、旦那さんを硯で殴り殺してしまいました。
少し話はそれますが、手放した悲しみが大きすぎて、新しい持ち主を呪って家族まで巻き込むうえに、お祓いすらも不可能なアクセサリーの話を聞いたことがあります。硯のアニメを見た後でアクセサリーの件を思い出し、人間の怨みは物に付くと、距離も時代もお構いなしに吸着し続け、加害者本人か否かは関係なく他人を蝕むものであると痛感しました。