余命10年(映画)

『余命10年』とは、2022年3月4日に公開された小松菜奈と坂口健太郎がW主演を務める恋愛映画である。監督は『新聞記者』や『宇宙でいちばんあかるい屋根』を手がける藤井道人監督。全編の音楽を担当したのは『君の名は』や『天気の子』の音楽も手がけたRADWIMPSだ。
小松菜奈演じる茉莉は、20歳のときに不治の病にかかり余命10年の宣告を受ける。仕事や友人との時間を過ごす一方で、恋だけはしないと決めていた。そんなとき、久しぶりの同窓会で坂口健太郎演じる和人と再会する。その後の2人が過ごした10年間を描く感動作である。
公開してからの60日間で、累計観客動員数は2百万人に達した。累計興行収入は28億円を記録し、これは2022年公開の邦画実写の中で興行収入1位であった。
原作小説を手がける小坂流加は、自身が大学生時代に難病を発症したことから、その体験をモデルに2007年に本作を書き上げた。その後2017年、38歳の若さでこの世を去った。映画化をきっかけに小説の注文が殺到し、『余命10年』と、遺作となった『生きてさえいれば』を合わせると105万部を突破した。

余命10年(映画)のレビュー・評価・感想

余命10年(映画)
9

号泣必至の名作でした

個人的には最初の場面から号泣必至で、エンディングまで泣きっぱなしでした。結末は予想通りの展開で、むしろそれに向けて全員が動いている、ある意味予定調和のストーリーでした。ただ、キャスト陣の演技力の高さと、小松菜奈ちゃんと坂口健太郎くんの美しい物語で自分的には大満足でした。
一見ワガママのように見える主人公・茉莉の立ち居振る舞いも、人間味があって好きでした。個人的には、主人公の友人、タケル(山田裕貴)と沙苗(奈緒)のカップルが、あっさりと別れたことになっていて、「どんなにお似合いでも現実はうまくいかないよな」とリアリティーがあって、無理やり幸せエンドにしてないところが良いなと思いました。
和人がどんどん男らしく、かっこいい大人になっていく流れも違和感なく、「あ〜成長してる〜!」って親心を感じながら見てました。
何と言っても、エンディングのRADWIMPSがズルすぎです…。映画のストーリーがぶあっと回想のように思い出されて、また歌詞に和人の思いがリンクをしていて最高に泣けました。映画の主人公は茉莉だったのですが、主題歌の主人公は和人であり、沙苗であり、茉莉の死を悲しむ全員の気持ちに寄り添っていて、温かい気持ちで終われたのも良い映画だなと思えた理由の一つです。

余命10年(映画)
9

たった10年の命、10年も残された命

この映画を一言で説明するならば、病気で余命10年の茉莉が中学校の同窓会で同級生の和人と再会し、恋をする話。
基本的に病気を扱う映画では、病気を持つ主人公は強く明るく、それと対照的に周りが悲しそうにしているという構図がよく見られる。
劇中で茉莉が家族に放つ「私達ってどっちが可哀想なんだろうね」という冷酷な一言にはとても考えさせられる。しかし、この映画の主人公茉莉は劇中で何度も何度も涙を流す。しかし、涙を流すものの「死にたくない」「生きたい」とは絶対に言葉にしない。
そんな茉莉が後半、初めて自分の親に「死にたくない」と思いを口にする場面では、私達観客も泣かずにはいられない。さらに恋人である和人に余命があることを知らせる場面では、「これ以上一緒にいると死ぬのが怖くなっちゃう」や「死ぬ準備をさせて」というような茉莉の言葉に対して、混乱中の和人は、ハグをしながら「嫌だ」と茉莉との別れを拒み続ける。
このような人間らしい各所に散りばめられた感情表現が一つの見どころであると私は感じた。映像面では、Radwimpsの劇伴にのせて四季折々を感じさせる綺麗でどこか懐かしく儚い映像が流れる場面が何度かあるのだが、その場面ではあまりの綺麗さに鳥肌が立ち、心が震える。
生きていることの素晴らしさが、痛いほど伝わってくる。最後に私が最も心に刺さった言葉を紹介して終わりたい。後半茉莉は和人に対して「余命10年なんて長いのか短いのか分からない。さっさと死なせてくれと思っていた。」というような内容のことを告げる。10年という人生がどれほどに長く短いのか。皆さんにはぜひ劇場に足を運んで確認してきていただきたい。

余命10年(映画)
10

自分の死と向き合う人の感情のリアルさがとても優秀な作品

まず最初に、個人的なこの作品の一番の見どころは、主人公が生きるという事を理解し自分の死と向き合っていくというところ、そして主人公の「もっと生きたい」という思いがとても強く伝わるところです。
この作品は前提として、主人公の女性が謎の奇病にかかり余命が10年しかないというところから始まるのですが、主人公は10年という長さと、自身の人生にあまり価値を感じていない所から最初は運命を軽く考えてました。しかし、物語中盤ある男性に出会い、恋を知ることでその心情は一変します。
そして次第に彼女は自分の人生を知り、そして死に向き合っていくことになります。個人的に印象に残ってるシーンは、主人公とその友人二人が会食しているシーンです。そこで友人(主人公は自身の病気を周囲に伝えていない)は主人公に条件のいい男性を紹介します。
友人からすれば「病を患って気落ちしている友達のため」なのですが、主人公にしてみればそれがどうしても「もうすぐ死んでしまう自分には到底手の届かない未来を見せびらかしている」という嫌味に聞こえて、しまいには友人たちに嫉妬し、そしてそんな自分に自己嫌悪してしまいます。最初こそ自分の死を軽く考えていたのに、それに恐怖し苦悩するところがとてもリアルで見ごたえがあります。
もともとこの作品の作者が余命宣告を受けており、だからこそリアリティが素晴らしい作品です。

余命10年(映画)
9

小坂流加・原作「余命10年」

「余命10年」は小坂流加さんの小説を原作にした作品です。
小坂さんは主人公(高林茉莉)と同じ肺動脈性肺高血圧症という病気で37歳の時に亡くなられています。映画の内容としては、原作とは異なるアレンジをしています。それは、監督である藤井道一監督が小坂さんの想いを込めようとした工夫でした。小坂さんの家族から聞いた話を元に作られています。フィクションなのかノンフィクションなのか、どちらも当てはまると言えます。
簡単にあらすじを説明します。
病気を知った茉莉と生きることに悩む和人が20歳の同窓会で再開して惹かれ合っていきます。茉莉は余命宣告をされていることから恋をすることに抵抗がありました。しかし、2人で思い出を増やしていく中、生きることを諦めていた茉莉が死ぬことに恐怖を感じ始めます。病状が悪化する中、小説を書き上げた茉莉。亡くなった後、和人は茉莉が思い出を撮っていたビデオカメラを引き継ぎ、茉莉の分も生きていく作品になっています。
普通に過ごせる毎日がどれだけ幸せかに気づかされます。また、生きるとは何かと観ている最中も見た後も深く考えさせられます。生きることに悩んでる和人のような人もしっかり全力で生きようと思える作品となっています。
是非ご覧ください。