自分の死と向き合う人の感情のリアルさがとても優秀な作品
まず最初に、個人的なこの作品の一番の見どころは、主人公が生きるという事を理解し自分の死と向き合っていくというところ、そして主人公の「もっと生きたい」という思いがとても強く伝わるところです。
この作品は前提として、主人公の女性が謎の奇病にかかり余命が10年しかないというところから始まるのですが、主人公は10年という長さと、自身の人生にあまり価値を感じていない所から最初は運命を軽く考えてました。しかし、物語中盤ある男性に出会い、恋を知ることでその心情は一変します。
そして次第に彼女は自分の人生を知り、そして死に向き合っていくことになります。個人的に印象に残ってるシーンは、主人公とその友人二人が会食しているシーンです。そこで友人(主人公は自身の病気を周囲に伝えていない)は主人公に条件のいい男性を紹介します。
友人からすれば「病を患って気落ちしている友達のため」なのですが、主人公にしてみればそれがどうしても「もうすぐ死んでしまう自分には到底手の届かない未来を見せびらかしている」という嫌味に聞こえて、しまいには友人たちに嫉妬し、そしてそんな自分に自己嫌悪してしまいます。最初こそ自分の死を軽く考えていたのに、それに恐怖し苦悩するところがとてもリアルで見ごたえがあります。
もともとこの作品の作者が余命宣告を受けており、だからこそリアリティが素晴らしい作品です。