冷たい熱帯魚

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冷たい熱帯魚のレビュー・評価・感想

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冷たい熱帯魚
10

エログロヤクザのごった煮映画。

2010年公開の邦画作品。レーティングは”R18+”。
いつもは柔和な雰囲気と人懐っこい笑顔が素敵な俳優のでんでんさんが、本作ではとにかく怖い。めちゃくちゃ怖いでんでんを見るためだけにこの作品に手を出してみてもいいくらい怖い。

本作のざっくりした内容は、熱帯魚店を営んでいる主人公がひょんなことからこちらも同じく熱帯魚店を営むでんでんと出会い、怪しげなでんでんにゴリゴリ人生を狂わされていく…といった感じ。
この映画、単にスプラッタ映画というわけではなく、陰鬱な人間ドラマ、サイコスリラー、ヤクザ映画、エログロスプラッタがそれぞれ高濃度を保ったままごちゃ混ぜになっているすごい作品なのだ。しかもこんだけいろいろ混ぜておいて、破綻がなくちゃんと面白い。監督か脚本家か、とにかくその手腕には恐れ入る。

主人公一家(父、母、娘)の最悪な空気の食卓シーンから始まる本作であるが、このシーンの空気が本当に悪くて笑ってしまう。ここでこの家族が良い関係を築けていないことが如実に伝わってくる実に良いシーンだ。
ある日娘が万引きを働いてスーパーに呼び出された主人公(父)がどうしたものか困っていると、その様子を見ていたでんでんが店長に口をきいてくれ、その場を穏便におさめてくれたのだった。

とにかくニコニコしていて人のよさそうな雰囲気が全身からあふれ出ているでんでんに主人公一家は心を許し、お互い熱帯魚店をやっているという共通点から親交を深めていく。そんな中、いわゆる不良である主人公の娘を更生させるという名目で、主人公は彼女をでんでんの熱帯魚店に住み込みのアルバイトという形で預けることになる。また、「お互い同じ仕事をしているのだから助け合おうじゃないか」というでんでんの申し出により、主人公もまたでんでんの”仕事”に関わっていくことになる。

早速でんでんの店に呼び出された主人公は、ついにでんでんの恐るべき一面を目の当たりにする。「珍しい魚を輸入したいので金を貸してほしい」というでんでんの話に素直に乗らなかった男が、でんでんが出した栄養ドリンクを飲んだ途端に苦しみながら倒れ、息絶えたのだ。動かなくなった男を見届けたところででんでんが豹変し、本性を現したでんでんはヤクザばりの剣幕で、腰を抜かした主人公に詰め寄り死体の処理を手伝うよう強いる。死体を載せた車に乗り、山奥のさびれた家に到着したでんでんと、でんでんの嫁と主人公の三人。

家の風呂場に死体を運び込み、でんでんとその嫁の二人が死体の解体を始めた。鼻歌を歌ったり楽しそうに笑ったりしながら手際よく死体を細切れにし、骨は焼いて肉は川に流した。でんでんいわく「お魚さんが食ってくれる」。とんでもない男に目を付けられ、死体遺棄のほう助までさせられたうえに自分の娘はでんでんの手の内にある。

完全に逃げ場を失った主人公はそれからも恐ろしいでんでんの”仕事”に協力させられ…と、ここまででもだいぶ最悪なのだが、ここからもっと最悪になる映画なので最後まですごく楽しい。
最悪なでんでんと最悪な空気の主人公一家、そして控えめに控えめにと日々を過ごしてきた主人公はどうなるのか。
見せ場も展開も多く、大変見ごたえのある作品となっているので、エログロに抵抗のない方は一度この作品に触れてみてどうだろうか。

冷たい熱帯魚
8

でんでんさん、怖い。

小さな熱帯魚店を営む社本は、娘が起こした万引き事件をきっかけに、村田と知り合い、村田に色々な仕事を頼まれるようになるという話です。この村田という人物は道徳心が欠如していて、とても怖いです。本作は、埼玉連続愛犬家殺人事件を元に描かれています。その事件は、ペットショップを営んでいた男が詐欺などを働き、邪魔になった人物を次々に殺していくというものでした。本作の村田も、邪魔になったら殺せばいいという感覚の持ち主で、殺人に対するハードルが低すぎます。人を人とも思わない感じでとても怖かったです。村田はでんでんさんが演じているのですが、いつもは気の弱そうなおじいさんよりのおじさん役とかをする人なのに、こんな怖い演技もできるなんて驚きでした。でも、サイコパスイコールかっこいいではないですもんね。ああいう普通の顔で実は怖いって方がリアルで、怖さが倍増なのかもしれません。主人公は、彼と知り合ってしまったら最後、仲間から抜けることもできず、殺人や死体処理を手伝わされます。主人公も色々しているけど、これは抜けられなくて当然だなと思いました。子供を殺すぞと、何度も言っているわけではないですが、遠回しに人質にとられている感じがして、とても怖かったです。死体解体シーンは血が出まくりだし暴力シーンも多いので、グロ耐性のある人でないとキツいと思います。でも、そういうのが好きな人にはおすすめです。

冷たい熱帯魚
10

血が苦手な方はいやかも。

園子温監督の「冷たい熱帯魚」は日本で現実にあった事件をモチーフにしてできた作品です。
「愛犬家殺人事件」と聞けば若い人は知らないかもしれませんが、この事件を知っている年代なら「こんなことがあったなんて!」と人間の欲望の闇に驚愕します。魚を高く売ることで儲けようとする人や誰よりも多くお金が欲しい!といった欲の一線を超えてしまった人が、犯人の毒牙にかかってしまいます。この犯人役はでんでんさんが演じていますが、笑っているのに目の奥は深淵のようで、見ていると心に恐怖が沸き起こります。

人を解体するシーンがありますので、血が苦手な方は目隠ししてください。一番難しい解体場所まで、映画を観ている自分がその場にいるような気持ちになります。園子温監督の作品は必ず血生臭いものばかりで、手術室勤務していた自分ですら血の臭いがしてきそうな錯覚に陥りました。でんでんさんは笑いながら人を解体してしまいます。「今調理の仕込み中だから待っててくれ?」というセリフが本当に事件にあったのなら犯人は鬼か悪魔のようです。金銭欲や愛欲を従わせる為に巧みに使う犯人は、人の欲の深淵に近いのかもしれません。ニーチェの「怪物を知ろうと思ったら、自らが怪物にならなければ理解できないだろう」という言葉を思い出しました。
また園子温監督のこだわりなのか、映される教会やマリア像がまるで【あなたは違うといえる?】と問われているように感じます。実は誰もがもちあわせている闇を出すか、出さないか?そう問われている映画かもしれません。

実際の事件にたまたま加担することになった共犯者が手記を書いていますので、映画を観た後に読むことをお勧めします。ホラーやゾンビ、幽霊より怖いのは人間なのです。