冷たい熱帯魚

marika1412のレビュー・評価・感想

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冷たい熱帯魚
10

エログロヤクザのごった煮映画。

2010年公開の邦画作品。レーティングは”R18+”。
いつもは柔和な雰囲気と人懐っこい笑顔が素敵な俳優のでんでんさんが、本作ではとにかく怖い。めちゃくちゃ怖いでんでんを見るためだけにこの作品に手を出してみてもいいくらい怖い。

本作のざっくりした内容は、熱帯魚店を営んでいる主人公がひょんなことからこちらも同じく熱帯魚店を営むでんでんと出会い、怪しげなでんでんにゴリゴリ人生を狂わされていく…といった感じ。
この映画、単にスプラッタ映画というわけではなく、陰鬱な人間ドラマ、サイコスリラー、ヤクザ映画、エログロスプラッタがそれぞれ高濃度を保ったままごちゃ混ぜになっているすごい作品なのだ。しかもこんだけいろいろ混ぜておいて、破綻がなくちゃんと面白い。監督か脚本家か、とにかくその手腕には恐れ入る。

主人公一家(父、母、娘)の最悪な空気の食卓シーンから始まる本作であるが、このシーンの空気が本当に悪くて笑ってしまう。ここでこの家族が良い関係を築けていないことが如実に伝わってくる実に良いシーンだ。
ある日娘が万引きを働いてスーパーに呼び出された主人公(父)がどうしたものか困っていると、その様子を見ていたでんでんが店長に口をきいてくれ、その場を穏便におさめてくれたのだった。

とにかくニコニコしていて人のよさそうな雰囲気が全身からあふれ出ているでんでんに主人公一家は心を許し、お互い熱帯魚店をやっているという共通点から親交を深めていく。そんな中、いわゆる不良である主人公の娘を更生させるという名目で、主人公は彼女をでんでんの熱帯魚店に住み込みのアルバイトという形で預けることになる。また、「お互い同じ仕事をしているのだから助け合おうじゃないか」というでんでんの申し出により、主人公もまたでんでんの”仕事”に関わっていくことになる。

早速でんでんの店に呼び出された主人公は、ついにでんでんの恐るべき一面を目の当たりにする。「珍しい魚を輸入したいので金を貸してほしい」というでんでんの話に素直に乗らなかった男が、でんでんが出した栄養ドリンクを飲んだ途端に苦しみながら倒れ、息絶えたのだ。動かなくなった男を見届けたところででんでんが豹変し、本性を現したでんでんはヤクザばりの剣幕で、腰を抜かした主人公に詰め寄り死体の処理を手伝うよう強いる。死体を載せた車に乗り、山奥のさびれた家に到着したでんでんと、でんでんの嫁と主人公の三人。

家の風呂場に死体を運び込み、でんでんとその嫁の二人が死体の解体を始めた。鼻歌を歌ったり楽しそうに笑ったりしながら手際よく死体を細切れにし、骨は焼いて肉は川に流した。でんでんいわく「お魚さんが食ってくれる」。とんでもない男に目を付けられ、死体遺棄のほう助までさせられたうえに自分の娘はでんでんの手の内にある。

完全に逃げ場を失った主人公はそれからも恐ろしいでんでんの”仕事”に協力させられ…と、ここまででもだいぶ最悪なのだが、ここからもっと最悪になる映画なので最後まですごく楽しい。
最悪なでんでんと最悪な空気の主人公一家、そして控えめに控えめにと日々を過ごしてきた主人公はどうなるのか。
見せ場も展開も多く、大変見ごたえのある作品となっているので、エログロに抵抗のない方は一度この作品に触れてみてどうだろうか。