知りたいという人間の欲求は、迫害に勝てるのか
地動説を発見、研究していきた学者たちが、宗教的理由によって迫害されながらも研究を引き継いでゆく姿を描くフィクション。複数の主人公が、物語をつないでいくのが珍しいスタイルで、劇的な展開が突然訪れる「おどろき」を体感できる。知りたいという知識欲が、命とりになることもあるという事実を、ドラマティックに描きつつ、命がけでも真理を追究せざるをえなくなる学者の性を真摯に描写している。タイトルの【チ。】とは地動説のチ、知識のチ、そして血のチを表しており、文字通り血なまぐさいシーンも多発する。地動説を世の中に発表しようとする学者側と、それを食い止めようとする宗教側の異端審問官のどちら側にも、それぞれの信念があり、自身の正義を貫こうとする姿勢が対立し争いにつながることが切ない。これは、現代社会のありかたにもつながる問題で、自分の違う意見を持つものを迫害するのではなく、意見に耳を貸し議論しつつ折衷案や解決策を模索することの大切さを訴えているようにも思える。異端のものを排除するのではなく、その主張に聞く耳を持つことの意義は、自分の知らなかった新たな知識の発見にもつながるという事例を地動説発表という歴史的事実に重ねて創造していることに驚かされた。全8巻で完結。