のぼうの城 / The Floating Castle

のぼうの城 / The Floating Castle

『のぼうの城』とは、和田竜の日本の歴史小説を元にして2012年に公開された映画である。犬童一心と樋口真嗣の共同監督で制作された。主人公の長親(ながちか)は忍城(おしじょう)城代の息子である。関白秀吉の家臣である三成によって、忍城は開城を迫られていた。しかし長親は世の理不尽に真っ向から対抗するため、三成に相対する。長親は周りの力を借り、ついには三成軍を退けることになった。この作品は時にはしんみりしつつも、長親という「でくのぼう」の奇策によって観た人を気分爽快にさせる歴史映画となっている。

のぼうの城 / The Floating Castleのレビュー・評価・感想

のぼうの城 / The Floating Castle
8

遊びのある時代劇映画作品

とにかく、主演の野村萬斎の演技が非常に素晴らしいです。わきを固める俳優陣もキャスティングの妙だと思わされます。特に佐藤浩市、山田孝之、平岳大、山口智充、成宮寛貴は本当に上手いと思います。ストーリーはおおよそ史実の忍城の戦いに基づいておりますが、そこは映画、楽しませるための脚色はご愛敬といったところです。終盤に野村萬斎演じる成田長親(あだ名はのぼう)の田楽踊りのシーンは、さすが狂言師野村萬斎と言わしめる名演技です。
人たらし、そして普段はでくのぼうと呼ばれ民衆や家臣に愛される成田長親に、観ているものも同じく魅了されてしまうこと間違いなしです。
この映画をきっかけに本来の史実に興味を持つのも楽しみの一つとなると思います。
ただ、一つだけひっかかる部分もあります。石田三成を演じる上地雄輔の存在です。正直、演技が上手くないです。見ていて興ざめするほどの大根役者と思わざるをえません。大谷吉継を演じる山田孝之がストーリー内で常に上地雄輔と絡んでいたのでギリギリ見ていられる具合でした。
こればかりは他にキャスティングの選択があっただろうと落胆してしまいます。
しかし、この作品内での石田三成像と照らし合わせると上地雄輔くらいでちょうどよかったのかなと感じます。おかげで他の俳優陣の演技がより一層際立つこととなったのは事実です。
中だるみする部分がなく、緩急をつけつつ終始飽きずに見入ってしまうだけの素晴らしい作品です。

のぼうの城 / The Floating Castle
10

豪華キャスト!

・あらすじ
天下統一目前の秀吉が唯一、落とせなかった城。
それが成田長親(なりたながちか)が治める、周囲を湖で囲った「浮き城」の異名を持つ「忍城(おしじょう)」もその一つ。
忍城では長親の不思議な人柄から“のぼう様(でくのぼうの略)“と農民たちから親しまれ平和に暮らしていたが秀吉に攻め込まれ戦をすることになる。
忍城を治める長親の軍勢は500人に対し秀吉の軍勢は2万の大軍。大軍にどのように挑むのかが見どころです。

・感想
400年前の史実に基づいた映画で、殿様が気さくなので初めはコメディだと思い見ていましたが、
最後の最後にその後の説明があったので史実だと知り驚きました。
主役の成田長親を演じる狂言師の野村萬斎さんの演技がとてもすごくて、
特に水攻めに遭い相手の心を掴むと同時に忍城の皆の指揮を高め、弔い合戦に持ち込むため敵陣のすぐそばまで行き“田楽踊り“をするシーンはすごく感動し引き込まれました。
撃たれる直前に今までに見せた事の無い鋭い目を見せるシーンが好きで何度か見返してしまいました。
水攻めに遭い、民達を城へ入れるシーンも大好きです。
そして、キャストが豪華!とても豪華な上に登場人物の役柄がキャストにピッタリで違和感なくスルスルと内容が入ってきます。
歴史が苦手な私ですが、この作品を通し忍城や成田長親について調べてしまう程、素敵な作品でした。

のぼうの城 / The Floating Castle
10

最高の戦国ものの映画

豊臣秀吉が天下統一を目指すべく諸国を蹂躙していく中、武蔵国忍城を潰そうとする石田三成率いる軍と戦うことを決意したのぼうたちの勇敢さは本当に素晴らしいです。のぼうこと城代の成田長親は馬鹿にされながらも領民に愛されており、それが戦の場面となっても助けになってくれるのだから本当に感動します。それに豊臣がやっていた水攻めがどんなものだったのか、この城がそれに対抗する策がどれも奇策で素晴らしいもので、人数が劣っているのにもかかわらずいい勝負になった本当に最高な戦です。それに、長親に集う家臣たちはどれも猛者ばかり、その猛者たちの命をかけた戦いはどれも格好良いです。数で劣っている分、地の利を使い、人の心を掌握することに長けている長親の手腕も素晴らしいです。その中で長親と姫、酒巻の三角関係の恋愛はとても微笑ましいものでしたが、本当は大事に思い合っている長親と姫が最後に己の思いを告げることなく別れてしまうことがとても切ないです。これが戦国時代ではなく、現代であったならばと本当に悔しく思うほどの切ない別れでした。でも姫を大事に思うが故に手離した長親の気持ちも、本当は連れ去ってほしい姫の気持ち両方が分かるからこそ、もどかしくて背中を押したくなるほどに美しい恋愛もある最高の戦国ものの映画です。

のぼうの城 / The Floating Castle
8

事実に沿った物語

『のぼうの城』は和田竜の小説家デビュー作で、2012年秋に公開された映画です。本当は2011年に公開予定でしたが、東日本大震災の影響で各映画の公開が延期になる中、作品の中に出てくる「水攻め」が津波を連想させるために公開が大幅に伸び、約1年後に公開となった映画です。
石田三成率いる2万の兵に3千人ほどで戦うという、普通ならば兵の数を聞いて降参するところを、知恵を絞って次々と襲いかかる難題に立ち向かうストーリーです。見どころの一つが「水攻め」だと思います。「水攻め」をすればあっさり勝てるのですが、武士たちは「水攻め」にこぞって反対していました。この時代の武士たちは、武功をあげることでお金(土地)をもらい、地位も上げてもらい、「栄誉栄光を浴びていてのだなあ」と感じました。またこの「水攻め」は全くの作り話ではなく、作品のエンディングでこの「水攻め」の時につくられた堤防が今の時代でも残っている場面が映されて、「本当にこのような戦があり、その地でたくさんの犠牲者が出たのだ」と改めて思い返しました。
和田竜さんの作品はどれも面白いです。『村上海賊の娘』も4巻あって長かったですが、事実に沿ってのストーリーで面白かったです。これも映画化されるのは間違いないでしょう。