新宿スワン / Shinjuku Swan

新宿スワン / Shinjuku Swan

『新宿スワン』はアンダーグラウンド系の日本の漫画である。作者は和久井健。講談社『週刊ヤングマガジン』で、2005年20号から2013年45号まで連載された。スカウトマンをテーマにした物語で、和久井にとって連載のデビュー作品となった。主人公は19歳の白鳥龍彦、通称タツヒコ。ライバルの死や暴力団がからむ違法薬物の取引、そして信頼していた仲間の裏切り、そして、タツヒコの知らないところで大きな復讐の計画が動き出していた。数々のトラブルに見舞われながらも逃げずに立ち向かうタツヒコの成長する姿を描く。

新宿スワン / Shinjuku Swanのレビュー・評価・感想

新宿スワン / Shinjuku Swan
8

歌舞伎町で躍動する男と女

2005年に週刊ヤングマガジンで連載スタートした、スカウト(水商売etc)たちの物語。

主人公の白鳥龍彦が無職で困っていたところ、のちの尊敬する人となる「真虎(まこ)」との出会いから物語が始まります。

水商売、風俗、AVを主とする、スカウト達の話で、世間では知られていない、裏の世界を知れる、価値ある漫画です。

アングラな世界観が色濃く出ており、極道や一般社会から外れた世界観を楽しみたい、そんな大人向けの漫画です。

時折過激なシーンが出てくるため、子供向けの漫画ではありません。

レイプ、乱交、薬物、殺人といった違法行為のシーンが多く出てきます。

どうしても子供が見たい場合は、漫画と現実の区別をしっかり伝えてから読ませてあげてください。

主人公がとても人間味あふれるキャラクターで、芯のしっかりした人間です。

時折ぶっとんだ行動などもありますが、失敗を恐れず何事にもチャレンジ精神が旺盛なのはとても参考になるのではないでしょうか。

それを際立てて物語っているのが「北海道編」です(真虎の真実をつかむため、白鳥龍彦が北海道に行く回があります)。

また、極道の世界も物語後半に集約して描かれていますが、これもまたとても興味深い内容となっています。

極道の世界を肯定するわけではありませんが、根回しや駆け引きといったところは現実世界でも必要なものであり、意外と勉強になるところもあるかもしれません。

ぜひ読んでみることをお勧めします。

新宿スワン / Shinjuku Swan
8

新宿歌舞伎町に活きる白鳥

「新宿スワン」は話題作・「東京リベンジャーズ」の作者・和久井健先生の著作です。夜の街歌舞伎町で女の子に夜の仕事を紹介するキャッチとして生きていく一人の青年の物語です。
やくざや薬など過激な表現も多い本作ですが、主人公は情に厚く、正義感をもって女の子に接しながら様々なごたごたに巻き込まれていきます。
その正義感ゆえ、周りと衝突することも多い主人公ですが、直属の上司かつこの世界に主人公を導いた通称「マコさん」という人物がこの作品の肝、また裏の主人公と言っていいと思います。
本作を読み進めていくとマコさんは闇を抱えて生きている描写がちらほらと出てきますが、主人公の光とマコさんの闇が交差しながら物語が進んでいくのが本作の筋です。
このマコさんがまたかっこいいんです。強いし、頭は切れるし、冷静だし、顔までイケメンです。特に裏で見せる顔がグッときます。
本作ではこのマコさんが抱える闇とはいったいなんなのか?という問いに向かって物語が収束していきます。
「東京リベンジャーズ」のラストについては賛否両論ありましたが、「新宿スワン」の最終章は圧巻です。
夜の世界で様々な背景を持つ男たちの生きざまを色んなテイストで描き切っていきます。

新宿スワン / Shinjuku Swan
8

裏の世界を描いたストーリー

「新宿スワン」
新宿歌舞伎町を舞台にしたスカウトマンのストーリー。
この作品は白鳥龍彦という青年がひょんなことからスカウトの仕事をすることになり、仕事を通して様々な人間ドラマ、友情、愛情、憎悪などといった多種多様な感情がうまれるストーリーである。

作中に登場するスカウトの仕事。スカウトと言っても女優、タレント、モデルなどといった華やかな仕事のスカウトではなく、キャバクラや風俗、AV女優などといった、いわゆる夜の仕事と言われるスカウトである。

主人公、白鳥龍彦は上司や仲間など、仕事を通じて成長し、ぶつかり合いながら歌舞伎町で過ごしていくことになる。
作中に登場する真虎は主人公、龍彦の上司であり、どこかつかめない人間ではあるがとても魅力的で大人の雰囲気を持っている。
作中に登場するキャラクターでは1番人気があるのではないかと感じている。

物語の中身はシマと言われるナワバリをもつ同じ歌舞伎町内のスカウト同士の争いや他県のスカウトとの争い、はたまたケツモチと言われるスカウト会社のバックに存在するヤクザとの争いなどが描かれており、ドロドロとした内容が描かれている。

過激な描写があるので好き嫌いは分かれるかもしれないがハマる人にはハマるであるろうドンピシャな作品ではないかと感じた。

新宿スワン / Shinjuku Swan
10

時代と運命を描いた傑作

『新宿スワン』は、2005年から2013年まで、週刊ヤングマガジンで連載されていた青年漫画です。2007年にはドラマ化もされており、園子温監督、綾野剛主演での映画化はとても話題になりました。映画は2作とも素晴らしく、連載当初からの原作漫画ファンだった僕にとっても、大変満足のいくものだったのですが、ここでは原作漫画を中心にレビューしたいと思います。
『新宿スワン』は、歌舞伎町を舞台として(途中、渋谷・大阪・北海道・香港などに舞台を移し、それもまた魅力的なのですが、基本は新宿中心です)、主人公・白鳥龍彦(名前を見れば分かる通り、彼が新宿に咲くスワンの「1人」です)が、スカウトマンとして成長していく青年譚です。登場する男女は皆、今時珍しく感じてしまうほどのアウトローばかり。その中で、龍彦が様々な人たちと関わり、世代を超えた宿命的な戦いに巻き込まれていくわけです(というか、自ら巻き込まれに走ります)。
物語は、前後半で大きく2つに分けることができて、前半は、主人公の龍彦がスカウトマンとして成長していくストーリーです。キャバクラ、風俗、AV。前半も十分に面白いのですが、前半のストーリーを伏線として、後半、物語は一気に加速します。主人公は龍彦ですが、裏の主人公というべきは、彼にスカウトのイロハを叩き込んだ、龍彦の命の恩人、真虎。映画では伊勢谷友介が演じていました。そして、真虎にも、スカウトのイロハを教えた人間がいました。彼の名は辰巳幸四郎。映画では出てきませんでしたが、物語の全ての中心となる存在です。龍、虎、辰が交差し、ヤクザを巻き込んだ復讐劇(というより、ヤクザが中心かもしれません)が、歌舞伎町と香港、国境を跨いで展開されていきます。
時代背景は2000年前後から始まって、2004年の歌舞伎町浄化作戦あたりまでなのですが(途中、90年代にも物語はおよび、そこに全ての根がありました)、スカウトであろうが、水商売の女性たちであろうが、それこそヤクザであろうが、全てこの歌舞伎町浄化作戦を主導する国家権力に翻弄されるわけです。社会がより清潔で、住みやすいように「浄化」されていくその裏で、運命に翻弄される数人の男女がいたのです。死んでいった者、生き残った者。ワイルドでありながら、ノスタルジックな気持ちにもさせられる、そんな両極端な傑作です。ぜひ読んでいただきたいです。

新宿スワン / Shinjuku Swan
8

乾いて真っ黒な人間の欲、それをただのスカウトマンが潤す裏社会マンガ

舞台は新宿、歌舞伎町。風俗・キャバクラ・ホストといった人間の欲を商売相手として、人を売るスカウトマンを描いた作品です。
作品内で描かれた場面は、裏社会そのものです。覚醒剤に溺れるキャバ嬢、歌舞伎町の裏を仕切るヤクザ同士の殺し合い、さらには警察・海外マフィアまでも巻き込まれていきます。

平凡な毎日を生きている人にとっては、ほぼ出会うことない毎日です。そんな物語の主人公、名前は白鳥龍彦。
白鳥が入った名前とは正反対の目つきの悪さ、ボサボサな金髪天然パーマ、不吉なオーラ。見た目はぶっちゃけ最悪です。中身はさすがに良いのかと期待するが、童貞で女性に甘く、終いにはバカであると。

ただ話が進むにつれて彼のその素直で熱く、不器用だけど男らしいかっこよさを追い求める姿が、読者の心を揺れ動かすことは間違いありません。
特に白鳥が心から憧れた「真虎」という男性との出会いから別れ、そして彼との出会いによって変わる女性たちの生き様も注目です!

映画も綾野剛さん主演で、2作品公開されています。ただどっぷりはまってみたい方は、ぜひ漫画で読むことをおすすめします。こんなにも人の感情が、読み手の心に目がけて、ストレートに刺さる作品はありません!

新宿スワン / Shinjuku Swan
9

貫く強さ

講談社から出版の全38巻『新宿スワン』。
テレビドラマや映画にもなっているほどの大ヒット作品のひとつ。
この物語はある1人の貧乏でどうしようもない男が【真虎】というスカウトマンに出会ったことをきっかけに物語が始まっていく。
主人公、白鳥タツヒコ19歳の波乱万丈な成り上がり人生を描いている作品である。
白鳥タツヒコは純粋であるが故に、仲間に裏切られ利用され時には死に直面するようなことが起こってしまう。
それでもその中にあるわずかな希望の光を追い求め続けていく、そんな彼の魅力にどんどん引き込まれていってしまうことだろう。
自分の気持ちに正直に泣き、笑い、時には感情を剝き出しにして怒り、こんな馬鹿正直なタツヒコに心を鷲掴みにされる読者も少なくないだろう。
こんなにもリアルに山あり谷ありな人生に痛感させられる作品も珍しい。
ラストシーンではまさかのという思わぬ展開も見どころ。ラストのオチが今まで読んだ漫画の中でも最高に素晴らしい。
最後の最後までハラハラさせられ、まるでサスペンス映画を観ているかのような気持ちにさせられることだろう。
人の心境や環境、常に移りゆく街並みに吞まれながらも必死にもがいて生きていこうとするその姿に熱く胸を打たれながらぜひ読んでもらいたい作品のひとつである。

新宿スワン / Shinjuku Swan
5

歌舞伎町スカウト物語

新宿歌舞伎町。貧乏で金のない無職の男が、見知らぬ男(マコさん)に飯をおごってもらったことをきっかけに、スカウト会社バーストへ入社することから始まる新宿歌舞伎町のスカウト物語。
本来ならスカウトマンになる話は断ってもよかったのだが、マコさんは男の白鳥タツヒコからみてもかっこよく、クールでミステリアスな雰囲気を醸し出しているため、その姿に見惚れたタツヒコはスカウトとして働くことを決意する。
主人公のタツヒコは喧嘩が強いが不細工、貧乏でまったく女にモテないというキャラだが、他のスカウトマンの誰よりも熱いハートをもち、優しい純粋な心を持っている。
自分の利益よりも女のことを考えて仕事をするため、常に稼げず貧乏だが、その純粋な心にスカウトをした女は不思議な魅力を感じ、信頼関係を築き上げていく。
部下や上司問わず気に入られる愛嬌があり、スカウト会社でも愛されるキャラとしてうまくやっていくタツヒコ。
しかし、上司であるマコさんには常に謎めいた描写があり、その謎は物語の終盤になるまでわからない。
ストーリーが進んでいくにつれ明らかになるマコさんの目的。
その過去が明らかになっていき、ラストは衝撃的。
主人公のタツヒコよりも、その上司のマコさんに感情移入をしてしまう作品かもしれません。