すずめの戸締まり / Suzume

すずめの戸締まり / Suzume

『すずめの戸締まり』は、2022年に公開された日本のアニメーション映画で、脚本と監督は新海誠が務めた。この映画は、日本各地に点在する扉と呼ばれる出口を閉じる「閉じ師」として旅する少女・鈴芽の成長と冒険を描いたロードムービーである。
本作品の主人公で、岩戸鈴芽(いわとすずめ)という少女である。17歳の女子高校生であり、母親を早くに亡くし、母の形見である一本欠けた椅子を大切にしてる。そのほか「閉じ師」として扉を閉じる旅をしている青年、宗像草太(むなかたそうた)や白い猫の姿をした神獣ダイジンが登場する。
映画の音楽は、RADWIMPSと陣内一真によるアルバム『すずめの戸締まり』に収録されており、劇伴や主題歌を含む25曲が収録されている。
日本での公開では、観客動員数133万1081人、興行収入18億8421万5620円を記録し、新海誠監督作品史上最高の成績となった。
作品の舞台は、九州、四国、中国地方、東京都をモデルとしており、モデルとなった場所が各所に実在している。その場所を巡る聖地巡礼が話題となった。

muginoのレビュー・評価・感想

すずめの戸締まり / Suzume
9

まさに、日本人にしか作り出せないファンタジー映画

メインビジュアルは「これぞ新海誠作品」といった具合に神秘的で美しい印象。内容においても彼の代表作である『君の名は。』や『天気の子』と同じく、古来より日本人に根付く宗教観や信仰心をふんだんに盛り込んだ冒険ファンタジーである。

宮崎県の静かな田舎で暮らす女子高生のすずめと、地震の発生原因である「ミミズ」を鎮めて扉に閉じ込める役割の、「閉じ師」と呼ばれる仕事をする草太の偶然の出会い。人の優しさに触れて成長しながら日本各地の廃墟を巡り、扉を閉めていく冒険物語といったところだ。

だがただのファンタジー作品でなく「自分が知らないだけで実際にこのようなことがあるのかもしれない」とまで思えたのは、「全ての物や現象に神様が宿る」という日本人に根付いている神に対する独特の宗教観や、この世の対にあの世が存在しているという死生観が影響しているのだろう。

物語のスピード感も良くクスッと笑える演出も盛り込まれていてとても見やすい作品だが、唯一神を崇める宗教や価値観を持っている海外の方と日本人とでは、作品に対する楽しみ方が全く変わるであろうと思う。

主人公であるすずめ役の原菜乃華と草太役の松村北斗が、声優初挑戦とは思えないほど適役で、脇を固める役者陣も豪華なため最後まで違和感なく楽しむことができた。