まさに、日本人にしか作り出せないファンタジー映画
メインビジュアルは「これぞ新海誠作品」といった具合に神秘的で美しい印象。内容においても彼の代表作である『君の名は。』や『天気の子』と同じく、古来より日本人に根付く宗教観や信仰心をふんだんに盛り込んだ冒険ファンタジーである。
宮崎県の静かな田舎で暮らす女子高生のすずめと、地震の発生原因である「ミミズ」を鎮めて扉に閉じ込める役割の、「閉じ師」と呼ばれる仕事をする草太の偶然の出会い。人の優しさに触れて成長しながら日本各地の廃墟を巡り、扉を閉めていく冒険物語といったところだ。
だがただのファンタジー作品でなく「自分が知らないだけで実際にこのようなことがあるのかもしれない」とまで思えたのは、「全ての物や現象に神様が宿る」という日本人に根付いている神に対する独特の宗教観や、この世の対にあの世が存在しているという死生観が影響しているのだろう。
物語のスピード感も良くクスッと笑える演出も盛り込まれていてとても見やすい作品だが、唯一神を崇める宗教や価値観を持っている海外の方と日本人とでは、作品に対する楽しみ方が全く変わるであろうと思う。
主人公であるすずめ役の原菜乃華と草太役の松村北斗が、声優初挑戦とは思えないほど適役で、脇を固める役者陣も豪華なため最後まで違和感なく楽しむことができた。