脳が揺らぐレベルの頭脳戦、木村拓哉と二宮和也の真骨頂を見た
原田眞人監督作品です。
男臭い物語が多いなかで、今回の『検察側の罪人』もさまざまなタイプの濃いキャラの男たちが仕事と命を懸けた戦いを展開していくのです。
舞台は検察。
かつて自分が慈しんだ少女が殺され、トラウマを抱えていたエリート検事最上を木村拓哉、その後輩であり、教え子でもあった若手検事沖野を二宮和也が演じています。
冒頭、揺らぐような東京の光景が広がるオープニングから、最上と沖野の関係性、彼らを取り巻く世界へとぐいぐい引っ張りこまれていくそのパワーはすさまじいものがありました。
そして新たに起こる残忍な事件と、過去の事件の繋がりに最上は狂おしいまでに苛まれ、あるべき道を踏み外し、ずぶずぶと闇にからめとられていくのです。
老獪さをも身につけていたはずの最上と、若さゆえの脆さと強さを抱えて苦しむ沖野の姿は、どちらにも正義があり、また、綻びもあり、完全無欠な正義などどこにもないのだと思い知らされます。
そんな二人の周囲に配されたバイプレイヤーも強烈なキャラクターの持ち主ばかりですが、ことに松重豊さんの演じる裏社会の男、諏訪部は出色の出来であったと思われます。
彼の存在が、原作よりも複雑な物語の深みを構築し、そして主演の二人をより一層浮かび上がらせてくれたのです。
彼もまた圧倒的な悪に近いものがありつつも、完全なそれでなく、彼自身の倫理観を持ち、生きている。
そういう意味で、最上や沖野らとの絡みは大変に興味深く、全編通して物語を引っ張っていくのです。