東日本大震災をテーマにした作品だが暗いだけではなく前を向いて生きていこうと思える作品
2022年11月から劇場公開されたアニメ映画作品「すずめの戸締り」は、「君の名は。」や「天気の子」など有名作品も手掛けた新海誠監督による作品です。今回の主人公・すずめという女子高生は、東日本大震災により両親を失い、叔母に育てられてきました。そんな彼女はある日、草太という男性と邂逅。物語が大きく動き出します。過去の新海誠監督の作品は、災害をテーマとしても、東日本大震災が元になったことをぼやかしてきました。しかし今作「すずめの戸締り」は作品が上映される前から、SNS等で「作品の中で地震速報の音が鳴る」ことを事前にハッキリと来場する人々に告知をしてきました。東日本大震災がトラウマとなっている方や、パニック障害などの精神疾患を患っている方は事前に作品を見ないという選択ができる点も、過去作品とは違うところです。そして作中では、実際に地震が起きるシーンも描かれていますし、地震の警報が鳴るシーンもあります。そういったシーンは被災していない私たちが見ても、正直ドキドキしました。実際に被災した方々はもっと恐怖を感じるかもしれません。それでも、新海誠監督が描きたかったのがこの「すずめの戸締り」です。震災が起きた当日。「行ってきます」と家族に挨拶をして会社や学校、幼稚園などに向かった数多くの方が「ただいま」を伝えられずに亡くなってしまいました。その無念さを実感している新海誠監督は主人公・すずめに「ただいま」と、多くの犠牲となられた方たちの代表となって言ってもらいます。涙無しでは決して見られない作品ですし、悲しい気持ちにもなります。でも、それだけではなく前向きに「今日1日を大切に生きよう」と思える作品です。是非、被災していない方や東北から離れた地域に住んでいる方にも見て欲しい映画です。