気にしなければどうということはない的ホラー
呪怨は家に訪れたら終了で、リングは呪いのビデオを見たらアウトだったけど、本作の明確なアウトラインはまったく持ってあいまいである。そのあいまいさがまた恐ろしい。
現代社会において、人口は水のように流動的で、地域の忌まわしい記憶など忘れ去られてしまうのはとても早いだろう。そこを逆手にとったのが本作ともいえる。
この穢れは何が原因なのか、どこから来たのか探し始めると、どこまでも過去を遡る事になり、そんなこと言ったら日本中、いや世界中穢れまみれじゃいという気分に陥ることだろう。しかし、ラストに観客に提示されるアンサーは「気にしなければどうということはない。けど、気にしたほうの負け」というエンド。顔がちょっと強張っちゃう呪いの絵だって好きな人には名画だし、子供が虚空を見つめても気にしなければ何もないのと同じ。穢れはいつも貴方のそばに。本作を観覧後、現実と幻想の区別があいまいになりかける仕掛けがある。実在の人物の登場である。名前こそ多少なりとも変更してあるが、彼を知っているものや、ラジオやテレビで見聞きしているものはすぐに気づくだろう。彼の存在自体がリアルでは胡散臭い人物なのだが、彼が登場することによって私は多少なりとも混乱した。