 
          
          『ナイト・チェイサー』(Night Fare)は、2015年のフランス映画。日本では2016年に劇場公開された。夜のパリを舞台とし、出来心からタクシーの乗車料金を踏み倒した不良青年2人が、運転手に執拗に追跡されて恐怖の一夜を過ごすというスリラー作品。80分という比較的短い尺の作品ながら、しっかりと散りばめられた伏線や、「強すぎる運転手」という強烈なキャラクターが評判となった。
『ナイト・チェイサー』の概要
  『ナイト・チェイサー』(Night Fare)は、2015年のフランス映画。日本では2016年に劇場公開された。監督はジュリアン・セリ、脚本はシリル・フェルマン、パスカル・シドが手掛けた。
テンポを重視し「ノンストップ感」を意識した作りとなっている。正体不明の運転手に執拗に狙われる、というストーリー展開が、1979年にスティーヴン・スピルバーグが手掛けた映画『激突!』と似ていることから、WOWWOWでの放送時には「激突風」と紹介された。
舞台は夜のパリ。ちょっとした「イタズラ」で、乗り込んだタクシーの乗車料金を踏み倒した不良青年2人が、運転手の執拗な追跡で恐怖の一夜を過ごすというスリラー作品。
加速度的に二転三転するストーリー展開や「斜め上」とされるラストから、批評家や視聴者からの評価は二分しているものの、80分という比較的単尺の作品ながら、しっかりとちりばめられている伏線の数々や、「強すぎる運転手」という強烈なキャラクター性は評判を読んでいる。
『ナイト・チェイサー』のあらすじ・ストーリー
不気味なタクシーとの出会い
  クリスは、故郷のイギリスから、かつて暮らしていたパリへと、高速バスで旅をしていた。そしてパリに着いた彼を、親友のリュックと恋人のリュディヴィーヌが出迎える。リュックは素行が悪く、道端にタバコをポイ捨てしていた。
リュックはある日、自身の友人の家で開催されていたパーティに、クリスとリュディヴィーヌを連れていった。パーティでは誰もがドラッグを楽しんでおり、クリスはその場に馴染むことができなかった。さらにクリスは、リュックとリュディヴィーヌが恋愛関係になっていることを察して口論になってしまう。リュディヴィーヌは2年前に突然パリを去ったクリスを責め、怒って帰宅した。
失意に陥ったクリスはホテルへ帰ろうとその場を去った。リュックが彼の後を追ってきて、別の知人の家でパーティの2次会をやろうと誘ってくる。クリスはその誘いに乗り、2人はタクシーを拾って乗り込んだ。
乗り込んだタクシーの運転手は愛想がなく、何を考えているか全く分からなかった。しかも運転席の後ろには「負債は必ず返済される」といった文言を綴った貼り紙がしてあり、車内は異様な雰囲気を醸し出している。しかし、そんなことを全く気にしないリュックはタクシーの中でもドラッグを摂取していた。更にリュックは目的地に着くや否や、運転手に「現金の持ち合わせがない」と明らかな嘘をつき、クリスを巻き込んでそのまま逃げていく。
リュックの悪ふざけに巻き込まれた形になったクリスは、どさくさの中で鞄をタクシーの中に忘れてしまうのであった。
運転手の異常性
  タクシーの運転手はメーターを回したまま、クリスたちを執拗に追い回した。クリスはもちろん、さすがのリュックも動揺し、彼らは運転手の異常な行動に焦りを覚える。そこにタイミングよくパトカーが現れ、タクシーはそれに気づくと逃げていった。パトカーから降りてきたのは不正を働く汚職警官だった。警官たちは、リュックの持っていた札束を没収して去っていく。
警官が去るとタクシーは再び迫ってきて、運転手は車に乗ったままリュックの腕を掴んだ。リュックもクリスもこの運転手に対していよいよ本格的な恐怖を感じ、本気で逃げる。
逃げ回った末、彼らはようやく、リュックの「知人」こと、薬の売人の集う知人のマンションに辿り着く。彼らに渡す予定だった売上金を不正警官に奪われてしまったリュックは、タクシーの運転手に盗まれたと咄嗟に嘘をついた。その嘘を真に受けた売人たちは、マンションの下で待機しているタクシー運転手に喧嘩を売りに行ってしまう。
運転手は彼らのいる部屋までやってきて、リュックとクリス以外の人物をあっさり殺害してしまう。マンションから命からがら逃げ出したクリスとリュックはすぐに「住人が殺された」と警察に通報した。
通報を受け、先ほどの警官たちがパトカーでクリスらの元へやってきた。しかし、運転手はこの汚職警官たちのことも次々に殺害。運転手は、先ほど袖の下を受け取らなかった真面目な警官だけを見逃していた。この隙をつき、リュックとクリスはパトカーで逃亡をはかる。
誘拐されたリュディヴィーヌ
  リュディヴィーヌからリュックに、拉致されたと連絡が入る。運転手はクリスの忘れ物のスマートフォンのGPSを辿り、彼女の居場所を突き止めていたのだ。
クリスは2年前、リュックと共にトンネルで暮らすホームレスに酔った勢いで絡み、不本意にも焼死させてしまった過去を思い出し、「自分は今、あの時の代表を支払わされている」と感じていた。
クリスがリュディヴィーヌに何も言わずパリを去ったのは、この事件があったからだった。
クリスとリュックは、リュディヴィーヌを助けに行くか否かで、掴み合いの喧嘩に発展してしまう。この結果彼らは決別してしまい、クリスは彼女を救出しに向かうことになった。リュックは助けに行くと決めたクリスを見ても考えを変えず、逃亡を続けるという。
リュディヴィーヌは廃工場で監禁されていた。クリスは椅子に縛られた彼女を見つけて縄を解き、2人が逃げようとする。するとそこに外出していた運転手が戻ってきてしまい、2人を執拗に追い回した。そこへリュックが現れる。
クリスは、執拗に自分たちを追いかけまわす運転手の目的が気になっていた。そこで直接尋ねてみると、運転手はクリスの耳元で何事かを囁き、リュックをタクシーに乗せてその場を去っていく。
監禁されたリュック
  リュックはそのまま、知らない場所へ連行され、裸で牢屋に監禁されてしまった。そこで最低限の食事だけを与えられ、話し相手もいない時間を一日中過ごすことになる。数日が経過し、リュックがすっかりおとなしくなると、牢屋には一冊の本が差し入れられた。
その本は、1544年のブローニュ攻城戦において、大勢を殺した兵士の回想録だった。戦後その男は反逆罪に問われて殺されるところだったが、海で漁船に救われて東洋のある国に辿り着く。
しかし彼はそこで全うに生きることなく盗みを繰り返して逮捕され、牢屋へ入れられた。牢屋で自身と向き合い、過去の栄光と決別することができた男はこの回想録を綴り、世界をよりよくするため罪を償おうと決意した、ということのようだ。
その本を読むところによると、この元兵士の活動は現代まで受け継がれてきたようだった。リュックは読み進めていくうちに、あの運転手も元々は暴力的な警官だったのだということを知る。彼も昔、別のタクシー運転手にここへ連れて来られて改心した過去があったことを知ったリュックはその日を境に変わり始めた。
罪の意識を抱いた彼は体を鍛え、少しずつではあるが、正しいことをしよう、と考えるようになった。すっかり改心したリュックはある日牢屋から出ることを許された。そして彼は、運転手と共にタクシーに乗り込んで去っていく。
パリの街では、今日もたくさんのタクシーが群れをなして走っている。こうして転職した元悪人は、今日も新たな悪人を見つけて檻に入れる仕事に就いているのであった。
『ナイト・チェイサー』の登場人物・キャラクター
クリス(演:ジョナサン・ハワード)
 
      
    左がクリス
  本作の主人公のひとり。2年前まではパリで生活し、悪友のリュックと好き放題に過ごしていた若者だが、トンネルに住んでいたホームレスを殺してしまった事件を機に故郷のイギリスへ戻っていた。その件を原因として、恋人のリュディヴィーヌとの間には埋められない溝ができてしまっている。
まともに生きようと努力を続けるものの、悪友のリュックを突き放すこともできず、中途半端。作中でも彼の悪事に振り回されてタクシー運転手に狙われることになるものの、直接的な悪事には加担していないことから見逃されている。
リュック(演:ジョナサン・ドマルジェ)
 
      
    画像手前の男性がリュック
  本作の主人公のひとり。クリスの悪友。彼がパリを離れてからも悪事をまったくやめることがなく、ドラッグの密売にも関わっていることが示唆されている。モラルやマナーも欠如しており、深夜帯の住宅街で大声を出したり、タバコや酒の瓶を平気で路上にポイ捨てしている。さらに、クリスの恋人であるリュディヴィーヌとも浮気していることが発覚した。
クリスと乗り合わせたタクシーで無賃乗車をしたことが一連の事件の引き金となる。
リュディヴィーヌ(演:ファニー・ヴァレット)
 
      
    車の前に立っているのがリュディヴィーヌ
  クリスの恋人。2年前に彼がパリを出ていったショックでしばらくドラッグ漬けの日々を送り、そこにつけ込むかのように現れたリュックと関係を持ち、交際関係に発展している。
彼らの無賃乗車を機に運転手に誘拐されるが、悪事は働いていないため、助けにきたクリスと共に無事に解放された。
運転手(演:ジェス・リオーダン)
 
      
    
  クリスとリュックが乗り合わせたタクシーの運転手。無愛想で全身にタトゥーが入っており、不気味な雰囲気を漂わせる初老の男性。いたずら心で無賃乗車をしたリュックと、乗り合わせたクリスを執拗に追いまわす。元々は汚職警官だが、別のタクシー運転手に監禁されたことで改心し、別の悪人を捕えるタクシー運転手として使命を全うしている。
抵抗するものは殺害することもあるが、基本的には手にかけるのは売人や汚職警官などの悪人のみ。
目次 - Contents
- 『ナイト・チェイサー』の概要
- 『ナイト・チェイサー』のあらすじ・ストーリー
- 不気味なタクシーとの出会い
- 運転手の異常性
- 誘拐されたリュディヴィーヌ
- 監禁されたリュック
- 『ナイト・チェイサー』の登場人物・キャラクター
- クリス(演:ジョナサン・ハワード)
- リュック(演:ジョナサン・ドマルジェ)
- リュディヴィーヌ(演:ファニー・ヴァレット)
- 運転手(演:ジェス・リオーダン)
- 『ナイト・チェイサー』の用語
- タクシー
- 元兵士の回想録
- 『ナイト・チェイサー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 強すぎる運転手による悪人成敗シーン
- 『ナイト・チェイサー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 運転手が絶対に2人に追いつけたわけは「同じような仲間がいっぱいいる」から
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