「シュール」映像を敢えて分析する。『家での静かな一週間』(ネタバレあり)

「シュール」という言葉で表されるもの、分析するようなものじゃないかもしれません。それでも、チェコ出身の映像作家、ヤン・シュヴァンクマイエル氏の作品は分析せずにいられません。「実は社会的風刺が入っている」という氏の作品のこと。深読みしたくもなるってものです。この作品は短編集に収録されています。

あらすじ・ストーリー

厳重に注意をして、あるアパートのような建物に入る男。ドアに除き穴を開け、毎日一つ一つの扉を覗きます。その向こうには奇妙奇天烈な世界が繰り広げられていました。

初日

光景:可愛い絵柄の箱が回転し、転倒。中からキャンディのような包みが出てくるが、中身は飴ではなく、サイズの違った釘。釘たちは意思を持った人間のごとく立ち上がり、タイプライターのキーボードの上に立ち並ぶ。

どらどら。

考察:飴の包み紙から出た釘は洗脳教育を受けた国民で、タイプライターの上に並ぶのは自国への愛を謳うということでしょうか。そんな風に取れなくもないです。

二日目

光景:壁を突き破って「舌」が登場。引き出しを開けて、汚れた食器を舐め回す。最後ミンチ製造機に賭けられるが、出てくるのは何故か釘。

さあ、お食べ…とばかりに。

考察:他国からの経済援助ですかね。壁を突き破ってくるのが「他国から来る」ことを表していて、汚れた皿を舐め回すのはそれが役に立っていること。しかし、本当は「経済援助という名の自己満足」とも取れます。何せ、「壁破ってる」わけですし。更に「役に立とう」とミンチ製造機でわが身を犠牲にしても、出てくるのは釘(食物ではない)。思っていたほど役には立っていなかったということでしょうか。

三日目

光景:おもちゃの鳥が、「餌」のところへ行こうとするが縄で縛られているために届かない。何度ねじを巻いても引き戻される。縄が切れて「餌」にありつけるが、食器棚がわめくように暴れだし、ついには粘土が降ってくる。鳥のおもちゃは粘土に埋まってしまうが、壊れた状態で出てくる。

考察:低賃金(餌)で働かされる労働者(おもちゃの鳥)に思えてなりません。生きた鳥ではなくおもちゃにしたのはゼンマイ仕掛けにすることで「働かされている」ことを暗示するためかもしれません。戸棚は雇い主、もしくは政府。粘土は今でいう追い出し部屋のようなもの。労働者を心身ともに疲弊させついには壊してしまう種々のものに思われます。

四日目

光景:机の引き出しから、生きた鳥(鳩?)が出てくる。何羽か飛び立つが、何かあったようで羽が落ちていく。羽を向かれた鳥が壁に吊るされており、羽にまみれた椅子が得意げにはばたく。

わーいわーい。

考察:鳥は平和や善意。椅子は世界各国のトップ、机が国民、もしくはお金と見ると、結局税金をむしり取られてお偉いさんのいいように使われる、という風に見えます。「平和のために」なんて言っても、自己満足、まさに机上の論理でしかない(チェコではどういうのか知りませんが)という皮肉でしょうか。結局壊れちゃいますし。本物の鳥、真の善意や平和は「偉い人」の会議だけで成り立っているわけではないということでしょうか。

五日目

光景:壁に賭けられたコート。ホースが伸び、テーブル上の花瓶から水を「飲む」。花は焼失し、コートからは水がぶちまけられる。

考察:重税ですかね。しかも、ムダ金になってしまっている現代日本のような状況。コートは衣服ですので水分などいらないはず。なのに水を必要とする鼻からそれを奪い取ってしまいます。ただ枯れるのではなく燃えてしまうのが、重税を無駄に使うことの深刻さを表しています。で、結局「無駄」な水分は吸収できずにドバー。やるせないです。

六日目

えどまち
えどまち
@edono78

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