ギヴァー 記憶を注ぐもの(The Giver)のネタバレ解説・考察まとめ

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(The Giver)とは、2014年にアメリカで制作されたSF映画。ロイス・ローリーによる児童文学『ザ・ギバー 記憶を伝えるもの』を原作とし、実写映画化した作品である。ジェフ・ブリッジズやメリル・ストリープといった往年の名優たちや、大ヒット歌手のテイラー・スウィフトを起用したことでも話題となった。感情や自由の一切を制御された社会で生きる1人の若者が、「人類の記憶」を受け継ぐ運命を背負い、人間というもののありかたを考え、感情を取り戻していく姿を描く。

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『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(The Giver)の概要

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(ギヴァー きおくをそそぐもの)(原題:The Giver)は、2014年にアメリカで制作されたSF映画。ハワイ出身の作家、ロイス・ローリーの児童文学『ザ・ギバー 記憶を伝える者』を原作とし、実写映画化した作品である。1992年の映画『パトリオット・ゲーム』などで知られるフィリップ・ノイスが監督を務め、ジェフ・ブリッジズやメリル・ストリープといった往年の名優たちや、大ヒット歌手のテイラー・スウィフトを起用していることでも話題となった。

未来社会の人類は、「感情や自由は戦争の元」という首席長老の思想のもと、これまでの歴史や記憶、感情を封じられ、職業、衣服、家族までもを徹底的に管理されたコミュニティの下で生きていた。そのコミュニティの中で唯一「人類の記憶を受け継ぐもの」として選ばれたジョナスは、徐々に人間らしい感情を取り戻していく。
自身の家で養育していた新生児のゲイブが殺処分される運命にあると知ったジョナスは、人々を救うため、コミュニティの外の世界へ飛び出していく決意をするのであった。

「荒廃し、上層部によって全てを管理された未来の世界」というやや使い古された舞台設定ながら、感情を取り戻す課程を、モノクロからカラーになる映像などの視覚効果も効果的に使って描いており、情緒あふれる物語として仕上がっている。

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(The Giver)のあらすじ・ストーリー

記憶を持たない未来社会の人々

世界が荒廃した未来社会では、新たなコミュニティが誕生していた。そこで暮らしているのは、名字がなく、血縁ではない「家族ユニット」という単位で生活している、過去の記憶を持たない人々。彼らは完全に平等で、思考も服装も言葉遣いも、全てが定められている管理社会の中で生きており、一定の年齢に達した住民たちの職業も、すべてコミュニティの長である長老が決めていた。仲良し3人組として生活を共にしてきたジョナス、アッシャー、フィオナもとうとう成人となり、長老からそれぞれに職業が与えられた。
アッシャーはドローンのパイロット、フィオナは生まれてくる赤ん坊達の養育係、そしてジョナスはただ1人、選ばれた者だけがなれる「過去の記憶を受け継ぐ者」である、レシーヴァーに任命された。レシーヴァーとなったジョナスの役割は、過去の記憶、すなわち人類の歴史を受け取り、覚えておくこと。そして彼に記憶を伝えるのは、「ギヴァー」と呼ばれる年配の男性だった。任命されたジョナスには、「質問」と「嘘」を口にしていいという特権が与えられた。10年前、ジョナスの前任としてレシーヴァーになった少女、ローズマリーが失敗し、命を落としているという経歴から、長老はジョナスに大きな期待を寄せるのであった。

訓練と秘密の地図

コミュニティのはずれにある建物で、ギヴァーによる訓練が始まった。ギヴァーがジョナスの手をとった瞬間、ジョナスの目の前の景色は一変する。視界には様々な大自然の光景、音楽やダンスなどの芸術、人種や信仰など、人類がこれまで生きてきた多くの歴史が、ジョナスの脳裏に注ぎ込まれていった。
毎日、記憶伝達の訓練を受けるたびに、モノクロでどこか味気なかったジョナス自身の世界は色づくようになった。さらにジョナスは、フィオナに今まで感じたことのない感情を感じ始める。それは彼にとって初めての恋だった。
ある日、ジョナスはギヴァーが持っていたある場所の地図を目にした。それはコミュニティの外側の世界が描かれたもので、絶対に行ってはならない禁足地として扱われている場所だった。ジョナスは、人間らしい感情が芽生えた自分がその場所を越えれば、人々の記憶が解き放たれて、コミュニティ全体に愛が伝わる可能性があることを知る。
心の底ではそれを望んでいたものの、それはあまりに危険だということを理解していたギヴァーは、ジョナスに警告する。そしてその理由を伝えるために、人間による野生動物の殺戮記憶を見せた。生まれて初めて「痛み」を知ったジョナスは、人間の中に眠る恐ろしさというものを垣間見て恐れおののくのであった。

ジョナスの決意

ある日、ジョナスの家では、ゲイブという名の新生児を養育することになった。ジョナスが小さな手を握り、自分が学んできた楽しい記憶や愛情を精一杯伝えると、ゲイブは笑う。それを見たジョナスは自分の父に自分を愛しているか、と尋ねるが、母に「それは古い言葉だ」と一喝されてしまう。
ギヴァーから戦争の記憶を伝達され、仲間が撃たれて死んでいく場面を直視したジョナスは、あまりのショックに取り乱す。さらに彼は、養育センターで赤ん坊を育てる仕事をしていると思っていた父親が、実は未熟な赤ん坊を「解放する」という名目で殺害していたという事実を知ってしまうのであった。
しかし、長老がコミュニティの全員に飲ませている薬の効果で感情を喪失していた父には、殺人や罪悪感の概念は存在していなかったのである。こっそり薬を飲むのをやめていたジョナスの中には、どんどん人間らしい感情が溢れていく。そして、大切に思っていたゲイブが養育センターで「解放」の処置をされることになったと知った彼の中には、ついにコミュニティを脱出して境界線を越えようという決意が生まれるのであった。

色づいた世界

ジョナスの決意を知ったギヴァーは、彼にあの秘密の地図を託した。そして、10年前に失踪し、命を落としたローズマリーが、ギヴァーの娘だったということを教えてくれる。
フィオナの手引きで養育センターに忍び込んだジョナスは、ゲイブを抱いてコミュニティを逃げ出した。長老はジョナスの親友であるアッシャーを呼び、ジョナスを処分するように命じる。ゲイブを抱えて荒野を走るジョナスを、アッシャーのドローンが追ってきた。
しかし、アッシャーはジョナスを逃がし、「始末した」と長老に嘘の報告をするのであった。ジョナスは川に落ちて流されたが、それでもゲイブを離すことはなかった。ゲイブを抱えたジョナスは、ぼろぼろの姿で道なき道を進んでいく。
一方、長老に捕えられたギヴァーとフィオナは、ジョナスに協力した罪で「解放」を申し渡されるという、絶体絶命のピンチを迎えていた。ギヴァーとフィオナは、愛というものの大切さ、尊さを、ジョナスの母や長老に必死に訴える。しかし母親は怪訝な顔をしたままで、長老は、愛は戦争の原因になる、と否定的な意見を述べる。
その頃、疲れ果てて雪の中に倒れていたジョナスは体を起こした。記憶の中で見たソリを見つけた彼は、ゲイブを抱いてソリに乗り、急斜面を滑り降りていく。
そして彼が境界線を越えた途端、コミュニティの全てが色づき出した。人々の目に涙が溢れ、彼らの顔にはあらゆる表情が浮かんでいく。
険しく、長い冒険を終えたジョナスの目の前には、一軒の家があった。家の中からはどこか温かい歌声が聞こえてくる。ジョナスはゲイブをしっかりと抱きしめ、その歌声の方へ向かって歩き出した。

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(The Giver)の登場人物・キャラクター

主要人物

ジョナス(演:ブレントン・スウェイツ)

日本語吹き替え:増田俊樹
本作の主人公。長老から人類の記憶を受け継ぐ「レシーヴァー」に任命され、ギヴァーから記憶を引き継ぐと同時に、自身が何の疑問も抱かずに生きてきたコミュニティの、歪んだあり方を知るようになっていく。自身の属する家族ユニットにやってきたゲイブに愛情をもって接しており、彼を助けるためにコミュニティの根本を変えようと過酷な冒険に出る。

ギヴァー(演:ジェフ・ブリッジス)

日本語吹き替え:佐々木勝彦
ジョナスに人類の記憶や歴史を伝える「ギヴァー(記憶を注ぐもの)」の任を負っている老人。10年前に失踪してしまったレシーヴァーのローズマリーは自身の娘であることを物語終盤でジョナスに明かし、コミュニティを変えるために彼を導いた。

ジョナスの友人

フィオナ(演:オディア・ラッシュ)

画像右がフィオナ

日本語吹き替え:槙野萌美
ジョナスの友人。彼に頼まれて長老から渡される薬を飲まずに過ごしてみたところ、ジョナスに対しての愛情を自覚するようになった。子どもを養育する職業に就いており、ジョナスがコミュニティからゲイブを助け出す際は養護施設への侵入を手引きした。

アッシャー(演:キャメロン・モナハン)

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