『37.5℃の涙』とは、小学館の『Cheese!』にて2013年から連載を開始した椎名チカによる漫画、およびそれを原作とするテレビドラマである。「37.5℃」は熱を出した子どもが保育園に行けるかどうかのボーダーライン。熱で苦しむ我が子を置いて仕事を優先せざるを得ない母親・父親に救いの手を差し伸べる存在が「病児保育士」である。この作品は、病児保育のサービス施設に勤める杉崎桃子の視点から、病児保育に頼らざるを得ない家庭の子供、母親、父親たちの悩みと苦労を描くヒューマンドラマとなっている。
『37.5℃の涙』の概要
『37.5℃の涙』とは、椎名チカによる日本の漫画作品、およびそれを原作とするテレビドラマである。小学館の『Cheese!』にて2013年12月号から連載開始し、一旦2014年11月号に連載を終了した。2015年5月号増刊より連載が再開され、本誌2015年7月号から2022年7月号まで連載された。単行本は全24巻。第62回「小学館漫画賞」少女向け部門受賞。
本作は、病気の子供の世話をする病児保育士を主人公にした物語である。病児保育のサービス施設・リトルスノーに勤める杉崎桃子(すぎさき ももこ)の視点から、病児保育に頼らざるを得ない家庭の子供、母親、父親たちの悩みと苦労を描くヒューマンドラマとなっている。
2015年7月9日から9月17日まで、TBS系の「木曜ドラマ劇場」にて実写ドラマが放送された。あらすじは原作とほぼ同じの1話完結型である。
主人公の杉崎桃子は蓮佛美沙子(幼少期:井上琳水)、関 めぐみ(せき めぐみ)は水野美紀が、朝比奈元春(あさひな もとはる)は成宮寛貴が、柳 主税(やなぎ ちから)は藤木直人が演じている。
『37.5℃の涙』のあらすじ・ストーリー
不器用な保育士の船出
病児保育サービス「リトル・スノー」。リトルスノーの病児保育三原則は、「子どもを注意するな、叱るな、自分の価値観を押しつけるな」である。
杉崎桃子(すぎさき ももこ)は、感情表現が下手な病理保育士である。リトル・スノーで働き始めた桃子は、初めて担当する森海翔(もり かいと)と顔を合わせる。海翔は母親の前では天使のような笑顔を見せるが、母親が仕事に向かうと態度は一変し、桃子を困らせる挑発的な行動を取り始める。桃子は、海翔の行動には彼が一人で抱える寂しさのサインが隠されていると感じ、真正面から向き合う。やがて海翔は心を開き、桃子と手作りのクリスマスツリーを作るなど楽しい時間を過ごすが、彼の風邪はなかなか治らず、容態は悪化する。ついに熱が40度を超え、桃子の保育中に熱性けいれんを起こし、海翔は救急車で搬送される。病院に駆けつけた海翔の母は、元気になった海翔を見て、過度な心配は不要だったと早々に会社へ戻ろうとしてしまう。
ある時、桃子は人気漫画家である黒野春子(くろの はるこ)の息子・瑞樹(みずき)を担当する。自宅兼仕事場は多忙を極め、瑞樹はすぐそばに母親がいるにもかかわらず寂しい思いをしていた。瑞樹は完成した絵を春子に見てもらおうと勝手に仕事場へ入るが、締め切りに追われる春子は目を向けない。ショックを受けた瑞樹は怒りを爆発させ、春子の完成原稿を破ってしまう。余裕を失った春子は、思わず瑞樹に平手打ちをしてしまうという、親子の衝突を桃子は目撃する。
佐々木杏珠(ささき あんじゅ)の保育に派遣された桃子は、杏珠が母親の前では激しい腹痛を訴える一方で、二人きりになるとまったく痛がらないことに気づく。桃子は杏珠が仮病を使っていると確信するが、リトルスノー本部マネージャーである朝比奈元春(あさひな もとはる)は母親が子供の仮病に気づかないはずがないと言い、あえて杏珠の母には何も言わずに職務を全うする道を選ぶ。桃子と関わるうちに杏珠の仮病はなくなり、元気に登園するようになるが、数日後、杏珠は再び腹痛を訴える。桃子が杏珠を病院に連れて行くと胃腸炎と診断されるが、帰宅した杏珠の母はまた仮病を使って困らせているのかと、病気の杏珠を激しく責め立てるのだった。
桃子と元春の恋
桃子が感情表現が下手な理由は、自身の家族にある。幼い頃から自分だけ家族旅行に連れて行ってもらえなかったり、病気になっても放置されるなどの児童虐待を受けていた。実家は裕福だが、その体験が原因で高校卒業後に実家とは自ら縁を断っていた。
一方、上司である元春は小学生の愛娘の小春(こはる)を男手で育てているシングルファーザーだ。入社した当初から桃子に親切に接しており、悲惨な過去を持つ桃子が幸せになることを心から願っていた。
リトル・スノーのスタッフのお花見会で、桃子はこれまで自身に親身に接してくれていた元春のことを、一人の男性として意識し始めていることに気付く。その最中、桃子は実は39度近く熱を出しており、元春に自宅アパートまで送られる。帰ろうとする元春を勇気を出して呼び止め、看病してもらう中で、桃子は病気の時は大人も子供も誰かに側にいてもらえるだけで安心できるのだと実感する。そして桃子が寝入った後、元春は思わず彼女にキスをしたのだった。
トラウマとの決別と繋がる絆
桃子は、ノロウイルスに感染した娘・香凛(かりん)を持つ風間(かざま)の家へ急遽派遣される。風間は香凛に対して冷たい態度を取るが、その原因は、以前子供の看病でインフルエンザに感染し、仕事に穴を空けてしまったことにあった。桃子は罪悪感に駆られる風間にノロウイルスの正しい処置を教えるが、水分摂取の方法だけを伝え忘れる。その結果、香凛は極度の脱水状態に陥り、急遽病院へと搬送されるという痛恨の事態となってしまう。
リトル・スノーに新人の円城寺弥生(えんじょうじ やよい)が入社し、桃子と、桃子の後輩の病児保育士である新田涼(にった りょう)が教育係になる。保育を開始するうちに、弥生はマニュアル外の臨機応変な対応が苦手だと判明する。一方、子供の母親は理想通りにいかない育児に悩み、育児書を読み漁り、自分は母親に向いていないと精神的に追い詰められていた。そんな折、弥生が帰り際にかけた「母親だから」という言葉をきっかけに、母親はマンションのベランダから衝動的に投身自殺をしようとする。一部始終を目撃した弥生は、自分の言葉の重大さに打ちのめされ、保育士を辞めるべきか悩み始めるのだった。
祖母が亡くなり、桃子は葬儀のために実家へと呼び戻される。その際に母親と兄により監禁されてしまうが、姉の香織(かおり)の助けと桃子を助けに来た朝比奈により、桃子は実家から逃げ出すことに成功。自分が何をしても母が変わることはないと悟った桃子は、母との決別を決意する。そして、今の自分は昔とは違い、周りの人々に支えられているのだと気づく。さまざまな経験を経て、桃子は朝比奈と恋人同士になったのだった。
さまざまなケースを通し、桃子は「病児保育」が単に病気の子供を預かるだけでなく、育児や家族が抱える複雑な問題の最前線であることを実感する。そして、自分自身の過去のトラウマに真摯に向き合いながら、一人の保育士として成長していくのであった。
『37.5℃の涙』の登場人物・キャラクター
リトルスノー
杉崎 桃子(すぎさき ももこ/演:蓮佛美沙子)
病児保育サービス施設・リトルスノーに勤務する女性保育士。22歳。感情表現が下手。それが原因で保育士をやめた過去をもつ。
原因は幼いころに受けた虐待のトラウマである。実家とは自ら縁を断っている。
裏表がなく素直で、目の前の事に熱心に打ち込む性格をしている。クレームも多いが、いつも一生懸命で、子供たちからは慕われていることから指名率も高い。
朝比奈 元春(あさひな もとはる/演:成宮寛貴)
リトルスノー本部マネージャー。創始者の一人で桃子の上司でもある。
小学生の愛娘(小春)を育てているシングルファーザー。亡き妻(小雪)を想い未だに結婚指輪をしている。基本的におおらかで桃子にも他のスタッフにも優しい。自身も子供を育てて居るためリトル・スノーを利用する家族の立場で意見を言うこともある。
「リトル・スノー」という名前は亡き妻を思って付けられたと思われる。
関 めぐみ(せき めぐみ/演:水野美紀)
桃子にとって先輩にあたる病児保育士。巨乳で他のスタッフからも憧れの的である。
マニュアルを破る桃子を叱るが、かつては自分も桃子と同じような病児保育士だった。
しかし、ある事件をきっかけにマニュアル遵守の事務的な態度に変わってしまった。
鈍感な朝比奈と桃子を思い、たびたび助け舟を出してくれる存在。
柳 主税(やなぎ ちから/演:藤木直人)
朝比奈と同じリトルスノー本部マネージャー。33歳。リトル・スノーの創始者の一人で桃子の上司でもある。
基本的に生真面目でマニュアルを結果的に守らない桃子に特に厳しい。
しかし、スタッフのことを考えてくれる優しい上司でもある。
保育士資格を持っている。
新田 涼(にった りょう)
桃子の後輩の病児保育士。6人兄弟の2番目で、子供への面倒見が良い。姉(実は兄)と二人暮らし。
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目次 - Contents
- 『37.5℃の涙』の概要
- 『37.5℃の涙』のあらすじ・ストーリー
- 不器用な保育士の船出
- 桃子と元春の恋
- トラウマとの決別と繋がる絆
- 『37.5℃の涙』の登場人物・キャラクター
- リトルスノー
- 杉崎 桃子(すぎさき ももこ/演:蓮佛美沙子)
- 朝比奈 元春(あさひな もとはる/演:成宮寛貴)
- 関 めぐみ(せき めぐみ/演:水野美紀)
- 柳 主税(やなぎ ちから/演:藤木直人)
- 新田 涼(にった りょう)
- 円城寺 弥生(えんじょうじ やよい)
- 杉崎家
- 桃子の母(演:浅野温子)
- 桃子の父(演:石田登星)
- 杉崎 優樹(すぎさき ゆうき/演:水上剣星)
- 藤堂 香織(とうどう かおり)
- 藤堂 櫻子(とうどう さくらこ)
- 藤堂 大和(とうどう やまと)
- 桃子の祖母
- 杉崎 衛(すぎさき まもる)
- 杉崎 遥(すぎさき はるか)
- 優樹の妻
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