独特の絵柄、イタリアの雰囲気―オノ・ナツメ作品
時にディフォルメ調、時にリアルな絵柄。ストーリーに漂うのは優しく、時にどこか切ない不思議な空気。独特な作品世界を持った漫画家、オノ・ナツメさん。イタリア留学経験もある彼女のこと。それは作品にも活かされており、他の漫画にない味となっております。
あまった部屋は海外との懸け橋『LA QUINTA CAMERA』
4人の男性がアパートにて共同生活。それぞれ自室がありますが、一つだけ部屋が余っている。その部屋の使い道は?近所の語学学校と契約し、留学生に貸してあげることにしよう!ということで5人目の住民がやってくるわけです。5人目が毎回変わるオムニバス、というのではないのですが、留学生意外に部屋を貸すこともあります。で、みんないい人ばかりなのです。時にはゴタゴタもありますが、職業、立場こそ違えど4人の友情、優しさが伝わってきます。5番目の部屋を通し、色々な人と出会ったからなんでしょうね。
オムニバスで綴る繋がり『Danza』
こちらは全6編のオムニバス。雰囲気もジャンルもまるで違った作品集です。未来人が自分の祖父、父を訪ねやってくる話もあれば、有名ジェラート店の前で警備している警察官の話、アメリカ人の婿(というか娘の夫。娘はアメリカに暮らしている)とどうにも馴染めない、箱庭造りが趣味の頑固おやじの話もあります。この箱庭の話だけでも色々と見どころがあります。義父と仲良くしたいが為に片言ながら日本語を覚え、生魚のすしにも挑戦するお婿さんがいじらしいです。警察官で、結構巨体なのですが。義父は義父で、婿さんが嫌いなわけじゃない、でもどうしたらいいのか分からない、なんて馴染みのすし屋にこぼしたり。娘のそれとない一押し、すし屋のアドバイスがまたいいのです。他の作品も非常にお勧めですので、ご一読ください。
初期短編も収録!『Tesoro』
初期の漫画からイラストから、色々詰まった一冊です。お弁当三部作なんて、かなりの傑作です。「日替わり弁当を出している弁当屋」と付き合いがあるからと、毎日弁当をとり、それを職場の仲間が交代制で食べる、というアイディアがまず凄い。月曜担当の通称「秋さん」が納得がいかないから、曜日変えようと言い出して…と、導入もまたいいです。何気ない日常の一こまが。だけど、周囲を巻き込んでいくさまが描かれています。オノ・ナツメさんの作品をすべて読んだわけではないですが、ここにあげた三作品、いずれも何だか微笑ましいような、優しい目線があるように思われます。作品によっては救いのないものもあるけれど、でも何だか温かいのです。