東京心中シリーズの舞台はTV業界。
ひょんなことから番組制作会社に入社したワンコ青年、宮坂はきれいな顔をしたディレクター矢野さんと出会います。
しかし矢野さんの正体は超!自由人。
何を考えているかまったく分からず、口も態度も大物過ぎる矢野さんにビシバシ鍛えられながら、宮坂は仕事に励みます。
仕事を優先しているうち彼女との仲も険悪になる宮坂ですが、「仕事の楽しさ」と「激務の中にいるストイックな矢野さんへの憧れ」を募らせます。
思わず気持ちを口にしてしまう宮坂に、矢野さんは受け入れるとも拒否するとも付かない様子。
実は矢野さんの夢は「映画監督」であり、「映画が好きで好きで、なんで俺が映画じゃないのかと思う」と語るほど。
古い名作から最新作まで、毎日まいにち映画を観てカメラワークや演出を勉強していました。
そこへやってきた宮坂が、映画にもTVにも関心は薄い中で着々と力をつけている様を見て、驚きと嫉妬、そして尊敬の気持ちを矢野さんなりに募らせていたのでした。
同棲状態だった二人ですが、矢野さんは突然「大阪に行く」と言い出し、家を出て行ってしまいました。
傷心していた宮坂ですが、ある日帰宅するとそこには矢野さんの姿が。
あまりにいつも通りすぎる姿に、話したいことが山盛りの宮坂はどんどん話しかけ「うるせぇ」と一喝されます。
東京心中5巻「聖誕祭」の宮坂は、まず映画制作の実態について学ぶことからはじめ、そこで改めて矢野さんが今やっていることを知ります。
このあたりの細かな内容は、トウテムポールさんのしっかりとした取材・知識が反映され、読者にとっても「へぇ~」となる内容。
「悲しいお別れ」に感じられる大阪行きですが、その真相を宮坂はようやく知るのでした。
「真相」もとても矢野さんらしいもので、この理由を聞いてやっぱり矢野さんかわいい!と思える人は、東京心中の魅力に遣っている人なのではないでしょうか。
後半では、宮坂がついにディレクターとしての道を歩みはじめます。
「どうしたら面白い番組が作れるか?」
「興味を惹かれる映像をとれるか?」
作中で語られるのは、実践的なテクニックというより「求められている働きをする」という精神的なコツ。
こうした、どんな仕事に就いている人にも、また学生さえ共感できそうなポイントが散りばめられていることが、東京心中の魅力。
宮坂のまっすぐな性格と、矢野さんの仕事に妥協しない姿勢、そして互いへの信頼…5巻もやはりたくさんの見所があり、読者にとっても仕事へのモチベーションとなるはず!