Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む(ドキュメンタリー映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』とは2022年2月2日よりNetflixでリミテッド配信されたドキュメンタリー映画。ロンドンで実際に起きた大規模な恋愛詐欺事件にフォーカスした作品である。
自称「ダイヤモンド王の息子、サイモン・レヴィエフ」を名乗る男は、マッチングアプリ「Tinder」で出会った女性から大金を巻き上げる詐欺行為を繰り返していた。騙された女性たちの独白をもとに、事件の概要を明らかにしていく。素人離れしたサイモンの詐欺テクニックは驚異的で、全世界で話題となった。

『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』の概要

『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』は、海外で大人気のマッチングアプリ「Tinder(ティンダー)」で起きた、実際の恋愛詐欺事件を追ったドキュメンタリー映画である。Netflixで2022年2月2日から独占配信が開始され、たちまち話題となった。
「LLD Diamond」というダイヤモンド会社の社長の息子を名乗るハンサムな男性、サイモン・レヴィエフ。彼は自らを世界中を仕事で飛び回る億万長者であると吹聴して女性たちを夢中にさせていたが、実は「Tinder」で出会った女性たちから大金を騙し取ることを目的とした詐欺師だった。
主な被害者である女性が3名登場し、詐欺師のサイモンとどう出会ったか、どのようにして親しくなったのか、どのようにして詐欺にあったのか、そして彼を法の裁きにかけるためにどう闘ったのかまでを追っていく。

監督は、エミー賞を受賞したNetflixドキュメンタリーシリーズ『猫イジメに断固NO! 虐待動画の犯人を追え』で知られるフェリシティ・モリス。2024年には、新しくNetflixドキュメンタリー『アメリカン・ナイトメア:誘拐事件はなぜ“狂言”と言われたのか?』を制作・配信開始している。

『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』のあらすじ・ストーリー

Part1:セシリー

本作に登場する被害女性。左からペルニラ、アイリーン、セシリー。

第一の被害者であるセシリーは、ノルウェー出身でロンドン在住の女性。恋愛することが好きなセシリーは、海外で主流のマッチングアプリ「Tinder」で運命の相手を探していた。「Tinder」でこれまで沢山の相手とマッチングした実績を持つセシリーは、男性の品定めをする中で、サイモン・レヴィエフという名前のハンサムな男性を気に入り、マッチングする。サイモンは有名なダイヤモンド会社の社長で、世界中を飛び回りながらビジネスや趣味を楽しんでいるアクティブなセレブ男性だった。周りにはなかなかいない彼のセレブなステータスに惹かれたセシリーは、さっそくサイモンとメッセージを交わす。
彼はちょうど明日ロンドンを発つタイミングだったため、さっそく会いたいと誘ってきた。高級ホテル「フォーシーズンズ」のレストランで初対面を交わしたセシリーは、彼のスマートな身のこなしやゴージャスな振る舞いに恋に落ちた。初対面にもかかわらず、「今からプライベートジェットで出張に行くけど、着いてくるか?」と誘われたセシリーは、夢見心地のまま着いていく。そこには見知らぬ女性や少女なども同行しており、居心地の悪さも感じたセシリーだったが、まるで映画のヒロインのような体験をさせてもらったため、そのときはあまり気に留めていなかった。
サイモンは仕事柄世界中を飛び回っているため、なかなか直接会うことはできなかったが、その後もふたりは頻繁に連絡を取り合った。彼がテキストで送ってくれる甘い言葉につられて、彼女はすっかり彼に夢中になった。サイモンからは、ロンドンで一緒に暮らすための部屋を探して契約してほしい、という連絡があり、とうとう将来を見据えて恋人になれるのか、とセシリーは有頂天になっていた。実際に部屋を内見し、サイモンの代わりに契約も行った。
しかしその幸せは長く続かなかった。ある日サイモンから、彼のダイヤモンドビジネスの関係で何者からか命を狙われており、彼のボディガードが襲撃されたと連絡があった。ボディガードが実際に血を流す画像も添付されていた。サイモンは「しばらく敵から身を隠すために、足がつくクレジットカードが使えなくなってしまう。代わりに君がカードを作り、お金を立て替えてほしい」とセシリーに頼み込む。サイモンをすっかり信じ切っていたセシリーは、サイモンならあとでお金を返してくれると疑わなかったため、彼の言うとおりにカードを作り、ローンまで組んでお金を立て替えた。カードだけではなく、現金の工面までしてサイモンを支え続けたセシリーだったが、長い間返金をしてくれず連絡のとれないサイモンを徐々に怪しみ、彼を追及しはじめる。彼を疑うセシリーのことをサイモンは攻撃的な口調で責め立て、最終的にサイモンからお金が返ってくることはなかった。
セシリーはカード会社に相談をすることにした。一部始終を打ち明けたところ、サイモンは有名な詐欺師であることを告げられ、名前から経歴まですべて騙されていたことを知ることになった。セシリーのすべての個人情報を知っているサイモンに恐怖を抱いたセシリーは、相手にしてくれない警察に見切りをつけ、ノルウェー最大の新聞『VG新聞』にタレコミを行うことにした。『VG新聞』の担当者たちと共にサイモンの情報を探り、彼の出身地であるイスラエルで現地調査を行う中で、彼の本性が明らかになっていく。彼は億万長者でもなんでもない、古い団地に住んでいた男だった。地元警察と協力し、本名はシモン・ハユットであり、2017年にサイモン・ラヴィエフに改名したことや、過去にたくさんの詐欺罪を働いていたこともわかったが、彼はパスポートを偽造して国外に逃げたため、いまだに逮捕されていないまま野放しになっているのだった。
そこで記者たちは、セシリーのカードで購入された航空券の情報から、もうひとりの被害者であるペルニラに直接コンタクトを取った。彼女を利用し、サイモンを誘い出した彼らは、サイモンの現在の姿の写真を撮影することに成功した。セシリーはいよいよ大々的に記事を出すことができ、それにより顔の彼と名前はノルウェーだけではなく世界中に知れ渡ることとなった。

Part2:ペルニラ

サイモンがセシリーの他に目を付けた女性のひとりが、スウェーデン出身のペルニラ・ショーホルムである。彼女も同じように、「Tinder」でサイモンと知り合った。サイモンのゴージャスなステータスや旅行という同じ趣味に惹かれ、サイモンと早速マッチしたペルニラは、彼が住んでいるというアムステルダムに呼ばれ、会いに行くことにした。出会ってすぐ気が合ったが、セシリーのように恋愛関係になることはなく、あくまでも一緒に楽しむ親友の立場として仲を深めることになった。ダイヤモンド博物館で詳しく説明をしてくれるサイモンを見て、彼のステータスに疑いを持つこともなかった。マメに連絡をとってくれるサイモンを信用し、特別な絆を感じていた。
サイモンは、セシリーのカードで巻き上げたお金を使い、ペルニラとスウェーデンのパーティで大盤振る舞いしたり、ギリシャのミコノス島でサイモンの恋人、ポリーナも一緒に高級ホテルでバカンスを楽しんだりと、ヨーロッパ各地で豪遊の限りを尽くした。セシリーのお金はあっという間に底を尽きたため、頻繁に度重なるローンを組ませることでゴージャスな旅を続けることができた。
サイモンはペルニラをすっかり信じ込ませると、セシリーにしたのと同じように、ダイヤモンド取引の件で家族や自分が敵に狙われており、口座やカードが使えなくなったという話をした。ペルニラは引越しのために貯金をしていたが、親友の無事のため、身銭を切って彼に大金を貸した。口座を凍結されたという彼は、持っている多数の高額な時計をペルニラに渡すことで返金の代わりとした。
その頃、セシリーの協力により、彼女のInstagramのアカウントにノルウェーのタブロイド紙『VG新聞』のジャーナリストが連絡を送った。サイモンはそんな事実はないと言い訳したものの、ペルニラは記者と実際に話し、事実を知った。サイモンはあくまでもセシリーが出したお金をペルニラに使っていたため、「借りているだけ」という言い訳をすることができた。サイモンは女性たちから騙し取った金で豪華な暮らしを演出することで、次のターゲットをさらに騙すという循環を作っており、それは完璧な詐欺だった。信じていた親友に裏切られたことを知ってショックを受けたが、セシリーと協力して、メディアに被害の実態を打ち明けることにした。
記事が世界中に広がる中、最初は彼女たちの不用心さを責める声も多かったが、次第に彼女たちに同情したり、励ます声が増え、世間を味方につけることができた。

Part3:アイリーン

サイモンの記事が有名になりはじめると、その報道を見たオランダ人の女性、アイリーン・シャーロットもまたショックを受けていた。過去に男性から暴力を受けたトラウマを抱えていたアイリーンは、親切で紳士なサイモンと「Tinder」で知り合って惹かれあい、14ヶ月の長い期間恋人関係だった。結婚や家族を築く話もしている真剣な関係だと信じていたが、彼女も確かにサイモンに多額のお金を貸していたため、記事を読んだアイリーンの衝撃は大きかった。
どうしても彼を許せなかったアイリーンは、彼が逃げてしまう前に復讐をしなければと決心する。そこで、彼にまだ騙されているふりをして、彼を騙し返すことにした。めげずにお金を要求してくるサイモンに呆れながらも、彼のブランド服飾品をオークションに出品してお金を作ることを了承させた。彼女はファッションに詳しく、彼の服に価値があることをよく知っていたのだ。予想通り、それらの服はすべて飛ぶように売れたが、当然その稼ぎはサイモンに渡さなかった。サイモンは整形手術をしてでも逃げおおせようとしていたが、医師からも断られ、お金もどんどん使えなくなり、彼は日に日にアイリーンに対して脅迫めいたことを言うようになった。耐えきれなくなったアイリーンは、彼との連絡の中で彼の居場所を探り、警察に直接連絡をした。それにより、指名手配中のサイモンは無事逮捕されることとなった。

彼のイスラエルでの罪の判決は懲役15ヶ月だったが、模範囚だったため5か月後には釈放された。その後、オンラインワークショップを開いたりとビジネスをしながら、相変わらず豪勢な暮らしを続けている。彼は世界中の被害者から1000万ドルを奪ったが、被害者たちのもとにはお金は返ってきておらず、詐欺罪にすら問われていない。

『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』の登場人物・キャラクター

詐欺師

サイモン・レヴィエフ

有名ダイヤモンド会社の社長を装って、マッチングアプリ「Tinder」で数多くの女性から大金を巻き上げた詐欺師。本名はシモン・ハユット。1990年9月27日生まれのイスラエル人である。
サイモンは10代の頃から母国でも詐欺を多数行っており、2018年から2019年にかけてはイスラエルの実業家、レブ・アヴネロヴィッチ・レビエフの子孫であり大富豪であると嘘をつき、多くの女性を騙して大金を巻き上げた。その総額は1,000万ドル、日本円にしておよそ10億円以上と言われている。
2019年7月にギリシャで偽パスポート使用の罪で警察に捕まり、イスラエルに強制送還された。母国では昔起こした小切手の窃盗や文章偽造などの罪で禁固15ヶ月の判決が下されるも、5ヶ月後には保釈されることとなり、女性たちから奪った大金については罪に問われることはなかった。

被害女性たち

セシリー・フィエルホイ

ノルウェー出身でロンドン在住の女性で、サイモン・レヴィエフの詐欺の被害者のひとり。運命の恋に憧れており、マッチングアプリ「Tinder」でサイモンと出会うことで彼に本気で夢中になる。彼の巧みな話術で、多額の借金を背負わされる羽目になった。
サイモンの詐欺に気がついてからも彼への愛情が残っていたセシリーは、涙しながらも復讐を決意した。同じような立場のペルニラと知り合い、ノルウェーのタブロイド紙『VG新聞』のジャーナリストと組んで、全世界にサイモンの悪行を広めることに成功した。

ペルニラ・ショーホルム

サイモン・レヴィエフの被害者のひとり。ほぼ8年間連れ添った婚約者と別れたばかりだったペルニラは2018年3月に「Tinder」でサイモンと出会い、彼に惹かれたが、恋愛関係ではなく親友という立場でサイモンと仲を深める。
同じく詐欺被害にあっていたセシリーを通し、『VG新聞』のジャーナリストから連絡が来たことで詐欺被害に気が付くことになった。親友の立場を利用して、サイモンの逮捕に向けて全面的に協力をする。

アイリーン・シャーロット

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