舞姫 テレプシコーラ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『舞姫テレプシコーラ』とは、山岸凉子によるバレエをテーマにした漫画である。雑誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)にて、2000年11月号から2006年11月号まで第1部が連載された。その後、第2部が2007年12月号から2010年10月号まで連載された。物語は、バレエダンサーを目指す少女たちの成長と葛藤を描いている。主人公の篠原六花は、バレエ教室を営む母とプロを目指す姉と共にバレエを学び、様々な困難を乗り越えながら自分の道を見つけていく。
『舞姫 テレプシコーラ』の概要
『舞姫テレプシコーラ』とは、山岸凉子によるバレエ漫画である。雑誌『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー)にて、2000年11月号から2006年11月号まで第1部が連載され、その後2007年12月号から2010年10月号まで第2部が連載された。単行本は第1部が全10巻、第2部が全5巻で刊行されている。
本作は、2007年に第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞し、世間に大きな影響を与えた。バレエ漫画としての評価が高く、バレエに興味を持つきっかけとなった読者も多い。略称は「テレプシコーラ」や「舞姫」と呼ばれることが多い。
『舞姫テレプシコーラ』は、バレエという芸術の美しさと、その裏にある厳しい現実を描いた作品であり、バレエファンのみならず、多くの読者に愛されている。
本作の題材は、主人公の篠原六花(しのはらゆき)がバレエダンサーとして成長していく姿を描いている。六花は、バレエ教室を営む母と、プロを目指す姉・千花(ちか)の影響を受けながら、自身もバレエの道を歩むことになる。転校生の須藤空美(すどうくみ)との出会いをきっかけに、六花は本格的にバレエに取り組むが、姉の千花が重傷を負い、最終的に命を絶つ。六花は姉の死を乗り越え、バレエの道を進むことを決意する。物語は、バレエの華やかな表舞台だけでなく、その裏にある厳しい現実や競争、挫折といったテーマを深く掘り下げている。
『舞姫テレプシコーラ』の魅力は、リアルなバレエの世界を描きつつ、登場人物たちの成長や葛藤を丁寧に描写している点にある。特に、六花が様々な困難を乗り越えながら成長していく姿は、多くの読者に感動を与えた。また、バレエの技術や用語が詳細に描かれているため、バレエに詳しくない読者でも楽しめる作品となっている。
『舞姫 テレプシコーラ』のあらすじ・ストーリー
第一部
物語の始まり
『舞姫テレプシコーラ』の第一部は、主人公の篠原六花(しのはらゆき)が小学五年生の時から始まる。六花はバレエ教室を営む母と、プロのバレリーナを目指す姉・千花(ちか)の影響を受けてバレエを習っている。六花はおっとりした性格で、バレエを楽しむ程度だったが、ある日、転校生の須藤空美(すどうくみ)と出会う。空美の180度に開く脚を見た六花は、彼女がバレエをやっていることを直感した。六花はバレエダンサーとしての身体的欠陥を知らされ、一度はバレエを諦めかけるが、千花や空美の存在や、周囲の励ましで再び踊る決意をする。
バレエコンクールと成長
六花と千花はバレエコンクールに出場することとなったが、空美もまた、同じバレエコンクールに男子として出場していた。六花・千花・空美はそろって決戦に進む。千花と空美は優勝候補を争っていたが、空美の正体が運営側に知られ、会場から逃げ出してしまう。また、家族全員が夜逃げ同然でいなくなった。そのため、千花が実質1位を獲得。予選通過を果たした六花も実績を認められ、千花も通っている貝塚バレエ団本部のエリートクラスに通うこととなる。
貝塚バレエ団は、毎年クリスマスに「くるみ割り人形」を公演しており、今年もクララ役を誰が抜擢されるかが注目の的になっていた。見事、クララ役に抜擢された千花は、華々しいデビュをー飾ることになる。しかし、舞台上でのアクシデントで千花は靭帯を損傷し、手術を受け、これから長いリハビリ生活を送ることになる。
千花の苦悩と六花の成長
千花は手術後、再び同じ箇所を傷めて再手術を受けるが、回復が思うように進まず、靭帯生体移植手術を受けることになる。この手術でも完治には至らず、さらに半年から1年後に手術をすることを余儀なくされる。以上のことから、ブランクが長引き、トッププロを目指すうえで深刻な影響を受ける。また、千花は家族には言わなかったが、学校やネットの掲示板でいじめや嫌がらせを受けていた。
一方、六花は中学に進み、学校のダンス部の活動などにも触発され、実家のバレエ教室の発表会では、貝塚バレエ団の指導者、富樫(とがし)の一押しもあり、自作の演目を披露する。富樫は、六花のコリオグラファー(振付家)の才能に気づいていた。また、六花にたくさんの演目を経験させたいという思いから、六花を本公演のクララ役に抜擢する。重圧に翻弄されながらも、富樫や金子(かねこ)の支えで六花はクララを見事に踊り切り、その経験を自らの力とする。
千花の死と六花の決意
千花は度重なる手術とリハビリの末、精神的に追い詰められ、最終的に命を絶つことを選ぶ。千花を失った家族は悲嘆に暮れ、残された日記などから千花の苦しみやいじめの事実を知り、さらに悲しみを深める。それでも家族が少しずつ日常を取り戻していく中、六花は発表会で、自分で振付けをした「トゥオネラの白鳥」を踊り、姉の死を乗り越え、バレエの道を進むことを決意する。ここに、一人のコリオグラファーが誕生した。
第二部
新たな挑戦の始まり
『舞姫テレプシコーラ』第二部は、篠原六花が高校1年生、16歳になったところから始まる。六花は姉・千花を喪った悲しみを乗り越え、バレエダンサーとしての道を進む決意を新たにしている。六花はユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)日本予選で部門3位に入賞し、海外留学の道も見えてきたが、彼女はローザンヌ国際バレエコンクールへの出場を選択する。ローザンヌは千花の夢でもあったため、六花はその夢を引き継ぐ形で挑戦することになる。
六花は貝塚バレエの菅野(かんの)に付き添われ、同じく出場する野々村茜(ののむらあかね)らと共にスイスへ向かう。しかし、茜の体調不良や飛行機のアクシデント、コンクールへのプレッシャーに見舞われながら、授業形式のレッスン審査を受ける。大会会場の傾斜したステージや、即興演技などの厳しい審査が続き、必死についていく六花や他の出場者だったが、その中で目立っていたのが、中国系アメリカ人のローラ・チャンであった。ローラの卓越した踊りに六花は驚かされるが、彼女の踊りに空美の姿を重ねて見てしまう。レッスンの最中、英語しか話せないはずのローラが、咄嗟に日本語を発した六花に対応するなど、ローラが空美であるという疑念が強くなる。
ローザンヌでの試練
ローザンヌ国際バレエコンクールの準決勝が始まるが、六花は体調を崩してしまった。ローザンヌコンクールの挑戦が今回が最初で最後であることから、クラシック部門に出場したものの、大きなミスを犯してしまう。菅野の言葉から、コンテンポラリー部門は棄権せざるを得ず、留学のオファーも得られずに落胆する。今回のコンクールから、コンテンポラリーが重視されていたことから、クラシックを得意としていた日本人出場者は、宇野都(うのみやこ)以外が落選してしまう。
翌日の本選では話題の中心はやはりローラだった。ローラの卓越した踊り以上に六花を驚かせたのは、彼女の個性的な衣装が、かつて同じ演目を踊った千花のために自分がデザインしたものと酷似していることだった。このことで、六花はローラが空美であることを確信することとなる。
また、それ以上に驚いたことが、途中棄権した六花が「振付奨励賞」を受賞したことだった。レッスン審査の即興課題で高く評価され、コンテンポラリーを重視するドイツのバレエ学校から、奨学金付きの留学オファーを獲得する。
ドイツでの新たな生活
ドイツに渡った六花は、同じ学校に留学してきたローラ(実は空美)、建人(たけと)と再会し、共にバレエの道を歩むことになる。六花は新たな環境での挑戦を通じて、さらに成長していく。ローラとの再会は六花にとって大きな励みとなり、二人は互いに切磋琢磨しながらバレエの技術を磨いていく。
ドイツでの生活は決して楽ではなく、言葉の壁や文化の違いに苦しむこともあるが、六花は持ち前の努力と根性で乗り越えていく。彼女は新しい友人や指導者との出会いを通じて、バレエダンサーとしてだけでなく、人間としても成長していく。
未来への希望
六花はドイツでの留学生活を通じて、バレエダンサーとしての技術を大きく向上させるだけでなく、振付家としての才能も開花させる。彼女は自らの作品を通じて、バレエの新たな可能性を追求し続ける。六花の成長と挑戦は、彼女自身だけでなく、周囲の人々にも大きな影響を与える。彼女の努力と情熱は、多くの人々に勇気と希望を与え、バレエの世界に新たな風を吹き込んでいく。
『舞姫 テレプシコーラ』の登場人物・キャラクター
主人公
Related Articles関連記事
日出処の天子(馬屋古女王)のネタバレ解説・考察まとめ
『日出処の天子』とは山岸涼子により描かれた漫画。舞台は仏教が渡来した頃の日本。のちに聖徳太子と呼ばれるようになる厩戸王子と蘇我毛人の関係を中心として、厩戸皇子の少年時代から摂政になるまでを描く。厩戸王子は聖人ではなく、不思議な力を持つ超人として描かれている。『馬屋古女王』は『日出処の天子』の後日談となる、山岸涼子による漫画。厩戸王子の死後、末娘の馬屋古女王により、厩戸王子の一族が滅亡へ導かれていく様を描く。2作とも、それまでの聖徳太子像を一新する意欲作である。
Read Article
花の24年組〜少女漫画の在り方を根底から変えた女性作家達
今では全く珍しくなくなっているBL・耽美表現や、文学的な素養をも含む内容、繊細な絵柄など、それまでの少女漫画にはなかったアプローチをして1970年代に活躍した女性作家達。そろって昭和24年生まれだったことから、彼女達は「花の24年組」と称されています。筆者の世代にも懐かしい作家達のまとめをしてみました。
Read Article
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『舞姫 テレプシコーラ』の概要
- 『舞姫 テレプシコーラ』のあらすじ・ストーリー
- 第一部
- 物語の始まり
- バレエコンクールと成長
- 千花の苦悩と六花の成長
- 千花の死と六花の決意
- 第二部
- 新たな挑戦の始まり
- ローザンヌでの試練
- ドイツでの新たな生活
- 未来への希望
- 『舞姫 テレプシコーラ』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 篠原六花(しのはらゆき)
- 篠原家
- 篠原千花(しのはらちか)
- 篠原千恵子(しのはらちえこ)
- 篠原利夫(しのはらとしお)
- 篠原の祖母(しのはらのそぼ)
- 青山の祖父母(あおやまのそふぼ)
- 貝塚バレエ団関係者
- 金子(かねこ)
- 貝塚(かいづか)
- 五嶋寛子(ごしまひろこ)
- 富樫(とがし)
- 鳥山征一(とりやませいいち)
- 佐藤詩織(さとうしおり)
- よし子先生(よしこせんせい)
- 渡辺先生(わたなべせんせい)
- 菅野(かんの)
- 貝塚バレエ団生徒
- ひとみ
- 野々村茜(ののむらあかね)
- 桜子(さくらこ)
- 佐藤大地(さとうだいち)
- 池永拓人(いけながたくと)
- 藤田黄菜(ふじたきな)
- 野上水樹(のがみみずき)
- 雨宮駿(あまみやしゅん)
- 草間(くさま)
- 須藤家
- 須藤空美(すどうくみ)
- 須藤美智子(すどうみちこ)
- 須藤艶子(すどうあやこ)
- 須藤英一(えいいち)
- 六花の学校関係
- 坂口椿(さかぐちつばき)
- 坂口の祖母(さかぐちのそぼ)
- 六花の小学校時代の担任
- あゆみ
- S中ダンス部
- S中合唱部
- 千花の学校関係
- 高森真由子(たかもりまゆこ)
- 大村(おおむら)
- 医療関係者
- F医師(いし)
- F医師の弟子(でし)
- リハビリトレーナー
- ローザンヌコンクール出場者・関係者
- 倉元双葉(くらもとふたば)
- 舞(まい)
- ローラ・チャン
- 建人・ブレダン(たけと・ぶれだん)
- 宇野都(うのみやこ)
- J・N氏(じぇい・えぬし)
- 『舞姫 テレプシコーラ』の用語
- バレエ関連の用語
- コンテンポラリー
- コリオグラファー
- その他
- テレプシコーラ
- ローザンヌ国際バレエコンクール
- 振付奨励賞
- 貝塚バレエ団
- 『舞姫 テレプシコーラ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 篠原六花「踊ることが好きだから、どんなに辛くても続けたいんだ」
- 篠原千花「バレエは私の全て。これがなければ私は何もない」
- 須藤空美「どんなに辛くても、踊り続けることが私の生きる意味」
- 千花のクララ役デビュー
- 六花のクララ役挑戦
- 千花の最期
- 六花の振付奨励賞受賞
- 『舞姫 テレプシコーラ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- リアルな作品のベースにある作者のバレエ経験
- バレエと踊りを象徴しているタイトルの由来
- 主要キャラクターたちの過去や未来が描かれている番外編の存在