うちのちいさな女中さん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『うちのちいさな女中さん』とは、長田佳奈による漫画作品。
昭和初期の東京を舞台に、かつて女性の一大職業であった女中の日常を描く。
14歳の少女、野中ハナが女性翻訳家蓮見令子の家に女中としてやってきたところから物語がはじまる。昭和初期のモダンな文化住宅造りでの住み込み女中の仕事や、主人との関係、そして東京での暮らしが優しいタッチで描かれている。大きな事件が起こるわけではないが、主人と女中という関係の2人が、姉妹のように仲良くなり、ハナの変わっていく様子を微笑ましく読むことができるところが魅力。

Cafe ミチクサ

令子の友人みっちゃんが営むカフェ。大正時代以降喫茶店(カフェー)が増え、昭和初期には喫茶店の数は東京で1万5000店にもなりカフェでコーヒーを飲む文化が一般化した。
Cafe ミチクサでは、コーヒーだけでなく、昼に定食(ランチ)を提供している。

有田邸

ハナが令子宅に来る前に勤めていたお屋敷。山梨県の甲府にあり大きなお屋敷である。

『うちのちいさな女中さん』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

はじめて映画鑑賞とお茶を楽しんだハナと令子初めてのおでかけ

余暇の過ごし方がわからないハナに、令子は一緒に出かけることを提案した。雇い主である令子とのお出かけに最初は戸惑うハナだったが、初めてづくしの出来事に感動する。
初めての映画は目がチカチカしつつも動く絵に驚き、映画を見終わった後に行った喫茶店では、ハナはこれまで作中で見たことのないような驚きの表情で飲んだクリームソーダを飲んでいる。ソーダの炭酸による刺激とアイスクリームの甘さで混乱しながら無言で食べ飲み続けあっという間に完食するようすは、ハナの驚きようを感じることができるシーン。

ハナ・令子・萬里の海水浴

萬里が当てた海水浴招待券で、令子とハナは鎌倉に海水浴に出かけている。生まれは東京だが、その頃の記憶はなく、物心ついてから山梨で暮らしていたため海を見るのは初めてだった。令子に導かれ、初めて海を目にしたシーンは見開きで描かれており、海の美しさを表現している。そして次のページでその大きさ、美しさに驚くハナの表情は、驚きと感動で溢れていた。

休日にハナが初めてお子さんランチを食べたシーン

休日に、喫茶店Cafe ミチクサに昼定食を食べに来たハナが初めてお子さん洋食を食べたとき、あまりの贅沢な食事に恐ろしくなってきたと発言している。その喜びように、みっちゃんもとても嬉しいようすをみせていた。お子さん洋食には、サンドウィッチ、オムレツ、牛肉の卵巻き揚げと、ハムと彩りのパセリ、そして食後にプリンが提供された。各料理を食べるハナの様子がとてもかわいらしく、しっかりしているが、ハナが14歳の少女であることを認識できる場面である。

野中ハナ「あっあっあっ…~~~~~ありがとうございます…!!」

第5巻収録の第28話『寄せ合うもの』で、ハナが、令子から外国製の文鎮をもらったときのセリフ。
近所の御婦人方から、夏におすすめの涼しげなスイーツとして、教えてもらったフルーツ・ゼリーを初めてハナが作った際、その出来上がりが、まるで宝石のようにキラキラした美しさでハナは目を輝かせていた。そんな様子を見ていた令子はハナがキラキラしたものが好きなのではと思い、外国製の文鎮をプレゼントした。これまで令子に対して、主人であり遠慮していたハナだったが、ハナが嬉しい・喜ぶことが令子自身にとっても嬉しいことだ、と令子から聞かされ、行為に甘え、文鎮をもらうことで令子も喜ぶということを理解し、感謝の気持ちと嬉しい気持ちを伝えるべく、「あっあっあっ…~~~~~ありがとうございます…!!」と御礼を言っている。このセリフはコマ一杯の大きさに書かれており、ハナの気持ちの大きさがわかるセリフだ。

『うちのちいさな女中さん』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

コミックス収録時まるまる書き直された第一話

原作者の長田佳奈が出演したポッドキャスト番組『マンガのラジオ』 Vol.76内で、雑誌掲載時とコミックス収録時で第1話を書き直したと話している。
長田佳奈にとって本作は初めての長期連載作品となるのだが、6話まで連載してみて登場人物の性格のイメージが長田佳奈自身が思い描いているものと1話に違和感があったため、コミックス発売時に編集部に依頼し、第1話をネームからまるまる書き直しをした。

ハナのメガネは必須

主人公ハナは大きな丸メガネをかけているが、担当編集者からは、メガネをはずしたビジュアルに変更するよう提案したことがある。しかし、長田佳奈はメガネの良さを担当に力説し、今のメガネ・おさげのビジュアルとなったと、ポッドキャスト番組『マンガのラジオ』 Vol.76内で語っている。

今も我々の生活を支えるブランドの登場

作中では現代の我々の生活を支える製品を取り扱う企業の昭和初期の製品が作品内に登場する。
日東紅茶が昭和初期に取り扱っていた紅茶缶や現在のイトーキである伊藤喜商店が明治の頃アメリカから輸入し発売していた、ホッチキス自動紙綴機などが原作内に登場する。長田佳奈は作画にあたり、当時の写真を日東紅茶から提供された素材を参考にした、と自身のXで投稿している。

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