うちのちいさな女中さん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『うちのちいさな女中さん』とは、長田佳奈による漫画作品。
昭和初期の東京を舞台に、かつて女性の一大職業であった女中の日常を描く。
14歳の少女、野中ハナが女性翻訳家蓮見令子の家に女中としてやってきたところから物語がはじまる。昭和初期のモダンな文化住宅造りでの住み込み女中の仕事や、主人との関係、そして東京での暮らしが優しいタッチで描かれている。大きな事件が起こるわけではないが、主人と女中という関係の2人が、姉妹のように仲良くなり、ハナの変わっていく様子を微笑ましく読むことができるところが魅力。

蓮見家の当主。翻訳家として活躍する職業婦人。髪は短く全体に大きなウェーブをつけている。基本は和服を着用しているが、外出時はワンピースやパンプスで洋風の装いを楽しむ様子が描かれている。
英語が得意で、女学校の特別講師を務めたこともある。翻訳家として多忙を極め、家事など一切手がつけられないため始めはトメという派出婦にきてもらっていたが、トメが引っ越してしまったため、有田毅(ありたつよし)を頼って住み込みの女中として、ハナを紹介してもらった。
自宅は、一軒家でその一室を仕事場としている。家を建てた際に流行していた洋間の応接間があったり、台所には、ガスと水道が引かれ、冷蔵庫もあるなどモダンな文化住宅造り。
2年前に夫の肇(はじめ)を亡くした未亡人でもある。夫への思いが失われていない証拠に、結婚指輪は今も常に身につけていたり、肇の姉に再婚を薦められているが、断り続けている様子がみられる。
ハナの将来を案じる一面もあり、肇の姉からハナに教養・教育を受けるよう言われ薦めたり、ハナは同年代と関わることの少ないため、同年代である吉田萬里(よしだまり)にハナと仲良くしてほしいとお願いしたりしている。
生真面目なハナの可愛らしい様子・一面を見るたびに構いたくなってしまい妹のようにかわいがっていくなかで、日々の生活が楽しく、笑顔が増え前向きになってきている。

東京の人々

みっちゃん

みっちゃん(画像左の女性)

喫茶店Cafe ミチクサの主人。物腰のやわらかい関西地方の言葉遣いで話し、令子が気を許し、気兼ねなく話せる同世代の女性。庇髪を結い、和服の上にエプロンを身につけて接客をしている。コーヒーは注文を受けてから豆を挽き抽出しており、香り高い一杯を提供している。また、昼時には、いわゆるランチメニュー、昼の定食を提供している。誤って卵を大量に仕入れてしまった際は、お店にやってきたハナにサンドウィッチ、オムレツ、牛肉の卵巻き揚げなどを少しずつ食べられるお子さん洋食、いわゆるお子様ランチを振る舞った。
蓮見夫妻とは旧知の仲であったようで、肇が亡くなった経緯を知っている。夫の死を受け止められずにいる令子を気にかけている。ハナが女中として、令子宅で働き始めた後、徐々に令子に笑顔や明るさが戻ってきていることに喜び、安堵している。

吉田 萬里(よしだ まり)

14歳の女学生。
令子が女学校で特別講師を務めた際に授業を受けた生徒の一人で、令子を「おねえさま」と呼んで慕い、文通したり、令子宅を訪れるなどし、交流を続けており、職業婦人として自立している令子に憧れている。
自分と歳が変わらない女中のハナが住み込みで働き、一緒に料理をしたり休日におでかけをしていると知り、嫉妬から対抗心を燃やす様子が描かれている。
そんな中、海水浴招待券を懸賞でもらい、令子を誘ったところ、水泳の練習を熱心に行っていたハナと3人で鎌倉の海水浴場に行くこととなってしまった。令子から、同年代の友人として、ハナと接して欲しい、ハナに水泳を教えてほしいと頼まれ、憧れの令子からの頼みに応えるよう張り切るが、なかなか上達しないハナに困った様子もみられた。しかし、海水浴の休憩中、令子と2人きりでお茶をすることができ、とても素晴らしい思い出となっている。

蓮見 肇(はすみ はじめ)

令子の夫で故人。
ハナが有田邸に勤務していた頃、ハナの面倒をよくみていた模様。

トクさん

令子宅にハナの前に勤めていた派出婦。通いで玲子宅の家事全般を行っていたが、息子夫婦とともに、隣町に引っ越すことになり、勤めを辞した。

肇の姉

肇の姉で、令子の義理の姉。真面目な婦人で家内の掃除の行き届きなど厳しくチェックしたり、女中に対する教育など厳しくするよう令子に伝えるなど厳しい一面がみられる。
肇が早くに他界してしまったため、独り身でいる令子の身を案じ、縁談の話を度々持ちかけている。しかし、ハナの存在により笑顔が増えた令子の様子をみて、しばらくこのまま様子をみようと考え直した。

ご婦人方

令子宅の近くに住む3人の主婦たち。よく近所で井戸端会議をしている。
夏の暑さで、令子が寝付けていなかった際、解決策はないかと悩んでいたハナが、ちょうど3人がアッパッパー(簡単服)で快適に寝ることができたと井戸端会議していたところをハナが通りすがりに聞いたことをきっかけに、仲良くなった。
アッパッパーの作り方や、食材のおすそ分けをしたりしている。令子いわく、令子よりハナのほうがこのご婦人方や近所で顔が広くなっている。

吉田 万太郎(よしだ ばんたろう)

やや年が離れた萬里の弟。好奇心旺盛で博識。
特に動物の生態についての知識が豊富である。

道に動物の絵を描いていたところ、休日で街歩きをしていたハナから声をかけられて知り合った。甲府からでたことがほとんどなかったハナは動物に関する知識がなく、万太郎からキリンや象、大怪物(ネッシーのこと)などを教わった。

有田家の人々

有田 毅(ありた つよし)

山梨県甲府市で、大きな屋敷に複数の使用人を抱える名士。ハナが10歳から勤めていた主人。
温厚で物腰の柔らかな男性。
令子や、肇の姉からは「おじさま」と呼ばれており、令子から、女中の当ての相談を受けハナを令子に紹介した。当初はハナの先輩である佐竹フヨを紹介しようとしていたが、ハナ自身が、行きたいと志願したと発言している。

佐竹 フヨ(さたけ ふよ)

有田邸で働く女中でハナの先輩女中。当初、令子宅に女中として赴く予定だったが、ハナが自ら令子の元に行くことを志願したため、有田邸で引き続き女中として働いている。
読み書きができ、ハナに文字を教えた人物で、ハナからの手紙を女中仲間のタカに読んであげている。

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