きっと、またあえる(インド映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『きっと、またあえる』とは、2019年に公開されたインド映画でコメディ映画である。批評家から高い評価を受け、第65回フィルムフェア賞において5つの賞にノミネートされた。大学受験に失敗したことで生きる気力を失い、自殺未遂をしたラーガヴに父親のアニが大学時代の親友たちを呼び集め、彼に「負け犬」と呼ばれていた大学時代の奮闘記を語る。インド映画特有の挿入歌の歌唱シーンが随所に散りばめられており、強い社会的メッセージの中にもユーモアに溢れる明るい映画である。
『きっと、またあえる』の概要
『きっと、またあえる』とは、2019年にインドで公開されたコメディドラマ映画である。ディレクションや俳優の演技、社会的メッセージ及び大学生活の描写が批評家から高い評価を受け、世界中でもヒットした。インド映画としては、当時世界興行収入1位となる340億円を記録した。初公開週作品インド映画では1位を獲得している。また、第65回フィルムフェア賞では作品賞・監督賞・原案賞・台詞賞・編集賞の5つの賞にノミネートされている。その他にも第21回国際インド映画アカデミー賞において原案賞に、第12回ミルチ音楽賞においては作曲賞でノミネートされた。ニコロデオン・キッズ・チョイス・アワード・インディアではフェイバリット作品賞とフェイバリット女優賞を受賞、第67回国家映画賞ではヒンディー語長編映画賞を受賞している。さらに、第26回スター・スクリーン・アワードでは批評家選出作品・批評家選出主演男優賞・助演男優賞の3つにノミネートされ、ジー・シネ・アワードでは監督賞・原案賞・脚本賞・主演女優賞の4つにノミネートされた。
インドでは2019年9月6日に公開され、日本では、2020年8月21日より公開された。
ニテーシュ・ティワーリーが監督を務め、スシャント・シン・ラージプート、シュラッダー・カプールが主要キャストとして出演している。
大学受験に失敗したことで生きる気力を失ってしまったラーガヴは、自殺を図り重体となる。一命は取り留めたものの、容体が回復しない様子を見て父親のアニはプレッシャーを与えすぎてしまった己を反省する。「負け犬」と呼ばれていたアニ自身の大学時代を話し、当時の悪友を次々と病室に呼び、大学時代の思い出を語りながら、失敗や挫折から学んだことをラカーヴに伝える。
コメディ映画であるが、インドの厳しい大学受験の現状をもとに社会的問題にも踏み入っている。人生の困難に立ち向かい、失敗から学ぶことの大切さを訴え、希望と再生のメッセージを観客に届ける映画となっている。
『きっと、またあえる』のあらすじ・ストーリー
息子ラーカヴの自殺未遂
アニは妻のマヤと離婚し、息子のラーガヴと共に2人で暮らしている。ラーガヴは優秀な成績を収めていたが、大学入試のプレッシャーに苦しんでいた。アニはその様子を見ているものの、大学に合格した後のことばかりラーガヴに話し、さらに追い詰めてしまう。
合格発表の日、ラーガヴは友人の家で合否を確認する。自分では怖いから確認できないと、友人に確認してもらうが、結果は不合格であった。今後の人生に失望したラーガヴはそのまま窓から飛び降り、自殺を図ってしまう。
病院で治療を受け一命を取り留めたものの、「生きる気力」を失っているラーガヴの容体は悪いままである。元妻のマヤも病院に駆けつけるも、ラーガヴの姿を見てアニを責める。
大学時代のエビソードを語る
重体のラーガヴの「生きる気力」を取り戻そうと、アニは自身の大学時代を語る。ラーガヴからは成功しているように見えたアニも、大学時代は「負け犬」と呼ばれていた。大学時代のアルバムを見せながら話すも、なかなかアニはラーガヴに信じてはもらえない。
そこでアニは、かつての友人たちを病室に呼びあつめた。
「敗者」寮に配属される
ボンベイ工科大学に入学したアニは、学生生活の拠点となる学生寮として「H4」の部屋を割り当てられる。H4には個性的な寮生たちが多く住んでおり、寮全体の清潔感にも欠けている。大学で開催される競技大会ゼネラル・チャンピオンシップ(GC)では万年最下位の劣等寮であり、そのため「負け犬」「敗者」寮と呼ばれていた。配属先を見て絶望したアニは、何度も寮変更を申し出るが空きがないため受理されず、H4で生活を始めることとなった。
個性的な寮生と次第に仲良くなり、友情を深めた。中でも、性にしか興味のない「セクサ」、悪態ばかりつく口の悪い「アシッド」、マザコンの「マミー」、大酒飲みの「へべれけ」とは親友となった。また、元妻で当時学生たちのマドンナ的存在だったマヤと付き合うようになる。
愉快な寮生たちと楽しい毎日を過ごすも、他寮からは相変わらず「負け犬」と呼ばれ馬鹿にされる日々であった。
寮対抗競技会ゼネラル・チャンピオンシップ(GC)
大学入学から2ヶ月後、寮対抗競技会ゼネラル・チャンピオンシップ(GC)が開かれることを知った。各寮が力を入れる中、GCの優勝常連寮である「H3」もGCに備えていた。H3リーダー格のラギーはスポーツ万能なアニの噂を聞き、H3に引き抜こうと声を掛ける。しかしアニは、H4のメンバーとの生活を満喫していたため、誘いを断ってしまう。悪態をつかれラギーと別れた後、かつてラギーから誘いを断った最上級生・H4の兄貴分「デレク」と出会う。「負け犬」と呼ばれることに慣れてしまっているデレクにアニは今が見返す時だと、GCでの優勝を掲げてH4の汚名返上を目指す。
GCでの作戦と結果
アニとデレクは寮生から出場選手を選ぶが、H4の寮生たちはスポーツが苦手で、優勝を目指すには厳しい状況だった。彼らはモチベーションも低く、勝つための意欲が欠けていた。そこでアニは寮生たちのやる気を引き出すために、各自が大事にしていることを断つように提案する。セクサには禁欲、アシッドには悪態の禁止、マミーには母親への連絡禁止、へべれけには禁酒を課す。アニ自身もマヤとの関係を断つ決意をする。しかし、H4はGCで敗北が続き、禁酒していたへべれけが禁断症状を起こして入院する事態に。アニはへべれけに断酒をやめるように言うが、へべれけは今回初めて禁酒が続いていることを誇りに思い、仲間のために頑張りたいと伝える。
このままでは優勝は難しいと考えたアニは、新しい戦略を立てる。競技の際には応援団を組織し、強力な応援とブーイングで相手チームにプレッシャーをかけた。また、プレー中のファウルを過剰に演出して強豪選手を退場させた。さらに、マヤにも協力を頼み、試合前夜に相手チームの選手と長電話するなどの作戦を実行した。これらの作戦は功を奏し、H4はGCでの順位を順調に上げ、ついに優勝がかかった決勝戦の日を迎える。対戦相手はH3で、種目はリレー、チェス、バスケットボールの3つ。ラギーの妨害工作に苦しむが、デレクとへべれけの活躍によりリレーとチェスで勝利する。バスケットボールでの勝利が優勝を決める状況で、アニはスリーポイントを狙うが、ゴールを外してしまう。
アニたちは優勝を逃し落胆するが、ラギーはH4の健闘を称え、彼らを賞賛する。GCでの努力と奮闘により、H4の評価は大きく向上した。
結末
物語を話し終えたアニは、勝敗に関わらず戦いに全力で挑んだことで「負け犬」の汚名を返上したこと、結果よりも努力することの重要さをラーガヴに伝えた。父の話を聞き終えたラーガヴは病室に集まったかつての「負け犬」たちに見送られて再手術を受ける。手術は無事に成功し、ラーガヴは回復した。
1年後、ラーガヴは大学入学を果たす。勝敗にこだわらない人生を選択し、「自分がどんな学部に入ったのかは尋ねないで欲しい」と語りかけ、物語は終わる。
『きっと、またあえる』の登場人物・キャラクター
主要人物
アニ/アルニッド・パタク(演:スシャント・シン・ラージプート)
日本語吹き替え声優:入野自由
物語の主人公であり、H4寮の一員である。大学時代はユーモアと情熱に溢れ、仲間たちの中心的存在であった。現在は中年となり、息子ラカーヴを育てるシングルファーザーだ。ラカーヴの自殺未遂事件をきっかけに、大学時代の友人たちと再会し、息子を救うために過去の思い出を語る。
マヤ/マヤ・シャルマ・パタク(演:シュラッダー・カプール)
日本語吹き替え声優:坂本真綾
アニの元妻であり、ラカーヴの母親。大学時代は学校のマドンナ的存在であった。大学在学中にアニと出会い、結婚する。彼女は息子のために必死にサポートをしようとするが、アニとの関係はうまくいかず離婚している。病院での出来事を通じて、アニと協力してラカーヴを支えようとする。
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目次 - Contents
- 『きっと、またあえる』の概要
- 『きっと、またあえる』のあらすじ・ストーリー
- 息子ラーカヴの自殺未遂
- 大学時代のエビソードを語る
- 「敗者」寮に配属される
- 寮対抗競技会ゼネラル・チャンピオンシップ(GC)
- GCでの作戦と結果
- 結末
- 『きっと、またあえる』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- アニ/アルニッド・パタク(演:スシャント・シン・ラージプート)
- マヤ/マヤ・シャルマ・パタク(演:シュラッダー・カプール)
- セクサ/グルミート・シン・ディロン(演:ヴァルン・シャルマ)
- デレク/デレク・デソウザ(演:ターヒル・ラージ・バシン)
- アシッド/ヒマンシュ・デーシュムク(演:ナヴィーン・ポリシェッティ)
- マミー/スンダル・スリヴァスタヴァ(演:トゥシャール・パーンデー)
- へべれけ/サヒール・アワスティ(演:サハルシュ・クマール・シュクラ)
- 大学時代の登場人物
- ラギー/ラグヴィール・チャルカル(演:プラティーク・バッバル)
- ヴェンキー/ヴェンカテーシュ(演:アビシェーク・ジョゼフ・ジョージ)
- パンドゥ(演:ナルニーシュ・ニール)
- モヤシ/アビマニュ・ラトーレ(演:ランジャン・ラージ)
- ドゥライ・ピトロダ(演:ラズィーヤ・スルタナ)
- セクサの父(演:アダルシュ・ガウタム)
- マミーの父(演:サンジャイ・ゴーラディア)
- 入寮受付係(演:サーナンド・ヴェルマ)
- 現代の登場人物
- ラーガヴ/ラーガヴ・パタク(演:ムハンマド・サマド)
- スミット・デーヴ・カースベーカル医師(演:シシル・シャルマ)
- 『きっと、またあえる』の用語
- 大学生活
- ボンベイ工科大学
- GC
- 大学寮
- H4
- H3
- 『きっと、またあえる』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- アニ「我々は敗者と呼ばれるが、真の勝者は誰か見せてやる!」
- アニ「失敗は終わりじゃない、ただの通過点だ。」
- セクサ「一人じゃない、俺たちがついてる。」
- 『きっと、またあえる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- リアルな大学生活の描写
- 役作りのために大学生活を体験
- インド映画ならではの音楽
- 『きっと、またあえる』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:アリジット・シン「Khairiyat」
- 挿入歌:アリジット・シン「Woh Din」
- 挿入歌:ナカーシュ・アズィーズ、デーヴ・ネーギ、アンターラー・ミトラ、アミット・ミシュラ、シュリーラーム・チャンドラ、アミターブ・バッタチャールヤ「Fikar Not」
- 挿入歌:ナカーシュ・アズィーズ、マニーシュ・J・チプー、ギート・サガル、シュリーラーム・チャンドラ、アミターブ・バッタチャールヤ「Control」
- 挿入歌:KK「Kal Ki Hi Baat Hai」