上原ひろみ(Hiromi)の徹底解説まとめ

上原ひろみ(Hiromi)とは、静岡県生まれでアメリカ合衆国を拠点に活躍するジャズピアニストである。17歳の時に、アメリカの有名ジャズピアニストであるチック・コリアと共演するなど、世界を股にかけて音楽活動を行なっている。
2003年4月22日にアメリカのジャズの名門であるテラーク・レコードと契約し、アルバム『Another Mind』で世界デビューを果たした。

上原ひろみ(Hiromi)の概要

上原ひろみ(Hiromi)とは、世界で活躍するジャズピアニストである。
2003年、バークリー音楽大学を卒業する直前にデビューアルバム『Another Mind』をリリースし、瞬く間に注目を集めた。その後も、『Brain』や『Spiral』といったアルバムをリリースし、国際的な評価を得た。
音楽のスタイルはジャズを基盤としながらも、クラシック、ロック、フュージョンなど多様なジャンルの影響を受けている。卓越したピアノ技術と独自の音楽スタイルで、即興演奏の能力も非常に高く、ライブパフォーマンスではその場の雰囲気に応じた創造的な演奏を繰り広げる。世界各地でツアーを行い、国際的な音楽フェスティバルにも参加している。グラミー賞にもノミネートされるなど、その才能は国際的にも認められており、多くのアルバムが高い評価を得ている。また、アメリカのジャズピアニストであるチック・コリアをはじめとする、世界で活躍する有名アーティストとも度々共演している。

上原ひろみ(Hiromi)の活動経歴

デビューアルバム『AnotherMind』に関する活動

2003年4月22日、アメリカのジャズの名門であるテラーク・レコードと契約した。デビュー・アルバム『Another Mind』をリリースし、世界デビューを果たす。以後、全米各地のジャズフェスティバルに出演した。同年5月3日には、「第8回 ケネディ・センター・メアリー・ルー・ウィリアム・ウィミン・イン・ジャズ・フェスティヴァル(Kennedy Center Presents Eighth Annual Mary Lou Williams Women in Jazz Festival)」にトリオで出演した。そこでの演奏は「ロック、ファンク、ジャズ、パンクと音の力を究めた」と高く評価された。

同年6月25日、ユニバーサルより日本盤『アナザー・マインド』をリリースし、国内で正式デビューした。同年10月19日放送のTV番組『情熱大陸』に出演し、密着取材された場面やニューヨークやヨーロッパツアーに同行取材して撮影したライヴ映像などが全国配信された。同年12月13日にはキリンのテレビCMにも登場した。

2004年3月10日、第18回 日本ゴールドディスク大賞(主催日本レコード協会)で『アナザー・マインド』がジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

2003年〜2004年の活動

2004年4月21日、2枚目のアルバム『Brain』をリリースした。同アルバムはアメリカでサラウンド・ミュージック・アワード<ニュースター賞>を受賞した。

2005年に、活動の拠点をボストンからニューヨークに移した。同年10月19日に、3枚目のアルバム『Spiral』をリリースした。同アルバムはジャズディスク大賞 日本ジャズ賞を受賞した。

2006年1月31日、雑誌『SWITCH』の20周年企画「SWITCH ON LIVE」の第4弾の記念ライブとして「DREAMS COME TRUE」との一夜限りのライブを行なった。同年12月8日には、昭和女子大学人見記念講堂で矢野顕子とジョイントライブを行なった。この年発売の矢野のアルバム『はじめてのやのあきこ』にも参加している。また、同年「ミラノ・コレクション」で演奏した。「ボストン・ミュージック・アワード」の2006年ベスト・ジャズ・アクトを受賞した。

2007年〜2011年の活動

2007年2月21日、4作目のアルバム『Time Control』リリース。前作のトリオにデヴィット・フュージンスキー を迎えて「Hiromi's Sonicbloom」というプロジェクトを結成した。発売に際してタワーレコード渋谷店でインストアライブ、原宿で番組収録イベントを行った。また、世界最大のフェスティバル、イギリスの「グラストンベリー・フェスティバル」に出演し話題となった。同年11月公開の映画『オリヲン座からの招待状』にメインテーマ曲「PLACE TO BE」を提供した。
アルバム『Spiral』やツアーの開催などの活動実績から、平成18年度(第57回)芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)に選出された。

2008年1月30日、アメリカの有名ジャズピアニストであるチック・コリアとのアルバム『Duet』をリリースした。
同年5月28日には、5作目のアルバム『BEYOND STANDARD』をリリースした。前作で結成した「Hiromi's Sonicbloom」での作品である。このアルバムで同年12月30日、第50回日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞した。

2009年4月、スタンリー・クラークとのプロジェクトとしてアルバム『JAZZ IN THE GARDEN』をリリースした。名義はThe Stanley Clarke Trio with Hiromi & Lenny Whiteとしている。
同年9月に、アルバム『Place to Be』をリリースした。自身初のピアノソロ作品である。2007年11月公開の映画『オリヲン座からの招待状』にメインテーマ曲として提供した「PLACE TO BE」が再演され収録されている。同アルバムはアメリカでもリリースされ、アメリカのAmazonのジャズチャートで1位を記録した。

2010年は、スタンリー・クラーク・トリオとして北米、日本のツアーを行った。同年6月2日に発売されたスタンリー・クラーク・バンドのアルバム『The Stanley Clarke Band fraturing Hiromi』において、一部の曲でピアノ・ソロを演奏している。

2011年の第53回グラミー賞で、バンドメンバーとして参加したアルバム『The Stanley Clarke Band fraturing Hiromi』がBest Contemporary Jazz Albumを受賞した。
同年2月23日よりオンエアされたサッポロビール「シルクヱビス」のCM「新しい二人」篇で、『第三の男』のテーマのオリジナル・アレンジを演奏した。
同年3月16日、アンソニー・ジャクソンとサイモン・フィリップスを迎えたTHE TRIO PROJECTの第1弾アルバム『Voice』をリリースした。

2012年〜2015年の活動

2012年4月1日にニューヨークの国連総会議場で行われたユネスコ主催の「第1回インターナショナル・ジャズ・デー」に参加した。また、アンソニー・ジャクソンとサイモン・フィリップスと共にTHE TRIO PROJECTとして「フジロックフェスティバル」(7月27日開催)のOrange Courtに出場し、話題となった。さらに、THE TRIO PROJECTとして2作目となるアルバム『MOVE』をリリースした。

2013年3月にTHE TRIO PROJECTとして2作目となるアルバム『MOVE』を全米でもリリースした。アメリカで最も権威のあるジャズ専門誌『ダウン・ビート』4月号の表紙に登場し、大きな注目を集めた。日本人アーティストとしては33年ぶり2人目に表紙を飾る快挙である。また、4月にはニューヨーク・ブルーノートでの9年連続6日間公演を成功させた。8月には、国立新美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート展」の公式テーマ曲を手掛けた。

2014年5月にTHE TRIO PROJECTとして2作目となるアルバム『ALIVE』をリリースした。各地をツアーで周り、大盛況であった。12月には、日本のアーティスト「レキシ」とコラボし、東名阪ツアー『レキシ対オシャレキシ』にピアノと全曲アレンジで参加した。

2015年も、世界各地のライブ会場で公演を行った。日本でも度々公演を行っており、12月には6年ぶりに新日本フィルハーモニー交響楽団との共演を果たした。

2016年〜2019年の活動

2016年2月3日にTHE TRIO PROJECTとして4作目となるアルバム『SPARK』をリリースした。当作は全米ビルボードのTraditional Jazz Albums部門で1位、またジャズ総合でも1位を獲得した。ジャズ部門の総合1位を獲得したのは日本人では2人目となる快挙であった。

2017年4月、アーティストの矢野顕子とツアーで各地を巡った。10月には、ハープ奏者エドマール・カスタネーダと共作したアルバム『Live in Montreal』をリリースした。名義はHIROMI & EDMAR CASTANEDAとなっている。エドマーナとは「モントリオール国際ジャズフェスティバル」で出会い、共演したことがきっかけでアルバム制作を行うこととなった。当アルバムで12月30日、第59回日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞した。また、12月には、ダンサーの熊谷和徳とツアーで各地を巡った。

2018年6月に、人気ジャズ漫画『BLUE GIANT』のライヴイベントに出演した。

2019年9月、ソロ・ピアノアルバム『Spectrum』をリリースした。ソロ・ピアノアルバムは10年ぶりのリリースであった。11月からは日本にて全22公演を行う「Spectrumツアー」を行った。

2020年以降の活動

コロナ渦となった2020年からは、苦境にあるライブ業界の救済を目的にブルーノート東京にてシリーズ企画「SAVE LIVE MUSIC」を展開した。様々な行動規制がある中、その公演回数は100公演を超えて行われた。

2021年7月23日、国立競技場で行われた2020年東京オリンピック開会式において、市川海老蔵と共演し、ピアノ演奏を披露した。開会式の様子は世界に生中継され、日本の誇る和の要素とジャズピアノの融合が注目を集めた。
9月には、2020年から行っていたブルーノート東京でのシリーズ企画「SAVE LIVE MUSIC」から生まれた新プロジェクト「上原ひろみザ・ピアノ・クインテット」としてアルバム『SILVER LINING SUITE』を全世界リリースした。弦楽四重奏とジャズピアノが繰り出す新たな世界観での音楽が多くのファンを虜にした。『Hiromi The Piano Quintet Japan Tour 2021“SILVER LINING SUITE”』を行い、日本各地で公演を行った。アルバム『SILVER LINING SUITE』は日本ゴールドディスク大賞を受賞した。

2022年からは、本格的にワールドツアーを再開した。TVドラマ『となりのチカラ』の主題歌として「上を向いて歩こう」のアレンジを提供した。

2023年2月に劇場公開された映画『BLUE GIANT』で音楽監督を務め、第47回日本アカデミー賞において最優秀音楽賞を受賞した。映画内のピアノ演奏も担当した。9月には新プロジェクト「Hiromi’s Sonicwonder」としてのアルバム『Sonicwonderland』をリリースした。併せて『JAPAN TOUR 2023 SONICWONDERLAND』も行った。その他ソロピアノ公演も多数行った。また、米ラジオ局「NPR」の人気シリーズ企画「Tiny Desk Concerts」に出演し、アルバム『Sonicwonderland』より「ソニックワンダーランド」と「ウォンテッド」の2曲をパフォーマンスし、話題となった。
令和5年度文化庁長官表彰を受賞した。

2024年2月3日、大阪シネマフェスティバル2024音楽賞を受賞した。また、夏のフジロックフェスティバルに出演した。

上原ひろみ(Hiromi)のプロフィール・人物像

1979年に静岡県で生まれた。6歳でピアノを始め、ヤマハ音楽教室の幼児科とジュニア専門コースに通い、ピアノと作曲を学んだ。ヤマハ音楽教室主催の「ジュニアオリジナルコンサート(JOC)」に何度も出場した。
1987年(当時8歳)、ピアノの先生宅でジャズのレコードを見つけ、ジャズへの興味が湧く。その後もジャズ好きの先生達に囲まれ、小学生にして既にオスカー・ピーターソンやエロル・ガーナーに熱中する時代を送っていた。当時から即興演奏を行い、小学校内の音楽会では人気アニメ『ちびまる子ちゃん』の主題歌「おどるポンポコリン」を独自に編曲。楽譜パートの譜面作りも1人で行い周囲を驚かせた。

1993年(当時14歳)、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と共演した。1994年には、『趣味百科 ピアノで名曲を』(NHK)に生徒として出演し、シューマンの「幻想小曲集作品12 (シューマン)」から「飛翔」「なぜに」を演奏した。
1995年、静岡県立浜松北高等学校国際科に入学。在学中はジャズやクラシックに加えてロックにものめり込んだ。

同年12月(当時16歳)、上京した折に、たまたまヤマハで来日公演のためのリハーサルを行っていたチック・コリアと出会い、コリアに促されて目の前でピアノを弾く。上原の技術に感銘を受けたチックも加わり、その場で即興での共演となった。上原の卓越したピアノの才能を見抜いたチックは来日公演の最終日に上原をステージに上げ、今度は観客の前で共演を果たした。
1997年、ヤマハ・アメリカとミシシッピ州サリアマラ国際芸術財団が共催で開催された「チャリティ(インターナショナル)ジュニアオリジナルコンサート(JOC)」にアメリカの子ども8名とともに特別ゲストとして参加した。全米三大ネットワークでテレビ放映され、話題となった。

1999年(当時20歳)、ヤマハの音楽支援制度で留学奨学支援(奨学金)を得たのを機に、マサチューセッツ州ボストン市にあるバークリー音楽大学への留学を決意する。在学していた法政大学法学部を中退し、渡米した。その後、バークリー音楽大学の作編曲科に入学した。

2003年4月22日、バークリー音楽大学の卒業を目前にして、アメリカのジャズの名門であるテラーク・レコードと契約する。デビュー・アルバム『Another Mind』(日本盤『アナザー・マインド』)をリリースし、世界デビューを果たした。その後、全米各地のジャズフェスティバルに出演している。
同年5月11日に、バークリー音楽大学を最優等で卒業する快挙を達成した。卒業式にてバークリーで最も名誉ある賞の一つであるビルボード寄贈奨学金を授与された。

2007年9月1日に、デザイナーの三原康裕と結婚した。本名が三原ひろみとなったが、活動は「上原ひろみ」のままで行なっている。

上原ひろみ(Hiromi)のディスコグラフィー

スタジオアルバム

Another Mind

発売日
日本 2003年4月23日
世界 2003年6月17日

収録曲
1. XYZ
2. Double Personality
3. Summer Rain
4. Joy
5. 010101 (Binary System)
6. Truth and Lies
7. Dancando No Paraiso
8. Another Mind

参加メンバー
上原ひろみ(p,key)
ミッチ・コーン(b)
デイヴ・ディセンゾ(ds)
アンソニー・ジャクソン(b)
ジム・アルドグレン(as)
デヴィット・フュージンスキー(g)

日本ゴールドディスク大賞(ジャズ部門)を受賞したデビューアルバム。エネルギッシュなピアノプレイと多彩な楽曲で、ジャズシーンに新風を吹き込んだ。

Brain

disonne
disonne
@disonne

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