乙ゲーにトリップした俺♂(乙俺♂)のネタバレ解説・考察まとめ

『乙ゲーにトリップした俺♂』とは、漫画家・花乃軍(かのいくさ)による全3巻のファンタジー漫画である。略称は『乙俺♂』。ジーンピクシブにて連載を開始し、後にニコニコ静画での公開もされた。乙女ゲームの世界に男がヒロインとしてトリップするという斬新なアイデアと魅力的なイケメンキャラ、そして乙女ゲームあるあるが詰め込まれた内容が多くの女性の心を掴んだ。乙女ゲーム「シロガネクルワ」にトリップしてしまった男主人公・乙谷乙成(おとやおとなり)が、元の世界に帰る為に奮闘するさまと攻略キャラ達との交流を描く。

大団円エンド

攻略キャラが掲載されているページが開かれた乙成のスマホ画面。画面内のアイコンのキャラクターが攻略キャラ。

乙ゲーのエンドの1種。攻略対象全員と均等に仲良くなる、もしくは誰も攻略できるほどに好感度をあげられていないなど、攻略条件を満たしていない際に発生するエンドの事である。
『乙俺♂』では攻略キャラの好感度を表す5つのハート型のメーターを、攻略キャラ全員分3以上5未満になるようにあげ、なおかつ無事に物語を終える事で発生させる事が可能。

ラブイベント

朝にのみ発生するラブイベントの光景。

主人公と攻略キャラの間に発生するイベントの1種。好感度をあげるきっかけになったり、逆に好感度をあげたからこそ発生したりする場合もある。
なお、好感度の上昇率や物語の展開は、この時用意された選択肢のどれを主人公(プレイヤー)が選ぶかによって変わる。『乙俺』の場合は、明確な選択肢は存在せず、乙成がどのような言動を取ったかによって、攻略キャラの好感度が変わる仕組みとなっている模様。

夜環の国(よわのくに)

乙ゲー『シロガネクルワ』の舞台となる国。乙成や攻略キャラ達が暮らす国でもある。
古来より「月には不思議な力がある」という言い伝えが存在する国で、それ故に国内は月を象った造形物で溢れている。「夜環」の名も、月を意味する単語である事からつけられた模様。

異形/かぐや

夜環の国にはびこる異形であり、人々と敵対している存在。「かぐや」と呼ばれる事もあり、女性の姿をした骸骨の異形の総称だという。夜行性で凶暴。

かぐや狩り部隊

異形であるかぐやと戦う為に結成された民間の部隊。壱葛・花簪・梦・現來の4人が所属する部隊でもある。

『乙ゲーにトリップした俺♂』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ラブイベントでモブ男と戦う事になった壱葛を守る為に暖簾を携えて戻ってきた乙成

「LV:2 まさかの選択肢デビュー!」にて発生したラブイベントで、モブ男に見初められ、裏路地で襲われかける羽目になった乙成。壱葛に助けられて危機を脱するが、彼を置いて逃げられなかった乙成は武器の代わりになる物として近くの店先にあった暖簾を持って現場に戻る。そして戻ってきた勢いのままに暖簾ごとモブ男に突っ込み、彼をのしてしまう。

乙ゲーのヒロインにあるまじき行動ではあるが、乙成が男である以上、ただ守られるのは性に合わないというのは展開として頷けるものがある。また、まだ出会って日が浅い壱葛の事を迷わずに助けに向かう姿からは、彼の人としての優しさも感じられ、乙成というキャラがどういうキャラであるかがよく伝わってくる名シーンだといえよう。

さらに、そこで持ってきたのが暖簾という予想外の事態に、これを読んだ多くのファンを笑わせる事となったのも事実だ。これにより、壱葛同様に乙成への好感度があがったファンも多い模様。乙成の人となりがよくわかる乙成好感度上昇シーンでもある。

乙谷乙成「人間をシェアするのなんか無理だってのに もっと自分を大事にしろよな」

「LV:12 素直じゃねーな♪」にて、簪が引き連れていた女子達に裏路地へ連れて行かれた乙成が、その後自分を助けてくれた簪に対して言った台詞。

女子に人気がある簪に対して、常日頃恨めしさを感じている乙成。この台詞を簪に向けて言った回でも、女子を紹介しろと簪に迫っているが、しかしその反面で「人間をシェアするのなんか無理だってのに もっと自分を大事にしろよな」という台詞からは簪自身の事を深く心配している様子も見受けられる。

元の世界に帰る為に攻略キャラ達との好感度をあげている乙成。だが日々彼らと過ごしていく内に、それだけではない個人的な感情として攻略キャラ達に少しずつ親しみを覚えていくようになる。この台詞は、そんな乙成の簪に対する個人的な情が伺える台詞といえる。

また、「人間をシェアするのなんか無理」という言葉からは、乙成自身の恋愛に対する価値観も伺える。常にモテモテになりたいと言っている乙成だが、「シェア」は無理だという考え方からは、どうやら複数の人と同時に付き合いたいと考えているわけではない模様。
乙成の攻略キャラ達への好感がわかると同時に、彼自身の価値観が強く反映された名セリフだといえる。

乙谷乙成「頼むよ 同じにおいの人間同士じゃん!」

「LV:15 また会いましょう」で翅月を救う為、乙成がかかさまにむかって叫んだ台詞。

かかさまの攻撃をくらい気絶した乙成。しかしそのおかげで、乙成は夢の中でかかさまの過去を目にする。実は自分と同じように現実世界からトリップしてきていたかかさま。作中で深く語られてはいないが、乙成と彼女が同じにおいをしていたのは、同じ世界からやってきた者同士だからではないかと推測される。乙成もそれを察して、「頼むよ 同じにおいの人間同士じゃん!」とかかさまに向かって叫んだ可能性が高い。

しかし、現状かかさまはもう異形の者と成り果てており、どう見ても人間には見えない。だが、それでも自分を人間として扱ってくれた乙成の台詞は、彼女の心に何か響くものがあったのは確かだ。夜環の国の人々の裏切りにより化け物と化していた経緯もあわせて考えると、どんな姿になっても普通の人間と同等だと述べてくれた乙成の台詞に、彼女の中の恨みが少なからず救われた事も察せられる。

一度は恐怖した化け物相手でも、すべてを知った後には素直に「人間」と言い張れる乙成の姿からも、彼の底抜けの優しさを感じられ、読者の心を揺さぶるものがある。乙成という主人公であったからこそ言えた名セリフだといえる。

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