乙ゲーにトリップした俺♂(乙俺♂)のネタバレ解説・考察まとめ

『乙ゲーにトリップした俺♂』とは、漫画家・花乃軍(かのいくさ)による全3巻のファンタジー漫画である。略称は『乙俺♂』。ジーンピクシブにて連載を開始し、後にニコニコ静画での公開もされた。乙女ゲームの世界に男がヒロインとしてトリップするという斬新なアイデアと魅力的なイケメンキャラ、そして乙女ゲームあるあるが詰め込まれた内容が多くの女性の心を掴んだ。乙女ゲーム「シロガネクルワ」にトリップしてしまった男主人公・乙谷乙成(おとやおとなり)が、元の世界に帰る為に奮闘するさまと攻略キャラ達との交流を描く。

『乙ゲーにトリップした俺♂』の概要

『乙ゲーにトリップした俺♂』とは、漫画家・花乃軍(かのいくさ)による「乙女ゲーム」を題材にしたファンタジー漫画である。略称は『乙俺♂』。個性豊かなキャラクターと、コメディタッチでありながらも切ないシリアスな一面もあわせ持つストーリー、くわえ「乙女ゲーム」あるあるが多く描かれている事もあり、女性人気が高い作品となっている。
元は花乃軍が趣味でイラストコミュニケーションサ―ビス・pixivに投稿した漫画であったが、2018年7月20日にWeb漫画サイト・ジーンピクシブにて商業漫画として連載を開始する。翌年2019年2月27日には、ニコニコ静画でも公開を始めた。
その後、3巻までコミックを刊行。重版がかかるものの、重版が決定する前に連載終了が決まってしまう。この事について、花乃軍は「自分の力不足」が理由で当初考えていたストーリーを展開するまでに至れなかった事を語っている。
2020年1月25日に最終話を更新し、2020年2月1日に読者への感謝を込めた「ありがとう漫画」を更新後、『乙俺♂』の連載は正式に終了した。しかしその後、ファンからの反響もあり、続編の連載開始が決定。2020年6月20日から『乙ゲーにトリップした俺♂ リロード』というタイトルで、続編の連載が始まった。

『乙俺♂』の舞台は、スマホ向け乙女ゲーム「シロガネクルワ」の舞台である夜環の国(よわのくに)。主人公である男子大学生・乙谷乙成(おとやおとなり)は、たまたまタップしてしまった「シロガネクルワ」の電子広告から、この世界にトリップしてしまう。
元の世界に帰るには、ゲームをクリアするしかない。だが、男同士の恋愛を避けたい乙成は、攻略キャラ皆と均等に仲良くなって終わる「大団円エンド」を目指す事を決める。攻略キャラ達やゲームシステムにより発生するラブイベントを回避しながら、乙成は元の世界に帰る為に奮闘する。

『乙ゲーにトリップした俺♂』のあらすじ・ストーリー

LV:1~LV:5 乙女ゲームにトリップした主人公

攻略対象の花簪(左端)、壱葛(右から二番目)、梦(右端)に介抱される乙成(左から二番目)

異世界トリップに夢を見る男子大学生・乙谷乙成(おとや おとなり)。ある日彼は、間違えてタップしたスマホの電子公告から乙女ゲーム「シロガネクルワ」の世界にトリップしてしまう。
念願の異世界トリップではあったが、自分の事をヒロインとして扱うゲームの攻略キャラ達に乙成は嫌悪感を抱く。しかし、それは攻略キャラ達の方も同じであった。実は、彼らは自分達が乙女ゲームの攻略キャラである事を自覚しており、ヒロインを口説く事に高いプロ意識を持っていたのだ。しかし、実際にやってきたヒロインが男であった為、無理をして乙成を口説いていたのである。

乙成のスマホに取り憑いたヒロインのサポート役であるSHURIいわく、元の世界に帰る為には、ゲームをクリアする必要があるとのこと。男同士で結ばれるのは嫌だった乙成だったが、それを回避する「大団円エンド」というものがある事が判明する。それは、攻略キャラ全員の好感度を平等にあげた状態で、「シロガネクルワ」の本筋「異形・かぐやとの争いの集結」という物語をクリアした場合に限り発生するエンドだった。

恋愛エンドを避けて無事に元の世界に帰る為、奮闘する乙成。その甲斐もあって、乙成は攻略キャラである壱葛(さねかずら)・花簪(はなかんざし)・梦(ゆめ)と少しずつ仲を縮めていく。彼らは民間の異形討伐組織である「かぐや狩り部隊」の隊員だった。
少しずつだが、確実に大団円エンドへの道を歩んでいく乙成。だが、その最中に彼が人型異形の翅月(しづく)に誘拐される事態が起こる。翅月は乙成が自分の母親である異形の親玉・かかさまと同じ香りがすると言って、彼の事を気に入ってしまう。翅月に怯える乙成だったが、実は彼も攻略キャラである事がSHURIから告げられ驚愕する。

LV:6 ~LV:10 次々登場する新攻略キャラ達

翅月に捕まった乙成は、彼から逃げようと試みる。だが、攻略キャラとしてどんなヒロインも心の底から愛する事を決めていた翅月は、乙成と一緒に暮らす為に彼を自分達異形の住処に連れていく。実は翅月は異形側の人種ではあるが、体つきが人間に近しいせいか、化け物の姿をしたかぐや達とは言葉で話し合う事ができずにいた。それを知った乙成は、彼が自分に固執しているのは話相手欲しさ故なのではないかと考える。そこで、持っていた鎌を置いて人間と話してみる事を翅月に提案。その提案に翅月は驚くものの、自分の事を考えて提案してくれた乙成の事をより好きになる。

翌日の夕方、乙成は翅月を外へ出ていくよう誘導し、彼がいなくなった瞬間を見計らって異形の巣から逃亡。その後、乙成を探しに異形の巣まで来ていた壱葛・簪・梦の3人と合流し、4人で巣を脱出しようとする。だがそこへ、翅月が帰ってきてしまう。壱葛・簪・梦の3人と翅月は互いを敵と見なし、戦闘を開始しようとする。だが、殺伐とした展開を望んでいない乙成は、翅月を連れてその場から逃げ出す。

翅月と2人っきりになった乙成は、そこで彼に「自分を他の攻略キャラ達のもとに返して欲しい」と訴える。だが翅月は、乙成を返したくないと拒む。そこで乙成は彼とまた会い、遊ぶ約束をする。するとそのタイミングで、乙成達に追いついた壱葛が登場。再び険悪な空気が場を支配するも、翅月が武器を置いた事で場の空気は一変。翅月の態度に思うところがあったらしい壱葛は、翅月を傷つける事はなく、乙成を抱えて仲間達の元へ戻る。

その後、無事に合流した4人はようやく異形の巣を脱出。後日、翅月による誘拐の件で3人に迷惑をかけた乙成は、彼らへのお詫びとして1人で買い出しに行く事を決める。3人が必要とする物を買いに街へくり出す乙成だったが、貨幣や金額の単位の違いが原因で買い物に失敗してしまう。だが、乙成の気持ちを知った攻略キャラ達は、代案として自分達の服を彼に選ぶよう頼む。乙成は彼らの提案に乗り、無事にお詫びをする事ができた。するとその帰り道に新しい攻略キャラ・現來(うつら)と出会う事態が発生する。

現來はかぐや狩り部隊の本隊からやってきた薬師であると同時に、実は梦の兄であった。だが、兄弟の間には何か因縁があるらしく、梦は現來の方を避けている様子である。
男相手にも堂々と口説き文句を言ってくる彼にドン引く乙成。だが、実は彼の本性は攻略キャラとしての仕事はあまりしたくないぐーたらタイプの人間で、「ヒロインなど適当にワッショイすればいい」という考えから、自分が設定した定時以降はヒロインを口説かないという決まりを設けて乙成を口説いていたのである。
現來の身勝手さに怒る乙成だったが、彼に壱葛のもとに薬を届けるよう頼まれてしまい、仕方なく壱葛に薬を届けに行く。その先で乙成は、壱葛が満月の度に眼帯をしている右目の痛みに悩まされている事を知る。実は、壱葛の右目はかつてかぐやの親玉の攻撃により傷つき、失明していた。以来、目を傷つけられた時に満月であった事が起因してか、満月の日には必ず目が痛み悪夢に魘されるようになったのだという。

壱葛を心配した乙成は、満月の日は彼の傍に居て看病すると宣言。乙成のまっすぐな優しさに触れた壱葛は、思わずあがってしまった好感度に導かれるように、勢いで乙成を抱きしめてしまう。

LV:11 ~LV:13 明かされる攻略キャラ達の過去

壱葛に抱きしめられ驚いた乙成は、慌てて彼を自分から引き剥がす。しかし、壱葛も乙成に抱きついてしまった理由に気づいておらず、驚きから「からかっただけ」と適当な理由を口にしてしまう。それに怒った乙成は部屋を出て自室に戻った。

翌日、改めて現來と梦の2人と話した乙成は、彼らの仲が微妙な原因が梦にある事を知る。隠密の一族の出であった現來と梦。かぐや狩り部隊の前線で戦える程の実力がある現來に対して梦は一族の落ちこぼれであったため、現來は兄として弟の事を常に気にかけていたという。そんな兄にお礼をするため、かぐや狩り部隊に所属したばかりの頃に梦は贈り物をしようと町へ向かった。しかし帰り道、かぐやに遭遇。その後、やってきた現來により梦は助けられるも、かぐやとの戦闘の最中に足に負った大怪我が原因で現來は前線から退く羽目になってしまう。
梦は兄に合わせる顔がないと言うが、現來の方は弟が自分と話してくれなくなった事を悲しんでいた。2人の現状を知った乙成は梦を励まし、再び現來と話すように背中を押す。乙成の言葉に心動かされた梦は、勇気を出して現來に話しかける。現來は驚きながらも、また弟が昔のように話しかけてくれた事を喜ぶのだった。

梦と現來の兄弟関係が修復した後日、乙成は梦に頼まれ、彼と共にかつて現來に贈り損ねたプレゼントを探しに町へ行く。
するとその先で彼らは、女性キャラに囲まれている簪と遭遇する。さらには簪が乙成に絡んだ事から、彼の取り巻きである女性キャラ達に乙成が嫉妬される事態が発生してしまう。
簪が助けに入ってくれた事で乙成は危機を脱するが、そもそもの原因は彼にある。乙成は、簪の性のだらしなさに対して一喝。そんな乙成に簪は、かつて母と妹の2人暮らしていた事を明かす。実は、彼が女性といるのは母達との暮らしへの恋しさ故のものだったのだ。
そうと知った乙成は、自分達と一緒に屋敷に帰って思い出話をしようと簪に提案。簪は一度は断るが、乙成の言葉自体は嬉しく感じており、最後は彼の提案を受け入れる。そうしてその晩、邸にいた他の攻略キャラ達も含めて皆で自分に関する思い出話に花を咲かせたのだった。

それからしばらく経った頃、夜環の国に夏至の日がやってくる。夜行性の異形が跋扈する夜環の国において、昼が一番長い夏至の日は唯一夕刻以降も自由に外を出歩ける日の為、それを利用し、毎年この日はお祭りが開催されていた。お祭りの事を知った乙成は、翅月としていた約束をはたす為、他の攻略キャラ達には秘密で彼とお祭りに行く。

大好きな乙成とお祭りに来れて喜ぶ翅月。だが人で賑わうお祭りは、人間と敵対している翅月には恐ろしい場所だった。それでも正体を隠して乙成と共に屋台を回る内に、翅月は人の優しさに触れ、「人間と仲良くなりたい」という思いを抱き出す。翅月の思いを知った乙成は彼を励まし、応援する。

するとそこへ、かぐや狩り部隊の仕事で祭りの見回りをしていた他の攻略キャラ達がやってきた為、2人は慌てて物陰へ隠れる。実はこの時、他の攻略キャラ達はモブキャラから「乙成が知らない男といた」という話を聞き、見回りついでに乙成を探していた。しかし、そうとは知らない翅月は乙成が他の攻略キャラ達を名前で呼んでいる事に気づき、自分が置かれている現状を気にも留めずその事に嫉妬する。「自分の名前も呼んで欲しい」と迫る翅月に、乙成は驚きながらも彼の名を呼んであげた。
初めて乙成に名前を呼ばれた翅月は、嬉しさから乙成にキスをしようとする。だがその瞬間に攻略キャラ達が乙成達の近くを通った為、キスは寸前で中断された。ギリギリのところでキスを回避できた事に安心する乙成。そんな彼の心情に気づいていない翅月は、乙成にお祭りに連れてきてもらったお礼を告げ、残りのお祭りの時間も彼と共に楽しく過ごすのだった。

LV:14 ~LV:15 異形・かぐやとの闘い

祭り後も平和な日々を過ごす乙成。だが、あまりに平和すぎて攻略キャラ達との進展が見えず、このままでは大団円エンドにたどり着かないのではないかと焦りを覚え始める。
するとSHURIが、「今できることやってみたらどうか」と彼に提案。その提案に一理あると思った乙成は、翅月が人間と仲良くなりたがっていた事を思い出す。そこで翅月と人間が仲良くなる手段を探すため、翅月を受け入れてくれやすそうな相談相手として梦を選ぶ。だが、乙成が翅月と仲良くしようとしているのを知った簪がそれにキレてしまう。これまでにない程に怒りをあらわにした簪に、乙成は自分が間違った事を言ってしまったのではないかと不安を覚える。しかし、壱葛と現來、そして梦は翅月の現状を知り、「異形と戦う以外の方法もあるのではないか」と乙成の考えを受け入れた。

その晩、乙成は壱葛と現來と共に異形の巣へ向かう。彼らが自分を受け入れようとしてくれていると知った翅月は、その事をかかさまに相談しようとする。だが、人に対して敵対心がむき出し状態だった彼女は翅月をふっ飛ばし、乙成達に襲いかかってきた。一時退散しようとする壱葛と現來だったが、翅月を置いていけなかった乙成は倒れている彼のところへ向かう。だが、かかさまによる攻撃を受けて乙成は気絶してしまう。

気絶した乙成は、夢の中でかかさまの過去を見る。実はかかさまは、かつて乙成のように外の国からこの世界にやってきた少女だった。少女は「かぐや」の名をつけられ、この国の住人として暮らし始める。しかし、ある年に天皇が不治の病にかかったことで事態は一変。身寄りのなかった彼女は、天皇の病を治す不死の薬の生贄に選ばれてしまう。
目が覚めた乙成は、自分の怪我を手当してくれていた現來にかぐやについて知っている事を教えてもらう。かぐやが現れた当時に女性が多く亡くなっていたと教えられた乙成は、自分が見ていた夢がかかさまの過去であると確信し、かかさまの元へ駆け出す。

かかさまの方では、彼女から乙成と現來を守るために壱葛と翅月が奮闘している最中だった。3人の間に割って入った乙成は、かかさまに自分が彼女の過去を見たことを告げ、彼女の現状を理解した上でそれでも翅月が人間と仲良くなる事に協力して欲しいと説得する。乙成の言葉に揺さぶられるものがあったらしいかかさまは、最後に翅月をひと撫ですると乙成達の前から去って行った。

その後、乙成達は翅月を連れてかぐや狩り部隊の邸に帰る。出迎えた梦と簪は、彼らのボロボロ具合に驚く。さらに翅月が居る事に気づいた簪は彼に冷たく当たる。だが、簪とも話がしてみたいと考えていた翅月は、彼の怒りを受け入れ「自分の事を信じて欲しい」と彼に頭をさげた。

かぐやと人々争いを終結させた乙成は、異形との争いの終幕を意味する「ノーマルエンド」に到達。だが「このエンドでは元の世界には帰れない」とSHURIに言われてしまう。こうして『シロガネクロワ』の世界に残り続ける事になった乙成。一時は落ち込むものの、攻略キャラ達の励ましのおかげで元気を取り戻す。そうして、彼らと共にこの世界で暮らしていく事を受け入れるのだった。

『乙ゲーにトリップした俺♂』の登場人物・キャラクター

主人公サイドの人達

乙谷乙成(おとやおとなり)

本作の主人公の青年。公式の設定いわく「トリップに憧れていた平凡大学生」とのこと。現実世界では落ち込む度に、異世界にトリップして女性にモテモテになる妄想をして現実逃避していたという。異世界トリップ系のギャルゲーにハマっており、『シロガネクロワ』の世界にトリップした際もトリップ寸前までこのゲームで遊んでいた。トリップ先の『シロガネクロワ』ではヒロインとしてトリップしたからか、攻略キャラ以外のモブキャラには女性として認識されている。
基本的にどんな事にもめげない強いポテンシャルを持っており、努力屋の反面、努力の方向性がいつもずれていてから回りする事が多い。また、それが原因で問題を引き起こしがち。しかし、それが時として功をなすこともあり、一概に諸悪の根源とは言い難い。
他にも気が強く、どんな相手に対しても素で接せられる一面もある。どんな立場の相手に対しても態度を変えず平等に話せるため、男相手にするにしてはあまりにも女扱いが過ぎる攻略キャラの言動や、男である乙成にとっては不利益にしかならない乙ゲー世界のシステムにも容赦無くツッコミをいれていく。

SHURI(しゅり)

乙ゲー『シロガネクロワ』のサポートキャラ。乙成のスマホを媒体にして、攻略キャラ達のプロフィールや好感度、イベントの開催報告などを行なう。自我があるようで、乙成が危険な行動を取ったりすると、さり気なく心配してくれたり安全な場所へ戻るよう提案してくれたりもする。
基本はテンションが高い陽気なノリのキャラクターである。

攻略キャラ

壱葛(さねかずら)

異形から市民を守る部隊・かぐや狩り部隊に所属している攻略キャラの1人。第伍分隊の隊長を担う。隊長を担うだけあってか真面目な性格で、公式の設定いわく「(作中の)イベントには全力であたる」キャラとのこと。それは男の乙成相手でも変わらず、定期的に乙成の事を口説いている。口説く際は、俺様寄りの甘い台詞を吐く事が多い。だが本来は真面目堅物な男の為、日常生活においては上から目線な物言いはあまりしない。
13歳の時に、異形の親玉から受けた攻撃により右目を失明している。その時の事がトラウマとなってか、満月の日には右目が痛む。普段の生活では眼帯で右目を隠している。

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