鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(ゲ謎)のネタバレ解説・考察まとめ

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』とは、2023年に公開されたアニメ映画。『ゲゲゲの鬼太郎』の第6期アニメシリーズの前日譚となっている。監督は古賀豪で、興行収入は約27億円。宣伝は少なかったが、公開後に評判が広まって大ヒットを記録した。キャッチコピーは「初めて明かされる、鬼太郎の父たちの物語」。
昭和31年、日本財政界に強い影響力を持つ龍賀時貞が死去。次期当主が誰になるか探るため、龍賀家の人々が暮らす哭倉村へと赴いた戦場帰りの青年・水木は、謎の青年ゲゲ郎と共に忌まわしき秘密を解き明かしていく。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の概要

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(きたろうたんじょう ゲゲゲのなぞ)とは、2023年に公開されたアニメ映画。キャッチコピーは「初めて明かされる、鬼太郎の父たちの物語」。
監督は古賀豪、脚本は吉野弘幸で、興行収入は約27億円。本作は『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者である水木しげるの生誕100周年記念作品として企画された作品で、『ゲゲゲの鬼太郎』の第6期アニメシリーズの前日譚となっている。

公開前は宣伝も少なく話題になっていなかったが、SNSや口コミで評価が広まり、扱う映画館が急増。初週を越えても興行成績が右肩上がりに上昇し、それまで『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズで最大のヒット作だった2007年の実写版を追い抜くなど、東映側が困惑するほどのヒット作となった。
物語の舞台は戦後間もない昭和31年で、小物から背景、社会に至るまで徹底した時代考証が行われている。主人公の水木(みずき)は『ゲゲゲの鬼太郎』では設定としては存在するがあまり描かれてこなかったキャラクターで、本作ではビジュアルから人物像までブラッシュアップされて登場する。

日本財政界に強い影響力を持つ龍賀時貞(りゅうが ときさだ)が死去。次期当主が誰になるか探るため、それを自身の出世の足掛かりにするため、戦場帰りの青年・水木は龍賀家の人々が暮らす哭倉村(なぐらむら)へと赴く。
そこで水木は龍賀沙代(りゅうが さよ)を始めとする龍賀家の人々、さらに謎の青年ゲゲ郎(ゲゲろう)と出会い、村に秘められた忌まわしき秘密を解き明かしていく。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のあらすじ・ストーリー

龍賀時貞の遺言

水木(右)とゲゲ郎(左)。それぞれの目的から、哭倉村に隠された龍賀一族の秘密に迫っていく。

昭和31年、日本の財政界に強い影響力を持つ龍賀時貞(りゅうが ときさだ)が死去。龍賀家は薬学で巨万の富を得た一族で、その次期当主が誰になるか次第では日本国内の権力の勢力図が大きく変わる可能性もあった。時貞の長女の婿で龍賀製薬の社長である龍賀克典(りゅうが かつのり)と懇意にしている戦場帰りの青年・水木(みずき)は、「次の龍賀家当主は克典だ」と睨み、彼におもねることで自身の出世の足掛かりとするべく龍賀家の人々が暮らす哭倉村(なぐらむら)へと赴く。
行きの電車の中で謎の青年から「死相が出ている」と脅されつつ、水木は哭倉村へと到着。そこで克典の娘である龍賀沙代(りゅうが さよ)と出会い、彼女に教えられる形で龍賀家の屋敷へと赴く。

しかし、ここで水木を待っていたのは、「次期当主は娘婿の克典ではなく、長男の龍賀時麿(りゅうが ときまろ)にする」という時貞の意外な遺言だった。これでは出世の足掛かりを求めて村までやってきた意味がないと頭を抱える水木だったが、その日の晩に時麿が何者かによって惨殺されるという事件が発生する。
時貞の長女である龍賀乙米(りゅうが おとめ)を始めとする龍賀家の面々が騒然とする中、村長の長田幻治(おさだ げんじ)とその部下たちが「怪しいよそ者を捕まえた」と1人の男を連れてくる。見ればそれは電車で出会った怪しい青年で、村人たちが私刑を加えようとするのを思わず止めてしまったことで、水木は彼の監視役を命じられる。

哭倉村の秘密

怪しい青年はとぼけた雰囲気の男で、水木は名乗ろうともしない彼に「ゲゲ郎」(ゲゲろう)とのあだ名をつける。聞けばゲゲ郎は生き別れた妻を探しており、「知り合いがこの近くで“気配を感じた”と言っていた」という不確かな情報で村までやってきたらしい。
ゲゲ郎が好き勝手に出歩く中、水木は克典に「このままでは帰れない。龍賀製薬が極秘に開発した血液製剤“M”(エム)の正体を探る手伝いをしてくれ」と頼まれていた。Mはすさまじい効果を持つ強壮剤で、日清戦争や日露戦争で日本の勝利に少なからず貢献した代物だった。その原液の製法は龍画家だけが知っており、入り婿である克典も教えてもらっていないという。沙代が水木を憎からず思っていることを知った克典は、「うまくいったら娘を君の嫁にやってもいい」と冗談半分に持ちかけるが、自分のことで精いっぱいの水木はこれには明確な返事を返せなかった。

哭倉村には大きな湖があり、その中央には立ち入ることを禁じられた小島があった。Mのことを調べるにしてもどこから手を付けるかと悩んでいた水木は、ゲゲ郎がこの島に渡ったことを知って仰天。慌てて彼を連れ戻そうと、自身も小島へと向かう。
そこで彼はこの世ならざる者たちに襲われて窮地に陥り、割って入ったゲゲ郎によって救われる。驚く水木に、ゲゲ郎は「島で出会った存在は妖怪である」こと、「ゲゲ郎が人間と妖怪の間にある幽霊族の存在である」こと、「島の中央に何か強力な結界が施され、その内部に正体の分からない強力な妖怪が封じられている」ことを説明する。

龍賀一族の正体

妖怪に関する話を聞かされて育った水木はゲゲ郎の話を信じ、「哭倉村のどこかにお前の妻もいるというなら、自分たちでこの村の秘密を解き明かそう」と彼に持ち掛ける。そこにはMの秘密を解き明かして出世したいという欲もあったが、ゲゲ郎は水木にそういった俗っぽい一面があることを理解した上で彼と手を組むことを決める。
そんな中、再び龍賀一族の人間が死体で発見される。“木に串刺しにされる”という異様な殺され方からゲゲ郎は「人間の仕業ではない」と判断し、事件の裏に妖怪か、妖怪を操る人間がすると推測する。

水木は沙代に頼んで村の秘密を探ろうとするが、その代わりに「この村から自分を連れ出してほしい」と要求される。それが村育ちの少女の都会への憧れだけでなく、何かそうしなければならない深刻な事情があってのことであることを察した水木は、沙代への同情もあってこれを承諾する。
調査を進める水木たちは、突如として長田たちからの襲撃を受ける。彼らはただの村人ではなく、龍賀一族とも密接な関係にある陰陽師の末裔なのだった。自分が幽霊族であることも突き止めていた長田たちを見て、ゲゲ郎は「妻もコイツらに負けて捕らわれたのだ」と激昂。大暴れして相手を追い詰めるが、長田が呼び出した謎の妖怪に返り討ちにされてしまう。

沙代との別れ

長田たちに捕らえられたゲゲ郎は、乙米の前に連れ出され、「まだ幽霊族の生き残りがいたとは驚いた」と驚かれる。Mとは幽霊族の血を利用して作られた薬であり、その材料が新たに手に入ったことを彼女は喜ぶ。ゲゲ郎を助けようとする水木だったが、1人では長田たちには到底叶わず、「克典の知り合いを始末すると後が面倒だ、何も見なかったことにして東京に帰れ」と追い出される。沙代との約束を思い出して水木が躊躇すると、乙米は嘲笑しながら「あの女は時貞の“お気に入り”だ」と語り、彼女が肉親によるレイプを受けていたことを明かす。
その沙代は、少しでも水木の力になろうと龍賀一族の謎を独自に調べていた。水木が村を去ろうとしていることを知った沙代は、彼が自分の過去を知ったことを知らないまま「一緒に連れていってほしい」と改めて懇願。水木はこれを承諾するが、「相棒であるゲゲ郎を見捨てるわけにはいかない」と考え、沙代と共に彼の救出に赴く。

その頃、ゲゲ郎は“血を取り出すための道具”にするために長田たちに手足を切り落とされそうになっていた。その直前で水木たちが駆け付け、彼を救出する。しかし水木が沙代と一緒にいるのを見た乙米が「その男はお前と時貞の関係を知っている」と嘲笑すると、自分の過去を誰も知らない新天地で今度こそ幸せになれると考えていた沙代は絶望し、村に巣食っていた妖怪・狂骨(きょうこつ)の大群を呼び寄せる。
狂骨は恨みを抱いて死んだ人間の怨念によって生まれた妖怪で、虐待を受け続ける中で龍賀一族と哭倉村を憎むようになった沙代と同調するようになっていた。これまで起きた殺人事件も、沙代が自分の身を守るために狂骨をけしかけたことで起きたものだったのである。狂骨に襲われた乙米は死亡し、村の陰陽師たちも全滅するが、致命傷を負った長田の最後の一撃により沙代も絶命する。

時貞の野望

沙代を救えなかったことに絶望する水木だったが、「まだやることがある」と己を奮い立て、龍賀一族に囚われているゲゲ郎の妻を助けるべく小島の地下へと向かう。そこで水木とゲゲ郎を待っていたのは、「龍賀一族の幼子から魂を抜き取り、その肉体を乗っ取って復活した時貞」と、「捕らえられて血を抜かれ続けた数え切れないほどの幽霊族の亡骸」だった。小島の決壊の中にいたのは、霊力の高い幽霊族が生み出した狂骨の大群だったのである。
時貞は「自分のやっていることは日本に永遠の繁栄をもたらすための大義であり、幽霊族はそのための糧である」と豪語し、呪詛返しの秘術で自分に向けられた狂骨たちの憎悪を逸らして巧みに操っていた。ゲゲ郎の妻はまだかろうじて息があり、夫との再会を喜びながら「おなかに子供がいる」旨を彼に伝える。ゲゲ郎は妻を救い、一族の無念を晴らすために時貞に挑むが、呪詛返しによって使役される幽霊族の怨念が生み出した狂骨には敵わず、追い詰められる。

しかし、幽霊族の怨念とは無縁の立場である水木に対しては狂骨たちは直接敵意を向けず、密かに近づいた彼が時貞の持つ呪詛返しのための道具を破壊。これにより“本来の呪詛の対象”である時貞に標的を戻した狂骨は、恐怖に慄く彼を呪い、永遠に苦痛と恐怖を味わう不思議な毬へと変えてしまう。
狂骨はなお暴れ回り、結界を破壊して哭倉村へと飛び出す。このままでは狂骨に襲われて命を落とした人々も狂骨を生み出し、日本中が狂骨に滅ぼされてしまう。ゲゲ郎は「間もなく生まれる我が子のために日本を守りたい」と語り、妻を水木に預けて逃げるよう勧める。再会を約して別れた2人は、猛り狂う狂骨にそれぞれが襲われていく。

鬼太郎の誕生

哭倉村の村人たちが狂骨に襲われて全滅する中、ゲゲ郎は自らが依り代となって狂骨の怨念全てを受け止めようとする。しかしそのすさまじい負荷に耐えられず、肉体が崩壊。水木は水木で、「狂骨から身を守ってくれる」力を持つとゲゲ郎から渡された霊毛ちゃんちゃんこというアイテムを自分ではなく彼の妻に着せて逃げたために、彼女を守り切ることには成功するも自身は過去の記憶の一切を失ってしまう。
それからしばらくして、水木は何かに導かれるようにしてゲゲ郎夫妻と再会。しかし記憶を失っていた彼は、「崩れかけた全身に包帯を巻いた男」と「死にかけの妊婦」という異様な2人組に恐れを成して、その場を逃げ出してしまう。

それでも心に感じるものがあったか、再び夫婦と出会った場所に赴いた水木が見たのは、力尽きたゲゲ郎たちの姿だった。不憫に思った水木が、まだ運び出すことのできたゲゲ郎の妻に墓を作ると、土の下からゲゲ郎の息子が這い出てくる。水木は「化け物の子だ」と咄嗟に彼を殺そうとするも、不意にゲゲ郎の記憶をわずかながらに思い出し、自分でも理由が分からないまま赤ん坊を抱き締める。
そんな2人の様子を、ゲゲ郎の体から抜け落ちた彼の目玉に手足の生えた存在が何も言わずに見詰めていた。この赤ん坊こそが後の鬼太郎で、見詰めていた目玉こそは後の目玉おやじだった。

果たされた約束

龍賀一族と哭倉村が滅亡してから70年後。鬼太郎と目玉おやじたちが村の跡地を訪れていた。彼らは村に未だ残る狂骨たちを倒すためにここへとやってきており、時貞の依り代にされて殺された龍賀一族の幼子の魂を浄化することで、その最後の仕事も無事に終わる。呪われた時貞が変化した毬は、相変わらず悲鳴と苦悶の声を上げながら転がり回っていた。
目玉おやじは「ようやく水木との約束が果たせた」と安堵し、今はもう息を引き取った彼も霊となってここにきているかもしれないとつぶやく。自分を犠牲にしてでも妻を守り、記憶を失いながらも再会の約束を果たし、幼少期の鬼太郎を育ててくれた水木に対し、自分が「哭倉村の狂骨から日本を守る」という仕事を完全に果たせていなかったことは、目玉おやじの心残りの1つだったのである。

この時、哭倉村には「鬼太郎たちにインタビューして名を売りたい、真実をこの世に残したい」とジャーナリストとしての野心と使命感に満ちた青年も押しかけていた。彼にかつての相棒である水木と同じ“俗っぽさと善良さ”が入り混じったものを感じた目玉おやじは、熱意と好奇心のまま話を聞き出そうとする彼に応じ、かつてこの地で起きた出来事を語り始めるのだった。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の登場人物・キャラクター

主要人物

水木(みずき)

CV:木内秀信

東京の血液銀行で働く戦場帰りの青年。強い野心と向上心の持ち主だが、根っこのところは善良。

ゲゲ郎(ゲゲろう)/鬼太郎の父/目玉おやじ(めだまおやじ)

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