善徳女王(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『善徳女王』は、2009年MBCで放送された、韓国の時代劇。新羅を舞台に、朝鮮半島における初の女性統治者となる善徳女王の生涯を描いた作品。史実とフィクションを織り交ぜながら、女王が歩んだ波乱万丈の人生をドラマチックに描く。韓国では最高視聴率40%以上を記録した。

『善徳女王』の概要

『善徳女王』は、2009年に韓国のMBCで放送されたテレビドラマ。7世紀の朝鮮半島を舞台に、新羅の第27第の王であり挑戦史上初の女性の王、善徳女王の半生をドラマチックに描いた時代劇作品。脚本は『宮廷女官チャングムの近い』を書いたキム・ヨンヒャンと、パク・サンウの共同執筆。演出はパク・ホンギュンとキム・グノン。
双子の妹として生まれたトンマンは、凶事を招くとされ誕生と同時に彼女の生涯の敵でありライバルとなるミシルに命を狙われる。父のはからいにより王宮外で育ったトンマンだが、育ての親を失い自身のルーツを探す旅へ。トンマンを支えてくれる姉チョンミョン王妃との再会を果たし、半生を通してトンマンに使えるユシンとも出会う。政敵であるミシルと何度も争い、王女となってからはあらゆる苦悩にもがきながらも前へ進んでいく。自分を慕うピダムと決して実らない愛に苦しむなど、波乱万丈の人生を歩む。
最高視聴率40%を記録するなど人気の高さからか、当初の予定をオーバーして、50話から62話に延長された。2009年MBC演技大賞の主要部門を席巻。併せて11部門を受賞する結果となった。

『善徳女王』のあらすじ・ストーリー

動き出す陰謀

誕生したばかりのトンマン

新羅のチヌン(真興)王が死に、チヌン王の愛人だったミシル(美室)の後押しによってチンピョン(真平)王が王位を継いだ。チンピョン王は形ばかりの王で実権を握るミシルに太刀打ちできない。一方のミシルは、女性でありながらその美貌と知性を駆使して、今や強大なミシル一派を作り上げていた。彼女の夢は王妃となり確固たる地位と実権を手にれること。そのためには非常なことも厭わない人物だった。ミシルはチンピョン王が即位したのち、自らが王妃となるためマヤ(摩耶)王妃や花郎(ファラン)のリーダーである国仙(ククソン)のムンノ(文弩)を殺そうと計画を立てていた。ミシルが王妃になるためには、2人の存在が危険と感じたからだ。

しかしもう少しのところで計画は失敗に終わり、チンピョン王に女の子の双子が生まれる。新羅では、王族が双子を生むことは「王族の男の種が滅びる」と言われ凶事とされていた。ミシルはこの出来事を利用しようと画策する。しかしチンピョン王はミシルから双子の妹を守るため、ムンノと侍女のソファ(昭火)へ命令し王宮外へ脱出させることに成功。双子の出産は世間的になかったこととされ、チンピョン王は難を逃れる。このとき王宮外へ出された人物こそ、本作主人公のトンマン(徳曼)王女であった。しかしミシルは自身の護衛兵であるチルスクに、王宮外へ出た子どもを必ず殺すよう命令していた。

双子の姉との再会とユシンとの出会い

15年の歳月が流れ、トンマンはタクラマカン砂漠でソファとともに過ごしていた。またソファが母親だとも思っていた。しかしあるとき、ミシルによって放たれた刺客チルスクに見つかってしまう。トンマンを15年追い続けてきたチルスクは、なんとしてでも捕まえようと2人追いかける。そしてソファは、トンマンを庇おうとして砂粒に飲み込まれてしまった。なんとか難を逃れたトンマンだったが、「なぜ自分が追われているのか、自分は誰なのか」疑問に思わずにはいられなかった。そしてソファを失ったトンマンは、チルスクから逃れ自身の出自を確かめるため旅に出る。

自分の父親かもしれないと思い、「ムンノ」という人物を探していたトンマンは旅の途中で双子の姉チョンミョンに偶然出会う。このときはまだお互いが姉妹であることは知らないが、それぞれがムンノを探していることや、耳の裏にあるアザが同じことから、二人は運命的なものを感じる。ちなみにチョンミョンは、今後ミシルに対抗するためにはムンノの力が必要だと感じ彼を探していた。しかしチョンミョンはミシルが放ったポジョン率いる花郎(ファラン)たちに襲われケガを負ってしまう。窮地に立たされたチョンミョンだが、危ないところをキム・ユシンが助けに入る。ユシンはかつての伽耶の王族だったキム・ソヒョンの息子である。

王宮ではマヤ王妃が3人の王子を出産したものの、全員が生まれて間もなく亡くなってしまうと悲しい出来事が起こる。かつて双子を産んだことで「王族の男子が途絶える」という予言が的中した形となっていた。しかしこれはミシルによる陰謀であった。全ての王子を殺害したのはミシルたちによるもの。チンピョン王はミシルへの嫌悪感が募っていくが、どうすることもできず心を痛めていた。

男装のトンマン

トンマンはユシンの元で男装して龍華香徒(ヨンファヒャンド)の郎徒(ナンド)となる。チョンミョンから頼まれる形でトンマンを引き受けた龍華香徒(ヨンファヒャンド)のリーダーであるユシンだが、彼が行う訓練はとても厳しいものだった。鬼の特訓を行うユシンと、気合いでくらいつくトンマン。容赦のないユシンにトンマンは反発し、2人の関係は最悪だった。しかし百済との戦争が始まった頃から、2人は徐々に惹かれ合っていく。トンマン含む龍華香徒(ヨンファヒャンド)の郎徒(ナンド)たちと別行動を取っていたユシンは、あるときトンマンの死亡の知らせを聞く。しかし到底信じられず、トンマンを探しに駆け出し捜索の末助け出すことに成功。2人の距離はさらに近づいていった。

苦戦はしたものの、百済との戦で功績を残したユシンの父ソヒョンは、駆け落ち同然で結婚したためにはく奪されていた身分をついに取り戻す。その結果、ユシン率いる龍華香徒(ヨンファヒャンド)たちも、徐羅伐(ソラボル)の正式な花郎徒(ファランド)として編入された。しかし青龍翼徒(チョンニョンイクト)を率いるミシル側のソッポムや、飛天之徒(ピチョンジド)を率いるアルチョンなど他の隊である花郎(ファラン)たちからは認められず孤立して苦労することになる。そうした中、力のあるソヒョンたちを自身の陣営に取り入れようとミシルが動き始める。百済との戦の際には彼らに非協力的だったミシルだが、一転して取り込めるものは取り込もうという姿勢を見せ始める。

ミシルの陰謀により夫を亡くしたチョンミョンは、自身に息子チュンチュ王子がいることを父であるチンピョン王に告げる。ミシルから守るためにひた隠しにしてきたことだった。いつまでも逃げるのではなくミシルと闘うことを決意したチョンミョン王女は、チンピョン王にユシンやトンマンの存在を告げ、共に戦う仲間がいることを伝えた。そしてミシルの影におびえる父王を奮い立たせるのだった。

チョンミョンだけでなく、ユシンやトンマンもミシルの非常さが許せなかった。それは百済との戦いのときから感じていた。トンマンはチョンミョンに協力し、ミシルについて調べることとなった。その最中、王宮内の神殿でかつて命を狙われたチルスクとぶつかり驚き戸惑う。しかし、チルスクは目が不自由になっていてトンマンには気付かなかった。チルスクがここにいることを不信に思い、チョンミョンに打ち明けるトンマン。チョンミョンはトンマンのために、チルスクについて調べ始めた。

チョンミョンの死とピダムとの出会い

チョンミョンは、ムンノやソファ、チルスクについて調べるうちに、トンマンが双子の妹だと確信する。首のあざやその他にも思い当たることがいくつもあった。しかし、トンマンを守るため事実を隠そうとするチョンミョン。しかし彼女の思いは空しく、結局ミシルにも知られてしまうことになる。チルスクによりトンマンは死んだものと思っていたミシルは、ソファが生きていることを知ったことでトンマンも生存しているに違いないと悟ったのだった。そして再び双子の妹を探せと部下に命令を下したのだった。

生まれてからずっとトンマンが持っていたものがある。「ソヨプ刀」と呼ばれる小さな小刀だが、これはマヤ王妃が王宮外へ出るトンマンに持たせたものだった。この「ソヨプ刀」が決定打となり、トンマンも自身の出生の秘密を知る。そして母であるマヤ王妃と再会を果たす。しかし事実を受け入れられず困惑し、同時に自分が呪われた存在で王宮外に出されたことを知る。ショックを受け都を去ろうとするトンマン。ユシンはそんなトンマンを抱きしめて守ろうとする。一方、ミシルの陰謀によりユシンの父であるソヒョンまでもがトンマンの命を狙っていることが発覚する。トンマンはそのことにも傷付くのだった。

あるとき、ソヒョンの部下に襲われていたトンマンは、ピダムという青年に助けられる。のちにトンマンを愛し支えていく人物である。しかし彼もまた、複雑な秘密を抱えていた。ピダムの母は実はミシルであり、チンジ王との間に生まれた子どもだった。ミシルに捨てられた後はムンノに育てられ、彼の弟子として生きてきたのだった。ピダムもまた、自身の出生の秘密を知ることなく育ち、トンマンと境遇が似ていた。また、ピダムはこれまで何に対しても興味を示さなかったが、トンマンが現れてからは彼女のことばかり考えるようになる。そして、出会って間もないトンマンが自ら命を絶とうとしていたことも言い当てたピダム。なぜかピダムはトンマンの考えていることが手に取るように分かった。運命的な出会いにより、ピダムの人生は特別なものへと変化していく。

トンマンの生存がミシルに知られ心を痛めたチョンミョンは、トンマンの幸せを願いユシンとともに新羅を去り暮らすように伝える。ユシンはトンマンを守ることを誓い、トンマンもまた姉の思いを汲み取り新羅を去ろうとしていた。トンマンの幸せを切に願う心優しい姉チョンミョンだが、ミシルの弟であるミセンの息子テナムボが放った毒矢により、命を落としてしまう。トンマンと間違えられての絶命だった。姉の死に絶望するトンマンだったが、やがてその思いはミシル打倒へ向けて動き出す。

王族への復帰

まずは新羅に戻り、王女の身分を回復することに専念するトンマン。ユシンは、姉のために立ち上がったトンマンのため、自身の恋心を絶ち彼女の臣下として仕えることを誓う。トンマンもまたユシンへの想いに苦しむが、互いの気持ちを抑えることで前に進めるのだと言い聞かせる。

心理戦に長けているミシルを心理戦で打ち負かそうとするトンマンは、ピダムをミシルの元へ送り込む。偽のウォルチョン大師(天文学に優れた僧侶)の手紙で日食が起きることを信じさせるのが、トンマンからピダムに託された使命だった。ここでピダムは初めて母ミシルと再会する。しかしお互い親子であることは知らないままだった。会話の中からピダムの聡明さを感じ取ったミシルだったが、手紙が偽物であることを見抜き「日食はない」と断言する。しかしこれはトンマンが仕掛けた二重の罠だった。トンマンは、ピダムさえも騙していたのだった。結果、ミシルの宣言とは違い日食が起こり、民衆は天に向かってひれ伏した。そしてそこへトンマンが現れ、チンピョン王とマヤ王妃は民衆にトンマンを王女として認めさせることに成功するのだった。見事な心理戦でミシルを出し抜いたトンマンだったが、ミシルは怒りに震える。

ミシルの最後と女王の誕生

かつてトンマンが生まれた日に、チンピョン王の命により彼女を王宮外へ逃がしたムンノ。彼はミシルが捨てた子ピダムをトンマンの夫として王座に就かせたいと思っていた。チンジ王の血を引くピダムは紛れもない王族だからだ。20数年の月日を経て王宮へ戻ってきたムンノは、花郎徒(ファランド)たちの総指導者である国仙(ククソン)に復帰する。ムンノには三韓統一の夢があり、それを成し遂げるのは、自身で育ててきたピダムだと思っていた。しかしトンマンのためだけに行動をするピダムと、個人的な感情を捨て民を思い行動するユシンの姿を見て、三韓統一の大業を成せるのはユシンだけだと確信する。そんなムンノに怒りを覚えたピダムは、かつての師匠と剣を交えて戦うことを決意した。しかし、戦いの最中ヨムジョンの放つ矢によりムンノは死亡してしまう。

チョンミョンの息子チュンチュやユシン、ピダムなどトンマン陣営はいつの間にか大きくなり、ミシル派と渡り合えるほど大きな勢力となっていた。当初チュンチュはトンマンに協力的ではなかったが、祖父のチンジ王、父のヨンス、母のチョンミョン全てミシルによって殺されたことを知り、トンマンの味方となることを決意する。

トンマン派とミシル派が苛烈な争いを投じて行く中、ミシルは徐々にトンマンたちに追い詰められていく。そしてミシルはついに最後のときを迎える。トンマンは、敵でありながらその知性に一目置いていたミシルを自分の陣営に取り込みたいと考えていた。三韓統一を果たすためには、ミシルの力が必要だと考えたのだ。対談でミシルの力が欲しいと告げたトンマンだったが、ミシルがそれに応えることはなかった。そして最後は新羅の国と民を想い、彼らを救おうとする姿を見せるとともに、「息子ピダムに自分の遺志を継がせ王にせよ」とソルォンに遺言を残して自害する。

トンマンとピダムの最後

ミシルが死んだ後、チンピョン王も崩御する。そしてついにトンマンが即位し、新羅初の女王がここに誕生した。女王となってからのトンマンは、政務にまい進し誰とも結婚することはなかった。しかしトンマンを愛するピダムは、一途な想いを彼女にいつも向けていた。たとえトンマンから遠ざけられようとも、純粋な想いに変わりはなかった。そんなピダムに心惹かれるトンマンだったが、女王であるがゆえに個人的な気持ちを優先することはできない。複雑な気持ちの中で苦悩していた。

ミシルの息子であるピダムは、政治的には側に置いておくのは危険である。しかし純粋にトンマンを愛してくれるピダムに、彼女は恋心も抱いていた。ピダムへの想いに揺れ動くトンマン。あるときピダムは、トンマンの死後は政務から退くことを誓う。いずれ王の座を狙うかもしれないとトンマンが不安を抱いていることに、ピダムは気付いたのだった。

ピダムの気持ちを信じようと決意したトンマンは、ついにピダムとの婚姻を発表する。しかし一方でチュンチュに「ピダムが裏切った場合は殺せ」という勅書を密かに渡していた。ピダムと結婚すれば、彼の勢力はより拡大しトンマンもピダムも自分の意志だけでは動かせなくなる可能性もある。ピダムを信じていないわけではなく、そうなったときのため、女王としてもしものときを見据えての行動だった。

そしてトンマンの不安は的中してしまう。2人に愛と絆があっても、トンマンの勢力とピダムの勢力がそれを許さなかった。ピダムを王にしたいミセンたちは、ピダムに揺さぶりをかけトンマンがピダムの命を狙ったかのような策略を仕掛ける。純粋なピダムがトンマンに裏切られたと知れば、自分が王になることを決意するはずと感じていたからだ。トンマンは、不穏な空気に勘付き「何があっても信じて待ってほしい」という手紙をピダムに届けようとしたが、手紙がピダムの元に届くことはなかった。

全ての策略はヨムジョンが仕切っていた。あらゆる策略にまんまとはめられたピダムは、トンマンへの不信が募っていきついには愛する人に裏切られたと感じるようになる。そして「殺そうとするほどこの存在を重く感じるのであれば、私が陛下の重荷を降ろして差し上げます」とトンマンと対立することを決心する。ピダムは自分の勢力の野心を持つ者たちによってトンマンと引き離されてしまった。そしてついに全面戦争となってしまう。悲しみの中戦に赴くピダムだったが、やがてヨムジョンが仕掛けた策略だと気付き、トンマンが自分を裏切っていないことを知る。激しく動揺するピダムだが、もう誰も止められないところまで来てしまっていた。

トンマンも苦しい中での決断を迫られ、ピダムを国賊とし戦う道を選ぶ。愛する人を信じ切れなかった自分が招いたことだと悔やむピダムは、心も体もボロボロになりながらトンマンの元へ走り出す。ピダムにはトンマンまでの道のりは遠く、多くの兵が自分の前に立ちふさがる。彼らをなぎ倒しながら進むピダムの視線の遥か先に、トンマンの姿が見えた。そして一身に愛する人を目指す。トンマンも、近づいてくるピダムを見つめている。そこにはさまざまな障壁により、叶わなかった2人の想いがあった。そして最後はユシンとアルチョンがピダムの前に立ち行く手を阻む。トンマンまであと少し届かない。ピダムは最後に「トンマン…」とつぶやき息絶えた。そしてピダムが死んだのち、トンマンはかねてからの病状が悪化する。そしてユシンに三韓統一の夢を託したのち、ピダムの後を追うように息を引き取った。

『善徳女王』の登場人物・キャラクター

主要人物

トンマン王女(ソンドク女王)/徳曼王女(善徳女王)(演:イ・ヨウォン/ナム・ジヒョン)

日本語吹き替え:甲斐田裕子
本編の主人公であり、新羅第27代王。新羅で最初の女王となる。
チンピョン王とマヤ(摩耶)王妃との間に生まれた双子の妹。姉はチョンミョン王女。
双子は王室にとって凶事であったため、トンマンは生まれてすぐ父親のチンピョン王の計らいにより国外へ逃げることとなる。
ミシルの追手からなんとか逃れ、その後は侍女のソファを母親と思いタクラマカン砂漠で育つ。15歳になったときにソファを失ってからは、自分が何者なのかを確かめるため新羅へ旅立つ。

ミシル/美室(演:コ・ヒョンジョン)

FRTT023
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