カラーレシピ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『カラーレシピ』とは、はらだによるボーイズラブ漫画作品。上下巻の2巻で構成されており、初版は2016年刊行。その後、加筆された新装版が2018年に発売されている。町で最悪の出会い方をしたトップスタイリストの福助が、笑吉の働く美容院に入社してくる。ぶつかり合いながらも二人の距離は次第に縮まっていくが、笑吉の周りで不気味な出来事が起き始めるのだった。ラストまで読むとこれまでの印象が覆される、鬼才・はらだが描く戦慄のボーイズラブ。

『カラーレシピ』の概要

『カラーレシピ』とは、漫画家はらだによるボーイズラブ漫画作品。KADOKAWA・角川書店レーベル隔月刊漫画雑誌『CIEL』にて2015年5月より連載を開始した。その後、掲載紙を新書館の『Dear+』に移行している。
単行本はDear+コミックスより上下巻の2巻が発売されている。初版は2016年3月1日刊行。その後、加筆された新装版が2018年に発売された。
2016年11月18日には福介役・興津和幸、笑吉役・内田雄馬でドラマCDが発売された。

生真面目で不愛想なスタイリストの笑吉(しょうきち)が務めている美容院に、町で最悪の出会い方をしたトップスタイリストの福助(ふくすけ)が入社してくる。何かとぶつかり合う二人だったが、笑吉の周りで不気味な出来事が起き始めるのだった。鬼才・はらだが描くドグマティック・ラブ。

『カラーレシピ』のあらすじ・ストーリー

追い詰められていく笑吉

ある日、美容院で働くスタイリストの笑吉(しょうきち)が店の外で店のビラ配りをしていると、「スタイリストがビラ配りとか相当暇な店なんだな。ヘボいオーナーのもとで仕事すんのは大変だねー」と見知らぬ男に絡まれる。口下手で愛想のない笑吉はとっさにその男の顔を殴りつけてしまう。反省しながら店に戻ると、そこにはさっき殴りつけた男が。その男は笑吉の店に新しく入ってきたスタイリストの福介(ふくすけ)だった。
福介は笑吉の1歳年上で、スタイリスト2年目。有名美容室に勤務していた経験もあり、指名客も多い実力者だった。技術に重点を置く笑吉とお客さんとのトークに重点を置く福介。オーナーである美門(みかど)はお互いが良い刺激になれば、と期待するが、2人はまさに水と油の関係だった。そんな中、笑吉と福介はお互いの技術チェックをするよう美門から指示される。というのもオーナーの美門とアシスタントの龍来(りく)はヘアセット講習やメーカー講習でしばらくの間営業後は留守にするとのこと。お互い嫌々ながらその日からお互いの技術チェックが始まる。

初日、福介が早く終わらせる中、笑吉はレディースカットの練習に時間がかかっていた。というのも笑吉の数少ない指名客は男性が多く、レディースのカットをすることが少ないため、時間をかけてじっくり練習しないと不安だという気持ちが笑吉にはあった。しかしそのせいで福介は終電を逃してしまったという。罪悪感を感じた笑吉は福介を家に泊めることに。笑吉の家に着いた福介は自由気ままで、笑吉の家にあるお酒を勝手に開けて椅子でくつろぐ。布団は1つしかないため、笑吉は福介に対し「お前はそのまま椅子で寝ろ」と言うが、福介に押しきられて、同じ布団で一緒に寝ることになる。笑吉はそのまま寝付くが、昔の悪夢を見てしまい夜中に目を覚ます。すると、寝ている自分の顔の目の前で福介が自慰をしていた。「もう少しだったのに」と不機嫌になる福介は、笑吉の手を取り自らの自慰を手伝わせる。自慰行為が終わると福介はそのまま眠りについてしまった。
翌朝、昨晩の出来事は何だったのか福介に問いただすと、「酔ってたんだ、忘れてくれ」と言われ、はぐらかされてしまう。

技術チェックの2日目、この日はシャンプーの練習をすることに。福介にシャンプーをしてもらっている途中で笑吉は眠ってしまう。笑吉が目を覚ますと夜中になっており、「どうして起こさなかったんだ」と問いただすが、福介は「あまりにも気持ちよさそうに寝てたから起こせなかった」と言う。しかし、終電を逃してしまった福介。この日も笑吉の家に泊まることに。二人で帰ろうと店を出たところで、笑吉の常連客・鬼原(きはら)と出会う。鬼原とは帰宅時間が重なることが多く、会うたびに食事に誘われる笑吉は、その日も「タイミングが合ったらまた食事に行こう」と誘われた。その様子を見ていた福介は鬼原の不自然な点に気が付く。その日は雨が降っていたが最寄駅からここに歩いてきたにしては足元が濡れすぎている。終電の時間だってとっくに過ぎている。鬼原は笑吉が店から出てくるまで雨の中ずっと待っていたのではないか。あの手のストーカーは何するか分からないから気を付けろ、という福介。この頃から笑吉は非通知の無言電話に悩まされるようになっていく。

翌日の営業中、そのことがなかなか頭から離れない笑吉は女性客から「全然喋らないし、不愛想だからスタイリストを変えてくれ」と言われてしまう。その言葉で笑吉は以前働いていた美容室でのトラウマを思い出してしまい、大きなショックを受ける。そして営業終了後。ここの日の営業終了後の技術チェックはスパだった。福介はスパをしながら「今日のことは気にするな」と言った。福介は以前の美容室で「しゃべりすぎ。施術に集中しろ」とクレームをもらったことがあると話し、万人にぴったりの施術をするのは無理だと笑吉を慰める。そして福介は2人で店を開こうと笑吉に言う。自分たちはお互いの足りない部分を補い合える関係だと。笑吉は照れ隠しで「嫌だ」と言うと、福介は「ひでえ 忘れてんの 俺あのころからしょーくんに惚れてんのに」と意味深な言葉を言う。練習が終わり、福介の言葉を疑問に思いながら笑吉は帰宅。玄関のドアを開けようとすると、そのドアノブには使用済みのコンドームが引っかかっており、ドアノブは精液まみれになっていた。動揺する笑吉に再びいつもの無言電話がかかってくる。更に背後から足音が聞こえ、恐怖を感じながら振り返ると、そこにいたのは福介だった。店の鍵を受け取り忘れてたから受け取りに来たという。笑吉の様子がおかしいことに気づいた福介は扉の様子を覗き込むと、状況を察し、自らの服で汚れを拭く。
泊まろうか、と気を使ってくれた福介だったが、笑吉は「これぐらい大丈夫だ」と強がってしまう。
家に入ってからも鳴り続ける非通知の電話。そしてタイミングよく鬼原からのメールが届く。

翌日は休みだった笑吉。この日笑吉は今までの真相を探るべく、鬼原と食事に行く約束をしていた。休みの日にも関わらず昨日のことが気になり福介は笑吉に電話をし、気にかける。世話好きかよと悪態をつきながらも悪い気はしない笑吉。そして鬼原との食事。いざ疑わしい本人を目の前にすると、「鬼原さんって俺のストーカーなんですか。」と簡単に聞けるはずもなく、笑吉は小綺麗な店の雰囲気もノリの合わない人との会話も慣れないなあと思いながら食事をすることしかできなかった。食事が終わり、店を出ると外は雨が降っていた。笑吉は傘を持っておらず、鬼原は家の方向が同じだから一緒に入ろうと自分の傘に笑吉を入れた。笑吉は素直に感謝し、普通に良い人なんだよなあ、とぼんやり考えていると1つのことに気が付く。「鬼原さんの家の方向ってこっちの方だっけ」と。途端、笑吉は背後から鬼原に抱きしめられ襲われる。
そして鬼原は語り始める。「僕の気持ちに気付いてくれていたはずだよね」「突然変な虫がついて、そいつに命令されたのか僕と距離を取ろうとするし焦った」「でも僕の誘いを断らず来てくれたということは、僕の思いは届いてるんだよね」と。更に続ける。「君はもういなくなった僕の恋人にそっくりなんだ。頑張り屋さんなところも、ぱっちりした目も、体つきも全部」と。この言葉を聞いて今までの犯人は鬼原だと思った笑吉は、「気持ち悪い、やっぱストーカー」と言い捨て逃げようとする。しかしすぐに押さえつけられ、「僕をストーカー扱いするのか」と怒り始める。「ひどい」「僕の愛が足りないのか」「もっと優しくしてあげようと思ってたのになんて子なんだ」と。襲われる、と思った瞬間、鬼原の身体が吹っ飛ぶ。福介が現れ、鬼原を蹴り飛ばしていた。笑吉が襲われそうになっているところを写真に収めていた福介。この写真をネットや勤務先にばら撒かれたくなかったら今後一切笑吉に近づくなと脅すと、鬼原はおとなしく帰っていった。福介に連れられて自宅に帰る笑吉。笑吉の家に着いた福介は笑吉に実は以前一度出会ったことがあること、そのときから笑吉のことが好きだったことを明かす。嫌なことも言ってくるが、一連の騒動を心配してくれたり助けたりしてくれた福介に対し、笑吉は身体を許してしまう。

翌日、朝礼で昨晩の出来事を話し、鬼原を出禁にすることとなった。出禁処理に申し訳なく思う笑吉だったが、オーナーの美門はむしろ福介とのギスギス感が緩和されて良かったと話す。一方でアシスタントの龍来はある確証を得ていた。バックヤードにて龍来は福介に話しかける。「非通知設定で笑吉さんに電話かけすぎですよ」と。龍来は最初から福介に対し違和感を覚えていた。初日にお客さんに"技術は俺より上手い"と語っていたこと、家が徒歩圏内なこと。つまり終電を逃したというのは笑吉の家に泊まるための嘘。以前指名替えを言い出した女性客も福介の元指名客。笑吉の部屋の玄関のドアノブの1件も犯人は福介。龍来はその現場を目撃していた。鬼原に罪を擦り付けて全て福介の自作自演だった。意図的に精神的に弱らせて手を差し伸べる、こうして笑吉の心を掌握することが福介の目的だった。しかし龍来は笑吉に事実を伝えて心を折るようなことはしたくないし、福介のようなサイコパスを眺めているのは好きだとし、何も言わず傍観することを誓う。欲しいもののためなら誰が冤罪かぶろうが、誰が傷つこうが構わない福介。この行動はどんどんエスカレートしていく。

『カラーレシピ』の登場人物・キャラクター

笑吉(しょうきち)

CV:内田雄馬(ドラマCD)

本作品主人公。スタイリスト。技術は高いが、口下手で不愛想なため、指名客が増えず悩んでいる。福介とは学生時代、実習先の美容室で出会っていた。実習の初日の終礼で改善点を聞かれた笑吉は「手が空いたなら掃除をするなりなんなりしたほうがいい。雑用を全部1年目に押し付けるのはよくない」「スタイリストが詰まっているの見たら余裕のあるアシは担当じゃなくてもヘルプについたほうがいい」「施術スピードが追い付いていないのに無理に予約詰めない方がいい」「まだ残っている客がいるのにバックヤードで無駄な私語はしないほうがいい」と思っていることを言ったがために、店長を怒らせ、実習最終日になっても馴染むことが出来なかった。成績もさんざんなものを付けられ、悔し涙を流す結果になる。また、以前勤務していた美容室でも職人気質で不愛想なことから指名客がつきにくく、孤立していた。そこでいつも気にかけてくれていたのが現美容室のオーナー・美門。以前の美容室で美門に悪態をついたスタッフを殴りつけてしまったことで更に居づらくなり辞めることに。その際、ちょうど店舗を立ち上げようとしていた美門から引き抜かれ現美容室で働いている。

福介(ふくすけ)

CV:興津和幸(ドラマCD)

スタイリスト2年目。元は有名美容室で、トレンドを生み出すような人気スタイリストがたくさんいる環境で働いていた。そこが笑吉の学生時代の実習先。正しいことを言っているのに仲間外れにされ、成績もさんざんなものを付けられた笑吉の涙を見て、そこから笑吉に執着するようになる。美門のSNSを発見し、美門が通っている店を探し当て、そこに通うことで接近。笑吉の居る美容室で働くことに成功する。手に入れたいもののためなら手段を択ばない性格をしている。そのため、笑吉の常連客が、笑吉に気があることを把握し、ストーカーに仕立て上げる計画を練る。また、笑吉のスマホに勝手に遠隔操作アプリを入れ、常に行動を把握、鬼原に対して勝手にメールを送るなどといった行為をする。このようにして笑吉と自分の仲に障害となりそうなものはとことん排除しようと考える。

龍来(りく)

CV:村瀬歩 (ドラマCD)

女装男子。配属されたばかりの店舗が女だらけで、男尊女卑の環境だったので女装を始めた。笑吉がストーカー行為に悩んでいた際、自身も似たような行為を受けたことがあることを告白。目敏く、福介の思惑にいち早く気付くが、傍観を貫く。しかし、笑吉に不自然なミスが増えたり、不安そうにしているのを見逃さず、助け舟を出す。2人の関係に割り込めない分傍観者で居たいという気持ちを持っている。

美門(みかど)

CV:山中真尋(ドラマCD)

美容室のオーナー。笑吉が以前の店舗で孤立していた時に唯一庄吉の味方をしてくれていた人。笑吉が美容室を辞める際、現美容室に引き抜いた。行きつけのお店をSNSにあげることが多く、それを頼りに福介は美門に接近。笑吉のいる現在の美容室で働くことになる。笑吉の恩人。

鬼原(きはら)

CV:千葉進歩(ドラマCD)

美容室の顧客。不愛想で生真面目すぎる笑吉を指名する珍しい客で、笑吉を個人的に食事に誘う。
亡くなった恋人に笑吉が似ていたため、固執していた。

一祝(かずのり)

新人のアシスタント。笑吉が特別美門を慕っているためホモなのではないかと気持ち悪がっている。
福介が笑吉のお客さんのカラーのレシピや、予約を操作しているせいで、笑吉のアシスタントをしている一祝がミスを連発してしまい、最終的に笑吉のミスに繋がってしまうことが多々ある。
一祝が笑吉のスマホの連絡先を復元している際、遠隔操作アプリが入っていることを発見。危ないのではないか、誰かに監視されているかもと笑吉に伝える。

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@aoha-aiyori

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