ヴィンチェンツォ(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ヴィンチェンツォ』とは、2021年に放送された韓国のテレビドラマ。脚本はパク・ジェボム。制作会社は「スタジオドラゴン」。イタリア系韓国人マフィアであるヴィンチェンツォが悪の巨大組織「バベルグループ」の不正を暴き、戦いを繰り広げていく物語。独創的なストーリー、魅力的なキャラクター、スリリングな展開、ユーモアあふれる演出など、様々な要素を兼ね備えた作品として多くのファンを獲得している。主人公を務めたソン・ジュンギが大賞受賞。

『ヴィンチェンツォ』の概要

『ヴィンチェンツォ』とは、2021年に放送された韓国のテレビドラマ。脚本はパク・ジェボム。制作会社は「スタジオドラゴン」。イタリア系韓国人マフィアであるヴィンチェンツォが、悪の巨大組織「バベルグループ」との闘いを繰り広げていくストーリー。不正や陰謀を簡単にもみ消す「バベルグループ」によって次々と被害者が出る中、冷酷さとカリスマ性を兼ね備えた主人公のヴィンチェンツォが、手段を選ばない残酷な方法で組織に立ち向かっていく。ダークでスリリングな緊迫したシーンが多い中、笑いやほのぼのとした場面も存在するのがこのドラマの魅力の1つ。鮮烈なストーリー展開とヴィンチェンツォの魅力的なキャラクターに加え、ドラマ全体のエンターテイメント性とメッセージ性が、視聴者から大きな評価を得ている。また、キャスト陣の演技力も光る作品となっている。

『ヴィンチェンツォ』のあらすじ・ストーリー

イタリアからやって来たコンシリエーレ

ヴィンチェンツォがブドウ畑にオイルを撒いて火を放つシーン

イタリア系韓国人マフィアであるヴィンチェンツォ。カサノファミリーのコンシリエーレ(顧問弁護士)だった彼は、亡くなった養父であるボスの遺言を実行するため、ファミリーの一員を殺したエミリオという男の元へ向かった。しかしルールを破ったエミリオとの交渉は決裂する。ヴィンチェンツォは広大なぶどう畑にライターで火をつけて燃やし、その場を立ち去った。その後ボスの葬儀で長男のパオロから、今後は自分に服従するよう要求されるも、「それに値する人間ではない以上服従できない」と伝え、その場を後にした。それが許せないパオロは、密かに暗殺者を放つが、ヴィンチェンツォにあっけなく殺されてしまう。その後彼はパオロの車を報復として爆破した。そしてパオロに電話をかけて「イタリアには戻らない。俺を探すな」と警告し、韓国へと向かうのであった。

「バベルグループ」と「ウサン法律事務所」

法廷で争う娘のチャヨン(画像左)と父のユチャン(画像右)

「バベルグループ」は、多くの事業を手掛ける韓国きっての大企業だが、数えきれないほどの不正を働いている。汚い手を使って組織を大きくしているため、被害を被る人たちも数知れず。そして組織にとって不利益になることはことごとくもみ消してきた。腐った体質を影から支えているのは「ウサン法律事務所」である。ウサンはバベルの顧問弁護を請け負っている。
ウサンのエース弁護士であるホン・チャヨンは、「バベル製薬」被験者が会社側を告発したことで起きた裁判で、証人となる人物を大金で買収していた。彼女は頭のきれる強い女性で、結果を求め寄り賢くしたたかに成果を出していく。一方、告発人を弁護するのはチャヨンの父であり、「藁法律事務所」の代表ホン・ユチャンである。彼は常に弱者の立場になって弁護する正義の弁護士だ。法廷での勝利という結果を求めるばかりで本質を見落とし、ウサンの中で汚れていく娘に心を痛めながら、「バベルもお前もまるでマフィアだな」と非難する。ユチャンはチャヨンをとても愛しており、娘に正しい道を歩ませたいと思いながらも、顔を合わせると衝突ばかりしてしまう。そしてチャヨンはというと、母が亡くなったのは仕事に明け暮れて家庭を顧みなかった父のせいだと思っている。2人は法廷でも私生活でもケンカばかりしていた。

眠る金塊

立ち退きを迫られて拒否をするヴィンチェンツォたち

ヴィンチェンツォの韓国での目的。それは古びた雑居ビル、クムガプラザの地下に眠る隠された金塊を取り出すことだった。5年前、ヴィンチェンツォに相談を持ち掛けた中国の大富豪であるワン氏が、安全な場所に金を隠すためこの建物を買収して地下に隠したのであった。しかしワン氏は既に他界。地下に金塊が隠されていることは、ヴィンチェンツォとビルの管理を任されているチョ・ヨンウン以外は誰も知らない。ヨンウンは以前、イタリアでヴィンチェンツォに助けられた経緯があり、そのときから彼に信頼を寄せている。それ以来彼らはビジネスパートナーだ。韓国にやってきたヴィンチェンツォは、このビルに居住しながら地下に眠る金塊を探し、掘り当てることを決めた。
あるとき、「バベルグループ」が再開発のためにクムガプラザ周辺の物件を購入していることを知る。このビルも例外ではなくバベルは入居者たちに立ち退きを迫っていた。しかし彼らは反対。入居者たちをまとめる代表は、ビル内に事務所を構える「藁法律事務所」のユチャンであった。金塊を手に入れる前に他の企業にこのビルを手渡すわけにはいかないヴィンチェンツォ。彼は弁護士としてユチャンと入居者たちの味方をすることにした。しかし突然現れただけのヴィンチェンツォは、住人からもユチャンからも不信な男として見られるのであった。

ワインパーティーで解体を阻止

ビルの解体工事を阻止するため、ワインパーティーを開催したヴィンチェンツォ

権力と財力を背景に、独自のルールでビジネスを進め、腐敗や犯罪などの悪事を影で行っている「バベルグループ」。クムガプラザもバベルに巻き込まれる形となり、いよいよ明日ビルの解体、という危機的状況に陥ってしまった。バベル側のウサンに所属しているチャヨンも、解体される前に父を避難させようとビルまでやって来た。父を探し回るチャヨンをよそに、ヴィンチェンツォはスマホに夢中になっていた。不安に駆られ荷造りをしなければと立ち去ろうとする入居者たちに、「ワインパーティーをしませんか?」と彼が声をかける。
その夜、解体時間が近づくにつれ父ユチャンのことが気になって不安が募るチャヨンは、車に乗り再び現場へ急いだ。そしてプラザに着いた彼女は、解体されるはずの現場でワインパーティーが開催されていることに驚く。そこは入居者はじめ、人気インスタグラマーや政治家たち、一般の人たちで溢れかえっていた。後からやってきた解体業者は、パーティーのせいで現場へ侵入できず、呆然と立ちつくすのみであった。
この一件でバベル側の計画を阻止したヴィンチェンツォ。正面から立ち向かうのではなく、SNSやマスコミを上手く使い、クムガプラザを守ることに成功。入居者も、敵であるチャヨンでさえも、彼に魅了された瞬間であった。

突然の別れ

ユチャン(画像左)と酒を酌み交わすヴィンチェンツォ(画像右)

「バベルグループ」と対立する中で、当初こそ疑ってばかりいたユチャンだが、時間が経つに連れヴィンチェンツォと徐々に信頼を深めていた。しかし別れの日は突然やって来る。ある日2人がお店で酒を飲んでいると、トラックが店内に突っ込んできたのだ。トラックに衝突した2人は衝撃とともに吹き飛ばされてしまう。この事故によりユチャンは帰らぬ人となり、ヴィンチェンツォも意識不明となる。一見不運な事故に思える出来事だが、これは単なる事故ではなく、新たにウサン弁護士にやってきた元検事のチェ・ミョンヒの仕業であった。

命を奪った者への警告

コインランドリーに閉じ込められ、恐怖で震えるミョンヒ

ユチャンが亡くなった後、人権弁護士は表の顔、賄賂や偽証を行う裏の顔があったと、報道が流れ彼は名誉も傷つけられてしまう。ユチャンの事務所のナム事務長は心を痛め、娘のチャヨンも父を失くした悲しみに暮れ、なすすべがなかった。しかしそんな報道の裏で、ユチャンが過ごした事務所には生前彼に救われた人たちが訪れ献花やメッセージを添え、その死を悼んだ。
チャヨンはこの件を機にウサンを去った。入院していたヴィンチェンツォの前で泣き続けるチャヨン。父の死に不審な点があることを確かめたくとも、どうすることもできない。泣くばかりの日々が続いたが、9日目にしてやっとヴィンチェンツォが目覚める。そしてともに父の死の真相を確かめることを決意。彼らはさっそくトラック運転手がいる留置所へ向かった。そしてその運転手を脅迫して得た情報を元に、2人の人物を捕らえに向かう。トラック運転手にユチャンを事故死させるよう指示した人物だ。廃墟で2人を捕まえたヴィンチェンツォは、さらに背後に潜む黒幕の正体を教えるよう迫る。しかしなかなか口を割らない。するとヴィンチェンツォはピストルを突き付け1人の男に向けて発砲した。発砲音と共に血しぶきが飛び倒れる男。それを見ていたもう一人は恐怖におののき、ついに黒幕の正体を暴露。殺害を指示した人物はがミョンヒだと分かる。ユチャンの名誉を気付けたのもこの人物の仕業だった。
ミョンヒはコインランドリーでご機嫌にズンバダンスを踊っている。するとスマホに着信が入る。相手はヴィンチェンツォだが、ミョンヒは誰なのか分からない。電話の向こうの声は「ユチャンの殺害を指示した人物がお前だということは分かっている」と伝えた。そして気付けばコインランドリーは固く閉ざされ外に出ることができない。電話の相手がどこかで自分を監視していると周囲を見渡す。そして焦るミョンヒが次に見たのは、猛スピードでコインランドリーに向かってくるトラックだった。悲鳴を上げ部屋の隅に逃げ込み、恐怖で震えるミョンヒ。あと一歩のところでとトラックが急停止をして一命を取り留める。そんなミョンヒにユチャンの名誉を回復させるようヴィンチェンツォが要求した。しかしそれには応える気のないミョンヒ。危機が去り、彼女は自分を恐怖に陥れた相手を見つ出して必ず報復することを決意する。ミョンヒは弁護士でありながら血も涙もない、自分の欲望を満たすためならば殺人さえも平気で犯す毒蛇のような人物だった。

バベルとのシーソーゲーム

倉庫の火事に慌てふためくチャン・ハンソ会長

バベルグループは次々と問題を起こしていた。しかしそれが明るみ出ることはない。バベルの弁護を担当しているウサンが常に後ろに控えていて、訴訟問題さえも闇に葬り去っているからだ。
グループの中の「バベル新薬」が行った不正実験のために命を落とした研究員と、バベルの真実を暴こうとして亡くなった弁護士ユチャン。人命すらも軽視するバベルに対し、悪のやり方には悪のやり方をと言わんばかりに、ヴィンチェンツォは「バベル製薬」の原料貯蔵庫に火をつけ火事を起こす形で大打撃を与えた。想定外の大惨事に、駆け付けたグループの代表、チャン・ハンソはその場に崩れ落ちるしかなった。
また、「バベル化学」の主力開発物質である有毒物質BLSDによって被害者が頻出。訴訟問題まで発展していたが、代理人の弁護士と「バベル化学」がウサンと協力して被害者たちに示談を勧めていた。病院やマスコミも一体となり事件の本質を揺るがしている。そこでヴィンチェンツォは代理人の弁護士を「訴訟代理をわたしに引き渡さなければ、誰もいないところに送ってしまう。」と脅迫して舞台から退場させることに成功する。
その後ヴィンチェンツォとチャヨンはウサンを訪れ、過ちを認めるよう示談の提案を持ち掛ける。しかしそれを受け入れようとしないバベルとウサン。そして2人は「容赦しない」と宣戦布告をするのであった。その後バベルグループの権力を打ち破るための反バベル運動を続々展開。「バベル科学」の件では、ナニャクサの僧侶の友人が被害にあったこともあり、これを機にクムガプラザの人々もヴィンチェンツォに協力をするようになる。裁判の場でヴィンチェンツォ側が有利になるよう協力をしたり、様々な手段を用いて「バベルグループ」に立ち向かっていく。
その成果もあり、「バベルグループ」は資金源に行き詰まり危機に陥る。そこで、業界一のシングァン銀行からの投資の約束を取り付けることに成功。しかしこれもまた、銀行側頭取の弱みを握ったことで成立した契約であり、正攻法ではなかった。その投資話に不信を感じたチャヨンは調査を開始し、投資を阻止しようと動き始める。調査で分かったことは頭取であるファン・ミンソンがゲイでありDVの常習犯であるということ。ミンソンはその罪をもみ消してきたウサンに脅迫される形で融資をすることになったのである。
バベルとの投資話を打ち消そうと、容姿端麗なヴィンチェンツォがゲイであるミンソンに近づく。ミンソンは彼に一目ぼれをし、見事ハニートラップは成功。その後ミンソンはバベルとの投資協約を白紙に戻すことをヴィンチェンツォに約束した。しかしミョンヒのほうが先手を打っていたことで、投資協約は成功してしまう。ミョンヒはミンソンの実母である会長を脅迫して協約を進めていたのである。

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