マイホームヒーロー(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『マイホームヒーロー』とは、ごく平凡な人生を歩んできた男が娘を守るため殺人に手を染め、犯罪に巻き込まれていく様を描いた山川直輝(原作)、朝基まさし(作画)による漫画作品。大人向けのクライム・サスペンスとして高い評価を受け、2023年にアニメ化した。
鳥栖哲雄は、趣味で推理小説を執筆しているサラリーマン。ある時、哲雄は親族の遺産を受け継ぐ予定の娘の零花が、恋人の麻取延人に命を狙われていることを知り、これを殺害。麻取の仲間や警察の追及から逃れつつ、哲雄は家族を守るために犯罪行為を重ねていく。

『マイホームヒーロー』の概要

半グレ組織の襲撃に遭う鳥栖哲雄。

『マイホームヒーロー』とは、ごく平凡な人生を歩んできた男が娘を守るため殺人に手を染め、犯罪に巻き込まれていく様を描いた山川直輝(原作)、朝基まさし(作画)による漫画作品。
大人向けの硬派なクライム・サスペンスとして高い評価を受け、映像化が期待される注目作となる。2023年にアニメ化を果たし、高い年齢層の視聴者を中心に話題となった。

鳥栖哲雄(とりす てつお)は、趣味で推理小説を執筆しているサラリーマン。妻の歌仙(かせん)との仲は良好だが、大学生になる娘の零花(れいか)とはやや距離のある関係を続けていた。
その零花に母方の親族から5億円もの遺産が受け継がれることが一方的に決まってしまい一家が戸惑う中、哲雄は娘の恋人の麻取延人(まとり のぶと)がその金を横取りするために零花を殺そうとしていることを知る。娘を守るため、哲雄は咄嗟に麻取を殺害し、推理小説の執筆で培った知識で死体を処理する。しかし麻取の仲間の半グレ組織や警察が不審を感じて一家の周囲を嗅ぎ回るようになり、哲雄はさらなる犯罪に手を染めていくこととなってしまう。

『マイホームヒーロー』のあらすじ・ストーリー

日常の崩壊

鳥栖哲雄(とす てつお)は、趣味で推理小説を執筆しているサラリーマン。妻の歌仙(かせん)との仲は良好だったが、大学生になる娘の零花(れいか)とはやや距離のある関係を続けていた。
その零花に母方の親族から5億円もの遺産が受け継がれることが一方的に決まってしまい一家が戸惑う中、哲雄は娘の恋人の麻取延人(まとり のぶと)がその金を横取りするために零花を殺そうとしていることを知る。娘を守るため、哲雄は咄嗟に麻取を殺害。その死体を見付けた歌仙は、事情を聞くなり「娘を守るためなら」と共犯者となる旨を申し出る。

哲雄は河川と協力し、推理小説の執筆で培った知識で麻取の死体を処理する。恋人が急に消えたことを零花が不思議に思い始める一方、麻取の仲間の半グレ組織の男たちも「大金を狙っていた麻取と連絡が取れなくなった」と鳥栖家を怪しみ、哲雄たちを監視するようになる。これに気付いた哲雄は、監視されていることに気付かないふりをしながら彼らの疑惑が別の人間に向かうよう工作する。
しかし、半グレ組織の間島恭一(まじま きょういち)はこれに違和感を覚え、「麻取は哲雄たちに殺されたのではないか」と推測。証拠も時間も無い中、哲雄と歌仙を別々に拘束し、拷問して話を聞き出すという強引な方法で真実を突き止めようとする。

麻取殺しの“真犯人”

こういった事態に備えて口裏を合わせていた哲雄と歌仙はどうにか追及を逃れるも、“先走って余計なトラブルを背負いこんだ”と見なされた間島は組織内での面目を失う。ヤケになった間島は、「哲雄を殺して、“彼が麻取を殺した”という形でむりやり押し通す」ことを目論み哲雄に襲い掛かる。哲雄は咄嗟に「自分は死にたくない、あなたは組織内の面目を失いたくない、ならば2人で麻取を探し出そう」と提案し、彼と偽りだらけの協力関係を結ぶ。
実のところ、間島は哲雄への疑惑を払拭したわけではなく、「この男こそが麻取を殺した真犯人に違いない」と考えていた。哲雄と協力することにしたのも揺さぶりをかけるためだったが、彼は間島の思惑を慎重に探りつつのらりくらりと追及をかわしていく。形として麻取の行方を探す中で、彼が懇意にしていたBARの響(ひびき)というホステスから「麻取は半グレ組織が狙っていた現金輸送車を横取りする形で襲撃し、大金を持ち逃げした」という情報をつかんだ哲雄は、これを利用してこの窮地を切り抜けられないかと考える。

しかし、哲雄と間島が共に脛に傷持つ立場であることを察したBARの店主が、2人に法外な料金を吹っ掛けた上で「これを払うか、死ぬか、自分たちの仕事を手伝うか」と要求。哲雄と間島は他の組織同士の闇取り引きの現場に踏み込み、荷物を奪う仕事を押し付けられる。哲雄が戸惑う中、「やるしかない」と覚悟を決めた間島は車で取り引き現場に突入。銃弾を受けて重傷を負ってしまう。
実は間島の所属する半グレ組織も同じ品を狙っており、2人は偶然駆け付けた久保たちによって九死に一生を得る。勝手に動き回って勝手に負傷した間島は、直属の上司で本物の殺し屋だという窪(くぼ)という男から叱責を受ける。しかしその窪は哲雄が居合わせたことに気付くと、「怪我の功名」として“哲雄が殺人を犯した”風を装う内容の動画を撮影。鳥栖家への脅迫材料としてしまう。

さらに不利な状況に追い込まれた哲雄は、「麻取が生きていた」ような動画を作成し、これを使って半グレ組織の追及をかわすことを画策。そのために学生時代の後輩の田畑敏(たばた びん)という男に声をかけ、事情を説明しないまま動画撮影に協力させる。あとは麻取のスマホを使ってこの動画にコメントすれば偽装工作は完了するが、パスワードがどうしても分からない。忘れた時のヒントによれば「ペットの名前」とのことで、哲雄は麻取のペットの名前を突き止める必要に迫られる。
何か手掛かりはないかと麻取の行きつけの店を回る内、哲雄は“家族との仲を再構築しようとしていたのに、うまくいかなかった”と語る同年代の男に出会う。名前を聞かれ、咄嗟に「田畑」と名乗る哲雄だったが、その男と別れてから彼が麻取の父親である麻取義辰(まとり よしたつ)であるとの情報を店の者から聞いて驚く。凄腕の詐欺師でもある義辰は、哲雄が名乗った名前を偽名だと見抜き、「息子の失踪」と「偽名を使って自分の周囲を探る男」に関連があると直感する。

間島との探り合い

哲雄の作った動画は半グレ組織に徹底的に調べられ、「本物かどうか怪しい」と判断される。間島はさらに哲雄への疑惑を深め、彼の家に麻取の死体が隠されているのではないかとの疑惑を確かめるために鳥栖家へと向かう。“下手な工作をされてはたまらない”と考えた間島により哲雄も同行することとなり、「死体の処分は終わっているが、痕跡が残っていたら」と冷や汗を流すこととなる。
歌仙のサポートでこの窮地を乗り越えた哲雄は、下剤を飲まされた間島が席を外している間に、彼のパソコンにキーロガー(キーボードの入力履歴を記録するソフト)を仕込む。一方、間島は鳥栖家でたまたま出会った零花が何も知らされていないことを見抜き、彼女を利用して哲雄の秘密を探ろうと考える。

下手をすれば今度は零花までもが半グレ組織に直接狙われる。歌仙と協力し、間島を「麻取殺しの真犯人」として仕立てていく哲雄は、ギリギリで間島を出し抜き、彼が証拠を隠していたかのように見える工作を進めていく。しかし半グレ組織に所属し、仲間すらも信用していない間島は防犯意識も強く、哲雄が用意していた方法で部屋に入ることは不可能だった。「あとは間島の部屋に偽造した証拠品を残してくるだけ」というところで、哲雄は工作をいったん中断せざるを得なくなる。
ここで哲雄は一計を案じ、「組織は間島を犯人に仕立てて幕引きを図ろうとしている」という嘘を吹き込むことで、彼が自ら自分の部屋を調べるよう誘導。哲雄を警戒する間島は、自由を与えたくない一心で彼を伴い自分の部屋に向かい、そこで個人用の金庫をチェックする。あそこに偽造した証拠を収めて組織に発見させれば自分たちの勝ちだと確信する一方、まったく隙を見せず、「哲雄こそが麻取殺しの真犯人だ」との意見を翻そうともしない間島に、哲雄は「果たして自分はこの男に勝てるのだろうか」との戦慄を抱く。

哲雄と間島の勝敗を分けたのは、歌仙という“間島の意識していない協力者”の存在だった。彼女が密かに指示された通りに動くことで、哲雄は間島の気付かぬ間に彼の金庫の中に麻取の遺骨を仕込むことに成功する。
さらに麻取が組織の狙っていた現金輸送車を横取りの形で襲撃したことを、「間島は麻取の共犯者である」というフェイクの情報と共に流すことで、久保は「麻取と間島は組織を裏切っており、現金の分け前を巡って仲違いして殺し合った」と判断。ついに哲雄は組織の目を欺き、麻取殺しの犯人という立場から解放される。

結末と波乱

麻取の遺骨という動かぬ証拠が出てきたことで、組織から彼を殺した真犯人と目された間島は、久保によって制裁されそうになる。しかし深手を負いながら間一髪で逃げ出し、哲雄がどういう工作で自分をハメたのかを推測。「このままでは終われない」と、義辰に全てを報告する。
間島の話を信じた義辰は、自ら息子の仇を取ろうと哲雄を襲撃。運動不足の中年男性同士の激しい殺し合いは泥仕合となるも、そうやって時間を稼ぐことが義辰の目的だった。組織や警察の目が集まる場所で哲雄と殺し合うことで、彼とその家族全員を破滅させることが義辰の狙いだったのである。

自分では哲雄を殺し切れないと判断した義辰は、最後に彼に疑惑のかかる形で自害しようとする。義辰が事前に呼んでいた警官たちに詰問されるも、哲雄は咄嗟の言い逃れでこれを回避し、義辰の遺体を山奥に埋める。これでようやく全てが終わると安堵すると同時、「本当にこれで終わるのか、この罪から逃れることはできるのか」と哲雄は天を仰ぐ。
間島はなんとか逃げ切り、組織は彼を麻取殺しの犯人と断定したまま追跡を断念する。鳥栖一家にもようやく平穏な日常が戻ってくるものの、哲雄が義辰の遺体を埋めた地域に大型の台風が迫っていた。土砂崩れの危険性について盛んに警告するニュース番組を見詰めつつ、哲雄は「きっと大丈夫さ」と自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。

『マイホームヒーロー』の登場人物・キャラクター

鳥栖家

鳥栖哲雄(とす てつお)

CV:諏訪部順一

主人公。おもちゃメーカーに勤める、47歳の平凡なサラリーマン。アマチュア作家で、推理小説の執筆を趣味としている。
娘の零花が恋人の麻取延人から命を狙われていることを知り、彼女を守るためにこれを撲殺。妻の歌仙と協力し、推理小説の執筆で培った様々な知識を活用して遺体を処理するも、麻取の仲間や警察の追求から逃れるために罪を重ねていく。

鳥栖歌仙(とす かせん)

CV:大原さやか

哲雄の妻。神道系カルト教団で育った過去を持ち、哲雄と出会う前は日本の貨幣制度も知らない状態だった。
哲雄が麻取を殺したことを知って驚くも、「娘のためなら自分の同じことをした」と判断し、彼の共犯者となって事件の隠蔽に加担する。

鳥栖零花(とす れいか)

CV:白田千尋

哲雄と歌仙の娘。18歳の大学生。反抗期以来父との関係はギクシャクしているが、根っこのところでは敬愛しており、誕生日には毎年凝ったプレゼントを用意している。
母方の親族から5億円もの大金を遺産として受け取ることとなる。その金を狙って近づいてきた麻取と恋仲になり、DVを振るわれるも分かれることができずにいた。

半グレ組織

YAMAKUZIRA
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