ナビレラ -それでも蝶は舞う-(韓国ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』とは、2021年に放送された韓国ドラマ。同名の人気ウェブ漫画が原作で、70歳でバレエを始めたシム・ドクチュルとスランプに陥っている23歳のバレエダンサー、イ・チェロクの交流を描いている。厳しい現実を目の前に思い悩むチェロクが、70歳を過ぎ、胸の奥に秘めていたバレエへの思いを募らせたドクチュルの師匠となったことで、成長していく姿や、年の差を超えた2人の友情が話題となった作品。タイトルの『ナビレラ』とは、朝鮮語で「蝶のように羽ばたく」という意味。

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』の概要

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』とは、2021年3月から4月にかけて韓国のケーブルテレビtvNで放送されたテレビドラマ。韓国第2位のポータルサイトDaumに掲載された同名のウェブ漫画が原作で、70歳でバレエを始めたシム・ドクチュルとスランプに陥っている23歳のバレエダンサー、イ・チェロクの交流を描いている。

郵便配達員として働いてきたシム・ドクチュルは、定年退職してから特にやりたいこともなく毎日を過ごしていた。70歳を過ぎ、友人の訃報も増えてきたある日、通りかかったバレエスタジオで若いバレエダンサーが踊る姿を目にする。若い頃、バレエに憧れを抱いていたことを思い出したドクチュルは、バレエスタジオを訪れ、バレエを習いたいことを申し出る。

一方、バレエスタジオで踊っていたのは、プロを目指しているがスランプに陥り思い悩んでいるイ・チェロクだ。70歳を過ぎてバレエを習いたいというドクチュルを最初は馬鹿にするが、ドクチュルのバレエに対するまっすぐな思いに触れるうちに、チェロクの心にも変化が現れる。

主人公シム・ドクチュルを演じたのは様々なテレビドラマや映画に出演し、名バイプレイヤーとして活躍するパク・イナン。イ・チェロクは、『恋するアプリ Love Alarm』や『Sweet Home-俺と世界の絶望-』など、NETFLIX で人気となった作品で次々と主演を務め、「NETFLIX の息子」と呼ばれるソン・ガンが演じた。また9話には、ソ・イングクが先輩バレエダンサーとして特別出演している。本作で強烈なインパクトを残したソン・ガンは、『2021ブランド顧客忠誠度大賞』で「2021年に最も影響力のある人物男優」部門を受賞した。

監督は『元カレは天才詐欺師~38師機動隊~』や『バッドガイズ2~悪の都市~』のハン・ドンファ。脚本は『愛の迷宮-トンネル-』のイ・ウンミが手掛けた。

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』のあらすじ・ストーリー

ドクチュルとチェロクの出会い

スタジオで練習するチェロク(左)を見つめるドクチュル(右)

70歳のシム・ドクチュルは、仕事を定年退職し、暇をもて余して暮らしていた。なにか喪失感のようなものを感じていたドクチュルは、ある日、友人の葬儀の帰りにふと立ちよった建物で、若者がバレエの稽古に励む姿を目にする。

その若者の名前はイ・チェロク。チェロクはプロのバレエダンサーを目指していたが、スランプに陥っていた。集中していない様子のチェロクをコーチのキ・スンジェは心配していた。

オーディションの日。審査が終わると同時に、チェロクは父親が出所予定の刑務所に向かった。しかし、刑務所に父親の姿はない。父親に連絡をすると、「すでに出所し、働き口を紹介してくれた地方に来ている」と言われてしまう。

一方ドクチュルは、白鳥の湖の舞台を観て、バレエへの思いを募らせていた。ドクチュルは幼い頃、バレエダンサーになることを夢見ていた。しかし厳格な父に反対され、その夢が叶うことはなかった。ドクチュルの足は自然とチェロクが稽古するスタジオに向かっていた。チェロクに声をかけられたドクチュルは、バレエを習いたい旨を申し出る。最初はスンジェとチェロクに相手にしてもらえないドクチュルだったが、何度も頼みに来るドクチュルの熱意に押されたスンジェは、チェロクにドクチュルの先生になるよう促す。ドクチュルのまっすぐな熱意に、チェロクがバレエを始めた頃の輝きと同じものを感じ、スランプに陥っているチェロクに良い影響があるのではないかと考えたのだ。

しかし、チェロクは簡単に首を縦に振らない。ドクチュルの本気度を試すために、1週間以内にバレエの基本ポーズを1分間キープ出来るようになったら弟子にする、と条件をつきつけた。

弟子入り

無事弟子入りを果たしたドクチュル(前)にバレエのポーズを教えるチェロク

ドクチュルは妻の目を盗み早速練習を始めたが、見た目よりそのポーズは難しく、なかなかポーズを維持することができない。不安が残るままテストの日を迎えたが、なんとか合格することが出来た。テストに合格したドクチュルは、晴れてチェロクの弟子となった。それと同時に、スンジェはドクチュルにチェロクのマネジャーを務めるようお願いする。プロバレエダンサーを目指しながら、生計のためにアルバイトを掛け持つチェロクは日常生活の管理が不十分だった。ドクチュルはチェロクの食べたものを記録し、担当医にはチェロクの体の状態を詳細に確認した。また、チェロクがアルバイトでバイク配達をしていることを知ると、代わりに配達を行うなど、チェロクのケアを行った。

ある時、ドクチュルはチェロクが不良に絡まれているのを発見する。その不良はチェロクの同級生ホボムだった。何かにつけてチェロクに絡んで来るホボムに対し、ドクチュルは「チェロクは大きく羽ばたく人間だ」と今後絡まないように忠告する。ホボムは高校生の頃、サッカー部のコーチであったチェロクの父親から体罰を受け、サッカーが出来なくなってしまったため、チェロクのことを恨んでいたのだ。

その数日後、いつものようにドクチュルがチェロクにモーニングコールするとチェロクが電話にでない。不審に思ったドクチュルがチェロクの家を訪ねると、チェロクは風邪で寝込んでいた。ドクチュルはおかゆを作り、冷蔵庫には作った料理をおいて帰った。翌日、体調がよくなったチェロクが稽古場を訪れると、そこには真剣に稽古に励むドクチュルの姿があった。最初はドクチュルのことを鬱陶しがっていたチェロクだが、ドクチュルのひたむきな姿に少しずつ心を動かされていた。

家族の反対

ドクチュル(右)がバレエを始めたことを知り、辞めるよう説得する子どもたち

妻ヘナムに隠れてバレエのレッスンを行ってきたドクチュルだが、庭に干していた稽古着がヘナムに見つかってしまう。問い詰められたドクチュルはバレエを習っていることを白状する。しかしヘナムは大反対。稽古着をはさみで切ってしまう。

ショックを受けたドクチュルがチェロクに相談すると、チェロクは堂々とするようにとアドバイスをくれた。そして、勇気をもらったドクチュルは、稽古着を着てバレエのポーズをする画像を家族全員のチャットに送った。家族の反応は様々だったが、末っ子のソングァンや長男ソンサンの妻エランは応援してくれた。しかし、反対する妻を押し切れずドクチュルはバレエを辞めることを決意する。部屋で稽古着に身を包みバレエとの別れを惜しんでいたところ、その場面をソンサンに目撃される。腹を立てたソンサンは「苦労は長男に押し付けて自分は楽して生きていくつもりか?」とドクチュルに怒鳴った。それを聞いたヘナムは「いつ父さんが楽をしたというのか?」と激怒し、ドクチュルにバレエを続けるように言うのだった。ヘナムは夫がバレエを習うことに反対だったが、バレエを辞めるように決めてから意気消沈しているドクチュルが気がかりだった。

コンクールへの挑戦

ホボム(左)は過去の出来事にとらわれ、チェロク(右)につっかかりつかみあいになる

晴れてヘナムにバレエを習うことを認めてもらったドクチュル。チェロクはドクチュルの復帰を喜んだ。スランプに悩んでいたチェロクだったが、ドクチュルとの交流を通して、前向きにバレエに取り組むことが出来るようになっていた。そして、コンクールへの挑戦を決め、稽古に励んだ。しかし、なかなか思うように踊ることが出来ないチェロクは、ポーズのチェックを求めるドクチュルに八つ当たりをしてしまう。焦るチェロクに対し、ドクチュルは「こんなに頑張っているんだから自信を持って」と励ます。

コンクールの本選出場の合否が発表される日。ドクチュルはチェロクを家に招待した。ヘナムの手料理ともてなしを楽しんだチェロクは、そわそわしながら連絡を待っていた。すると、チェロクの携帯に本選への出場を知らせるメールが届く。わだかまりがある父へも本選出場の連絡をし喜ぶチェロクだったが、その直後、同級生のホボムに呼び出され、口論の末に階段から落ちてしまう。

コンクールを直前に控え、足首に怪我を負ったチェロク。以前チェロクに絡むホボムを挑発したことをドクチュルは悔やんだ。しかし、チェロクはコンクールへの出場を諦めていなかった。幸い骨に損傷がなかったため、1週間程でギプスをとることが出来た。早速練習を再開するチェロク。しかし、スンジェは自分が怪我をきちんと治さず、本番に臨んだことでプロ生命を断たれたことを思い出し、チェロクにコンクールを諦めるように促す。その言葉に戸惑うチェロクだったが、ドクチュルからも「次がある」と説得され、今回のコンクールは諦めることにした。

一方、ドクチュルはどんなに自分が努力してもチェロクのように輝くことは出来ないのではないか、という思いに悩まされる。ドクチュルの思いに気づいたスンジェは、ドクチュルをキム・フンシクバレエ団へ連れて行った。そこには若くて健康なダンサーだけでなく、車いすで踊るダンサーもいた。車いすのダンサーが力強く踊る姿を見て、ドクチュルは若くて美しいことよりもバレエへの気持ちが大事だということに気づいた。

ドクチュルの病気

ドクチュルが「私はアルツハイマーだ」と書いた手帳を見つけるチェロク

ある日、チェロクはドクチュルがロッカーに落としていた手帳を見つける。中を見ると、「私の名前はシム・ドクチュル。私はアルツハイマーだ」と記されていた。数か月前、ドクチュルは医師からアルツハイマーの診断を受けていた。なるべく早く家族に伝えること、メモをとること、運転を辞めることなどを指示されたドクチュルはメモをとることを習慣化した。また運転も辞めたが、家族にはこのことを伝えられずにいた。

チェロクはドクチュルに残された時間が短いことを知り、彼のバレエをしたいという気持ちを全力でサポートした。しかし、ドクチュルの症状は悪化しており、公園で自分のことが分からなくなってしまう。チェロクは迷った末、息子のソングァンにアルツハイマーのことを話した。父の病気を知ったソングァンはショックを受けるが、父がバレエに励む姿を撮影し、ドキュメンタリーを撮ることを決意する。大事をなことを忘れてしまうことが多くなり、混乱するドクチュルにチェロクは自分が病気のことを知っていることを明かす。「もし頭が忘れてしまっても、体でバレエを覚えていたい」と話すドクチュルに、チェロクはドクチュルを舞台に立たせることを思いつく。スンジェは乗り気ではなかったが、ドクチュルの夢を叶えるため、チェロクは奔走した。

一方、ドクチュルは療養院を訪れ、順番待ちの名簿に名前を書いた。先日、家で鍋を火にかけていることを忘れ、ヘナムにやけどを負わせてしまったことから、自ら施設に入る準備を始めたのだ。そんな中、ドクチュルの行方が分からなくなり、誰もドクチュルと連絡がとれない事態が発生する。ソングァンは長男のソンサンにもアルツハイマーのことを話した。チェロクが入れておいた位置確認アプリにより、ドクチュルの居場所が分かると、迎えに行ったソンサンは「年をとっても、父さんはいつでも大きな山だ」と言って涙を流した。

舞台への出演が決まり、不安を抱えながらもドクチュルは必死に稽古を行った。チェロクも必死にサポートを行う。その様子を見たスンジュはある提案を行う。それはドクチュルとチェロク2人で今度の舞台に立つというもの。コンクールを控えたチェロクの迷惑になるとドクチュルは断るが、チェロクはその提案を喜んで受けた。

本番当日

アルツハイマーの症状が進行する中、チェロク(左)のサポートを得て本番に臨むドクチュル(右)

そして本番の朝。いつもの時間に起きてこないドクチュルをヘナムが起こしに行くと、ドクチュルは「誰ですか?」と一言。ヘナムのことが分からなくなってしまったのだ。息子のことも分からず、ヘナムは慌ててドクチュルを病院に連れて行く。公演は絶望的かと思われたが、なんとしても夫の夢を叶えてあげたいヘナムはドクチュルをスタジオに連れて行く。すると、ドクチュルは少しずつ記憶を取り戻したが、肝心の振付が思い出せない。誰もが公演は難しいと考えたが、チェロクは諦めなかった。「完璧じゃなくても体が覚えているはずだ」とドクチュルを鼓舞し、2人は舞台に立つこととなった。客席にはドクチュルの家族や、チェロクの父、ホボムもいた。みんなが見守る中、2人は最高の演技を披露した。

本番の翌日、昨日のことが現実である喜びをかみしめたドクチュルは家族を呼び、「施設に入ることにした」と告白する。しかし、家族は全員反対する。誰もが父親がアルツハイマーで自分たちのことが分からなくなっても一緒に暮らしたいと思っていた。そしてチェロクはコンクールのため海外に旅立った。

3年後。海外で活躍するチェロクが帰国した。ドクチュルは家族のことも分からなくなっていたが、チェロクに再会すると、「羽ばたいたか?」と声をかけ、バレエのポーズを決めた。

『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』の登場人物・キャラクター

主要人物

シム・ドクチュル(演:パク・イナン)

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