ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』(Vampire in the Garden)とは、異種族同士が共存する「楽園」を目指す人間の少女とヴァンパイアの女王の過酷な旅路を描いた、2022年のアニメ作品。
人間とヴァンパイアが果てなき抗争を繰り返す冬の時代。人間でありながらヴァンパイアとの共存を夢見る少女モモは、同じ思いを持つヴァンパイアの女王フィーネと共に、人とヴァンパイアが平和に暮らす「楽園」を目指す旅に出る。追手たちの執拗に追撃から逃れながら、2人は夢と理想を求めて歩み続ける。
『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の概要
『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』(Vampire in the Garden)とは、異種族同士が共存する「楽園」を目指す人間の少女とヴァンパイアの女王の過酷な旅路を描いた、2022年のアニメ作品。
作中では“音楽”がキーアイテムとして登場し、“楽園への脱出”といったメインテーマも合わせて欧米で注目度の高い要素を多く取り込んだ作風となっている。Netflixで全5話が配信されており、海外を中心に話題となった。
人間とヴァンパイアが果てなき戦争を繰り返す冬の時代。人間でありながらヴァンパイアとの共存を夢見る少女モモは、ある時戦場でヴァンパイアの少女が落としたオルゴールを拾う。それこそは“人間とヴァンパイアが共存する”という「楽園」なる場所へと向かうヒントが隠された品だった。
同じ思いを持つヴァンパイアの女王フィーネは、オルゴールを持つモモとの出会いに運命を感じ、彼女を誘って北の果てにある「楽園」を目指す旅に出る。しかしそれぞれの陣営の者たちは彼女たちの逃避行を許さず、執拗に追手を送り出す。追撃を逃れながら、モモとフィーネは夢と理想を求めて歩み続ける。
『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』のあらすじ・ストーリー
冬の時代と「楽園」
人間とヴァンパイアが果てなき戦争を繰り返す冬の時代。人類はヴァンパイアに大敗してその生存圏を大きく減らし、巨大な機械の都に光の結界を作って反攻の機をうかがっていた。ヴァンパイアの側も「今こそ好機」と総攻撃の準備を整えつつあり、両者の戦いはいよいよ決戦の時を迎えつつあった。
一方、ごく少数ではあったが、人の側にもヴァンパイアの側にも共存の道を図ろうとする者たちがいた。彼らは種族の壁を越えて愛し合う男女であったり、あるいは同じ嗜好によって結ばれた仲間であったりしたが、決戦を間近に控え相手種族への敵意と憎悪を燃やすそれぞれの陣営の者たちは彼らの夢想を許さず、強引に踏みにじる。必死で逃げ続けたとしても、結局はヴァンパイア側が本能に負けて人間のパートナーを襲うのが常だった。
そんな中、ヴァンパイアたちの間に「楽園」という存在に関する噂が流れ始める。「楽園」とは遥か北の果てにある土地で、そこでは人とヴァンパイアが共存しながら平和に暮らしているというのだ。「楽園」の存在は若いヴァンパイアの間で話題となったが、誰もその存在を確かめたことはなく、本当にあるのかどうかも分からない状態だった。
同族の仲間たちによって人間の友を殺されたヴァンパイアの若き女王フィーネは、心のどこかで「楽園」の実在を願い、いつかそこに行くことを望んでいた。しかし友が死んだ今となっては「楽園」に向かう意味も見つからず、自分の立場がそれを許してくれないことも理解し、フィーネはただ諦観と共に享楽的な日々を過ごしていた。
モモとオルゴール
都の司令長官ノバラの娘であるモモは、兵士としてあるヴァンパイアの掃討作戦に参加した際、不思議な旋律を奏でるオルゴールを発見する。これは「楽園」に関する手掛かりとなるもので、これを持っていたヴァンパイアが戦うことよりも共存を望んでいた証拠でもあった。彼らの死に様から「殺し合う以外に方法は無かったのか」と心を痛めたモモは、ヴァンパイアの愛好する文化だとして音楽全般を禁じる都の法を破ることを承知でオルゴールを持ち帰る。
その晩、フィーネを含む若手のヴァンパイアたちが都への大規模侵攻を開始。人間側はこれを正面から迎え撃ち、双方に多大な被害が出る。人間側優勢に戦況が進む中、仲間たちの撤退を支援していたフィーネは、戦いの中で友人を失い慟哭するモモと出会う。
なぜ大切な人を失ってまで戦い続けるのか、人間とヴァンパイアに殺し合う以外の道は無いのか。傷心極まったモモは、戦場にありながら戦うことを放棄し、たまたま持ち歩いていたオルゴールの旋律に合わせて歌っていた。フィーネは彼女が「楽園」への道標となるオルゴールを持っていたことに驚き、人間たちが禁じているはずの音楽を愛していることを見抜き、何より生きるために殺すより死者を悼むことを優先していることに衝撃を受け、かつての友の面影を彼女に重ねて「話がしてみたい」と考える。
しかし、ここにモモを救わんとする人間側の兵士たちと、フィーネを助けようとするヴァンパイアの戦士たちが殺到。このままでは自分たちも無事では済まないと考えたフィーネは、モモを拉致する形で戦線を離脱。仲間たちとは合流せず、自分の隠れ家に彼女を連れて行く。
「楽園」を目指す旅路
“ヴァンパイアに拉致された”という状況に恐怖するモモだったが、フィーネの紳士的な振る舞いに「この人は信頼できる」と考えるようになり、彼女との間に友情を築くと共に「楽園」の存在にも興味を抱いていく。モモを救わんとする人間側の追手と、フィーネを連れ戻そうとするヴァンパイア側の追手に追い立てられた2人は、新たな友人を死なせまいと必死に逃げ回り、済し崩し的に「楽園」を目指す旅に出立する。
「楽園」が存在するとされる北に向かって進む中、モモは圧倒的に強い存在だと思っていたフィーネが過去に人間の友を失った経験があることを知る。一方のフィーネは、「自分が巻き込んでしまったのだから自分が守らなければ」と考えていたモモが、思っていたよりも遥かに心の強い少女であることを知り、2人は対等のパートナーとなっていく。
2人の旅の終わり
やがて2人は、ついに「楽園」とされる地へと辿り着く。そこは確かに人間とヴァンパイアが共に暮らしており、日常的に音楽を楽しむ平和な村だったが、その繁栄は“捕らえたヴァンパイアを燃料にする”というおぞましい行為によって維持されていた。「楽園」の噂を流したのもここの住民たちで、その目的も“燃料にするためのヴァンパイアを定期的に確保するため”というものだった。
こんなものは自分たちの目指した「楽園」ではない。モモとフィーネが慌てて村から脱出しようとしたところで、2人を追う人間とヴァンパイア双方の部隊が現れる。壮絶な乱戦の中、フィーネはモモを守るために「ヴァンパイアを怪物化させる秘薬」を自らに打ち込む。これは強大な力を得られる代わりに理性を失い、2度と元の姿には戻れない危険な薬だった。
怪物化したフィーネは追手たちを次々と蹴散らすも、自らも傷つき、人間側の追手を率いるクボによって深手を負わされ倒れ伏す。いざトドメを刺さんと迫るクボの前にモモが立ち塞がり、自分たちのことを放っておいてほしいと訴える。自身もかつてヴァンパイアの女性と恋仲になり、結局は本能に負けた彼女に殺されかかった過去を持つクボは「異種族の友情など子供の夢想」と切り捨てるが、理性を失ったはずのフィーネがなおモモを守ろうとする様を見て衝撃を受ける。自分の失った理想をモモとフィーネの間に垣間見たクボは戦意を無くし、2人が去っていく様を力なく見守る。
追手の一員としてここに来ていたノバラとも決別したモモは、満身創痍のフィーネと最後の時を過ごす。奇跡的に自我を取り戻したフィーネは、「かつての友の代わりだと思っていたのに、今は君を誰よりも大切だと感じている。君は強い女の子だ」と心からの敬意と称賛の言葉を残して息を引き取る。歌と共に彼女を見送ったモモは、フィーネとの約束となった「本物の楽園」を探して新たな旅に出発する。
時は流れ、どことも知れぬ花咲き誇る麗らかな庭で、人間とヴァンパイアが平和に寄り添いながら暮らしていた。その中心には、ヴァンパイアの赤ん坊を抱いて幸せそうに微笑む成長したモモの姿があった。“探す”のではなく、モモが自らの手で“作り出した”新たな楽園は、人類とヴァンパイアの希望となって穏やかに時を紡いでいく。
『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の登場人物・キャラクター
モモ
CV:潘めぐみ
都の司令長官ノバラの娘。「天敵」だと教え込まれているヴァンパイアに対しても敵意を持ち切れない優しい心の持ち主で、敵性文化として禁止されている音楽に強い興味を抱いている。フィーネによれば歌が上手。
フィーネと友人になり、「楽園」を目指す旅に済し崩し的に出立する。
フィーネ
CV:小林ゆう
ヴァンパイアの若き女王。政治的な活動には興味を示さず、ヴァンパイアの有力者たちからは名ばかりの存在だと見なされている。振る舞いは朗らかかつ紳士的で、若手のヴァンパイアたちには人気がある。
かつて人間の友を持ち、人とヴァンパイアの共存を願っていた。しかしそれは自分と相手の周囲の者たちの敵意と憎悪によって踏みにじられ、この里の心の傷からますます女王としての職務を放棄するようになる。
モモにかつての友の面影を感じ、彼女と共に「楽園」を目指す旅に出立する。これは緩慢な自殺のようなもので、最終的に破滅することも心のどこかで覚悟していた。しかし「巻き込んだ以上はモモを守らなければ」という自身の意志と、そのモモの思っていた以上の心の強さにより、2人の旅は人とヴァンパイアの新たな道を切り開くものとなる。
ノバラ
CV:深見梨加
モモの母。都の司令長官でもあり、人間側の重要人物。自分の娘がヴァンパイアに拉致されて逃避行しているという状況に親として恐慌し、司令長官としての立場から断固としてこれを許さず、執拗に追手を送り出す。
クボ
CV:東地宏樹
モモの叔父。フィーネに拉致された(ことになっている)モモを救出するため、追撃隊を率いて彼女を追う。腕利きぞろいの追撃隊の中でも実力は頭1つ抜けており、消耗した状態ではあったが怪物化したフィーネを刀1本で追い詰めた。
過去にヴァンパイアの女性と恋仲になり、一緒に暮らしていたが、結局は血を求める本能に負けた彼女と死に別れた過去を持つ。
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目次 - Contents
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の概要
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』のあらすじ・ストーリー
- 冬の時代と「楽園」
- モモとオルゴール
- 「楽園」を目指す旅路
- 2人の旅の終わり
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の登場人物・キャラクター
- モモ
- フィーネ
- ノバラ
- クボ
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の用語
- ヴァンパイア
- 薬/秘薬
- 「楽園」
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- モモ「私はフィーネと生きる!」
- フィーネ「お前が私を救ってくれた」
- 『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』の主題歌・挿入歌
- ED(エンディング):豊田まり『Oratio Nocturna~夜の祈り~』