イカゲーム(韓国ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『イカゲーム』とは、Netflixでシリーズ配信されている韓国発のサバイバルホラードラマ。全世界視聴ランキング1位を維持し、史上最長の1位継続記録を達成した。人生逆転をかけて、勝てば大金を手にできる奇妙なゲームへの参加を申し込んだプレイヤーたち。しかし、彼らを待ち受けていたのは、昔ながらの遊びを取り入れたデスゲームだった。タイトル名が日本語流行語大賞にノミネートされるほど人気作となった本作は、全世界でも爆発的な人気を博し、各国の有名メディアに「全世界的社会現象」とまで評されるようになった。

『イカゲーム』の概要

『イカゲーム』とは、Netflixで2021年9月16日からシリーズ配信されている韓国発のサバイバルホラードラマ。原作・監督・脚本をファン・ドンヒョクが手掛けた本作は、公開1週間後の同月23日から11月7日までの46日間連続で全世界視聴ランキング1位を維持し、史上最長の1位継続記録を達成した。

『イカゲーム』誕生のきっかけは2008年のリーマン・ショックを始めとした世界的な金融危機であった。ファン・ドンヒョク監督は大きな経済的打撃を受けて家族共々困窮し、マンガ喫茶で『バトルロワイヤル』や『ライアーゲーム』、『賭博黙示録カイジ』などの作品を読み漁るうちに、自分もこのような一発逆転をかけたサバイバルゲームがあれば参加するだろうかと考えた末、子供時代の遊戯である『イカゲーム』を基に本作の構想を練り上げるに至った。その後、『イカゲーム』の脚本をエンタメ関連の業者に持ち込んだものの、現実味がなくグロテスクであることを理由に一旦は受け入れ拒否される。しかし、2011年の『トガニ 幼き瞳の告発』や、2014年の『怪しい彼女』、2017年の『天命の城』と韓国で3本のヒット作を残したことで、実力派の映画監督として注目されるようになる。そして満を持して本作の脚本をNetflixに持ち込んだところ、2019年9月に正式にオリジナルシリーズとして製作されることが決定した。

本作のメインキャストは、イ・ジョンジェ(サン・ギフン役)、パク・ヘス(チョ・サンウ役)、ウィ・ハジュン(ファン・ジュノ役)、チョン・ホヨン(カン・セビョク役)、オ・ヨンス(オ・イルナム役)、 ホ・ソンテ(チャン・ドクス役)、イ・ユミ(ジヨン役)。イ・ジョンジェは、Netflixでも配信されている『補佐官〜世の中を動かす人々〜』などに出演しており、「百想芸術大賞」で何度も受賞歴のある実力派の俳優。また、プレイヤーとゲームのホストという2つの顔を持つオ・イルナム役で名演技を披露したオ・ヨンスは、本作がきっかけとなって2021年の第79回ゴールデングラブ賞にて「TVドラマ部門助演男優賞」を受賞するに至っている。

韓国のサバイバルホラー作品としては『生きている』以来の超大作となった本作。その魅力は、まずその不可解なネーミングにある。『イカゲーム』とは、イカの陣を描いて攻守2チームに分かれて行う陣取りゲームのことを指している。韓国や朝鮮の視聴者にとっては子供時代の遊戯としてなじみ深く、それ以外の国の視聴者にとってはあまり馴染みのないゲーム名であるからこそ、それがどのようにサバイバルホラーとして結実するのかという不可解な謎が多くの視聴者の興味を引き付けた。加えて、作中で行われるゲームは、第1ゲームの「だるまさんがころんだ」を始めとして世界中の誰もが子供時代に経験したことのある純粋な遊戯である。しかしながら、クリア条件を満たさないと即座に死に至るという緊迫したホラー要素が持ち込まれている。このように、子供時代の純粋な遊戯を生死をかけたデスゲームに変じさせているという斬新さが、新感覚のサバイバルホラーとして業界に新たな風を吹き込んだ。さらに、デスゲームが繰り広げられる施設の謎や運営サイドの秘密がストーリーが進んでいくごとに徐々に明かされていき、各話で張られた伏線が最終話で綺麗に回収されるというストーリー構造も、視聴者を飽きさせない秘訣だ。

シーズン1で人気作となった本作。2021年11月にシーズン2の制作が、2022年6月には、456人のプレイヤーが456万ドルの賞金を懸けて争うリアリティー番組『イカゲーム:ザ・チャレンジ』の公開も決定している。本作の爆発的人気により、出演俳優のSNSのフォロワー数は最多で約2300万人近く増加するに至ったほか、不況だったコスプレ市場も好況へと転じるに至った。また、ウォールストリートジャーナルやNBC等の有名メディアは本作を「全世界的社会現象」とまで評するようになるなど、本作が世界に与えたインパクトは計り知れない。

『イカゲーム』のあらすじ・ストーリー

デスゲームの始まり

主人公の中年男性ソン・ギフンは数年前に事業に失敗して多額の借金を背負い、無職のままギャンブルに依存して実家で自堕落な生活を送っていた。元妻とは離婚して別居しており、高齢の母親が一日中露店商を営むことで何とか二人での生活を切り盛りしているため、到底娘のガヨンを十分に養えるだけの資力などなかった。全くと言っていいほど運がなく、借金を返済するために競馬で儲けた456万ウォンさえ帰りにスリに奪われてしまうという有様。借金取りから脅迫を受けながら返済を強く迫られ、面会交流の際にガヨンの前で醜態をさらした彼は、元妻からも愛想を尽かされて以後の面会交流を拒絶されてしまう。彼が落胆していると、地下鉄で整った身なりをしたリーマン風の男性ヤン・ボクナムと出会う。大金の入ったアタッシュケースを手にしているボクナムは、10万ウォンをかけておはじきをしないかと勝負を持ち掛けてきた。ただし負ければ体で払ってもらうという彼との勝負にギフンは臨むが、何度も負けてビンタを喰らってしまう。やっとの思いで勝利したギフンは、10万ウォンと共にとある奇妙なゲームへの招待状を受け取った。

彼が招待状に指定された通りの日時と場所で待っていると、いきなり気絶させられて黒塗りの高級車でどこかへ連れ去られてしまう。目を覚ますと、そこは彼と同様にゲームに招待されて誘拐された455人のプレイヤーが集まるゲーム会場だった。いつの間にかプレイヤー全員は緑色の制服に着替えさせられており、その中にはギフンの幼馴染のソン・サンウや、脳腫瘍を患って余命わずかな老人オ・イルナム、ギフンから456万ウォンを盗んだ脱北者カン・セビョクなどがいた。プレイヤーが待機していると、ステージ上に「◯」「□」の仮面を被り、統一されたピンク色の制服を着た進行係が現れた。「□」の仮面を被った進行係は、プレイヤーたちはこれから六日間で六つのゲームに参加することになり、勝者には巨額の賞金が支払われると説明する。プレイヤーたちは、知らない間に誘拐、監禁されて所持品も没収されている事や進行係の正体がわからない事について口々に異議を唱えるが、進行係は秘密保持のためという回答に終始していた。

第1ゲーム会場となる運動場に案内されたプレイヤーたちは、ゲームの内容がだるまさんがころんだであると知らされる。ルールは、鬼役の巨大な女の子を模したロボットであるヨンヒ人形に動きを感知されずにゴールラインを超えればクリアとなり、動きを感知されるか制限時間を超えると脱落と言うシンプルなものだった。背番号324番の金髪の男性プレイヤーが一番前に走り出たが、ヨンヒ人形の内蔵カメラに動きを感知され、センサーと連動していた自動銃で射殺されてしまう。脱落が即ち「死」を意味することを知らされていなかったプレイヤーたちはパニックに陥り、会場外に逃亡しようとした者は全員射殺されてしまった。ゲーム続投を選んだプレイヤーたちも、動きを感知されたり制限時間内にクリアできなかったりしたために多くの者が射殺された。ギフンは途中で背番号199番の外国人男性アリ・アブドゥルの助力も得ながら制限時間ギリギリでクリアすることができたが、脱落者はプレイヤー総数456人のうち255人にも上った。

第1ゲームを終えてようやくギフンたちは参加したゲームがデスゲームであることを認識し、その進行の是非を巡ってプレイヤー間で論争が勃発する。一人脱落していくごとに1億ウォンが賞金ボックスに加算されていくという一攫千金が狙えるシステムに、続投を希望するプレイヤーも多くいた。結局プレイヤーたちはゲームの同意書第3項にあった「過半数の同意で中断可能」というルールを適用し、残った201人でゲーム中断についての投票を行うこととなった。背番号の大きい順に投票していき、賛成票と反対票が100対100で割れ、最後の一人となった1番のオルナムが反対票を投じたことで、ゲームは中断されることになった。

ゲームの再開

ゲームから解放されたプレイヤーたちは、思い思いに各自の日常生活に戻っていった。ギフンが故郷に戻ると、働きづめの生活を送っていた母親が倒れてしまった。彼女は重度の糖尿病を患い、足が壊死して歩くのも困難な状態であることを隠していた。緊急搬送先の病院で直ちに入院が必要だと医師に告げられるが、入院費用を賄えるだけの資金がないため断念してしまう。その後コンビニで会った謎の高齢男性から花束を買い取ると、付属品のメッセージカードの裏に招待状が挟まれていた。彼はこれを手掛かりに警察に赴いて拉致、監禁されたことを訴えるが、相手にされない。対応に当たったのは韓国警察のファン・ジュノ刑事であった。彼は、行方不明になった兄ファン・イノの行方を捜しており、兄の住んでいた大学生寮で遺留品を整理していた際に見つけたカード状の物体と、ギフンが持ち込んできた招待状が類似している事に気づいた。ギフンは母の入院費用を得るためにゲームへの再参加を決意した。兄の行方を捜すため潜入捜査に踏み切ることを決意したジュノは、ギフンの後をつけていく。

一方、ソウル大を主席で卒業後に証券会社でチーム長を務めていたサンウは、顧客の金を使った先物取引に失敗して多額の借金を背負い、横領事件の容疑者として追われる身となっていた。また、自分が背負ってしまった借金の担保として、母親が市場で営む魚店に無断で抵当権を設定していた。そうとは知らない彼の母親は、仕事で忙しくて戻ってこれないと言う息子のことを心から誇りに思い、周囲にも自慢していたが、彼を捜索する警察が魚店に現れたことで絶望する。後ろめたさから母親にも顔見せできず、行き場を失ったサンウは、ホテルの一室で練炭自殺を図ろうとしていた。その最中に来客があり、彼が確認しに行くと既に客は立ち去った後であったが、そこにはゲームへの再招待状が置かれていた。ゲームから脱却しても生き地獄だと悟った彼は、再起を図るために命を懸けて再参加を決意する。その他、一緒に脱北した弟の養育資金を必要とするセビョク、解放後に未払賃金を回収するため日雇主の工場長に対し強盗致傷の罪を犯し追われる身となったアブドゥル、やくざ組織の金を横領して追われる身となっていたチャン・ドクスらも再招待状を受け取り、ゲームへの再参加を決意した。

各々の事情からゲームに参加したのは、201人中187人であった。ジュノはギフンの後を追ってゲームの運営サイドに潜入することに成功する。ゲームを有利に進行させるためにギフンはチームを組むことにし、サンウ、オルナム、アブドゥルらと結託した。一方、セビョクは自称貧乏シングルマザーのプレイヤーであるハン・ミニョと協力してトイレの天井から進行係の偵察へと向かう。天井から進行係がいる調理室を覗くと、大鍋の中で大量の砂糖を煮詰めていた。彼女からその情報を聞き出すことに成功したサンウは、ゲーム会場で丸、四角、星、傘の図形を見たことで、第2ゲームがカタヌキであると予想する。型を抜きやすい単純な図形の方が良いと考えたが、そのことをサンウらには明かさなかった。図形を選ぶように指示されると、サンウはそれぞれ分かれた方がよいと言い、サンウが三角、アブドゥルが丸、オルナムが星、ギフンが傘を選んだ。サンウが難なくクリアしていく中、複雑な図形を選んだギフンは図形を折らずに型抜きするのに苦戦する。彼は機転を利かしてカルメ焼きの接合部分を舐めることで砂糖を溶かし、制限時間内に何とかクリアした。型抜きに失敗した者はその場で進行係に射殺されていく。抵抗を試みた背番号119番の中年男性が「□」の仮面をつけた幹部の銃を奪って人質に取って仮面を外すよう促したが、彼が若年であったことにショックを受け、頭を撃ち抜いて自殺する。襲われた幹部も自分の正体を明かしたために黒い仮面を着けたフロントマンに射殺された。

第2ゲームでは79人が脱落し、クリアした人数は108人となった。その後少ない食事をめぐってドクスと背番号271番の男性プレイヤーとの間で争いがおき、ドクスが彼を蹴り殺したことで生存者は107人へと減少する。一方、ジュノは射殺された幹部の「□」のマスクを身につけ、幹部になりすまして運営サイドを捜索していく。進行係の一部は、医師資格を持つ背番号111番のビョンギと通謀して脱落者の臓器密売に手を染めており、その見返りにビョンギは次のゲームに関する情報を受け取っていた。それによると、待機室で消灯時間を過ぎた後、生き残りをかけてプレイヤー間で乱闘事件が起きるため、強いプレイヤーと手を組んでいた方が得だという。ビョンギは助言通りに情報と引換えにドクス一派に取り入る。また、狡猾なミニョはドクスと性行為をしてドクス一派に取り入った。消灯時間を過ぎた頃、待機室では進行係の予想通り乱闘事件が勃発する。ドクス一派が他プレイヤーを襲撃したことがきっかけとなり、次々とプレイヤーが撲殺されていった。オルナムがベッドの上に立って「やめてくれ」と叫んだことでフロントマンの指示により暴動は鎮圧される。セビョクはドクスに襲撃されたが何とか逃げ延び、身を守るためギフン一派に属することになった。この事件で27人が死亡し、プレイヤー数は80人にまで減少してしまう。

ゲームのチーム分け

乱闘事件の興奮冷めやらぬ中三日目の朝を迎え、指示係により三日目のゲームに向けて10人ずつのチームを作るよう指示される。セビョクを加え5人になったギフン一派は、一人ずつ新規メンバーを加えることに決め、セビョクはあぶれていた背番号240番の女性プレイヤーのジヨンを誘い入れた。ところがあと一人が集まらず、ちょうどドクスに裏切られてドクス一派から省かれたミニョが乱入してくる。その後、ゲーム内容が綱引きであることが知らされた。具体的には二つのチームがタワーの両端に上り、10人全員が綱と自分の両手を手錠でつなぎ、負けたチームは地上へと転落するというものであった。そのため、力の強い男性メンバーが多いチームが当然有利となり、メンバーに力の弱い女性三名と老人一人がいるギフン一派は窮地に立たされる。力自慢のメンバーを集めたドクスらが力で勝ち抜いていく中、ギフンらは力の弱さをイルナムの知恵とギフンの機転によって補い、何とか勝ち残った。プレイヤーの半分に相当する40人が脱落し、残りプレイヤー数は40人となった。

三日目の夜の襲撃に備え、ドクス一派はバリケードを作って二人ずつ交代で見張り役をつけるという対策を施したが、その日はドクス一派が襲撃してくることはなかった。一方、進行係の一部と内通していたビョンギは、進行係が次のゲームの情報を提供しなくなったことに激高し、乱闘を起こす。騒ぎを聞きつけた他の進行係が駆け付けたことで、彼らの不正が明るみに出た。フロントマンはゲームの平等が害されたとして、関係者全員を射殺して遺体を見世物にする。一方、ジュノは進行係の一人からフロントマンの部屋にプレイヤー名簿があることを聞き出して射殺すると、その部屋に潜入する。フロントマンはジュノから殺された進行係2名が行方不明となっている事を知り、彼を探し始めた。同じ頃、優勝者リストを見つけたジュノは、実兄イノが2015年に開かれたゲームに背番号132番で参加して優勝していたことを突き止める。

一方、四日目を迎えたプレイヤーたちは、ビョンギが処刑されたことで残り39人になった。第4ゲームの会場に案内されると、二人一組のペアを作るよう指示される。今度も協力プレーだと踏んだプレイヤーたちは、自分のベストパートナーとペアを組み始めた。頭脳派のサンウは力の強いアブドゥルと、セビョクは同年代のジヨンと、ドクスは一派の一人である背番号278番のギャングとペアを組んだ。ギフンもペアを見つけようと彷徨っていると、62番の男性プレイヤーに誘われる。彼は数学教師で計算ができ、日頃サッカーをしているため体力もあることなどを話して自分の有用性をアピールした。そして、残りプレイヤー数が奇数であることから、イルナムの方を横目に見てあぶれるのはあの老人だと言った。ギフンはその男性とペアを組もうかと悩むが、イルナムとの友情を捨てきれず、座り込んでいた彼に手を差し伸べる。結局ミニョ一人がペアを組めずに余ってしまい、他のプレイヤーが会場に案内される中、彼女はどこかに連れ去られてしまった。

会場に案内されたプレイヤーたちは、第4ゲームの内容がビー玉遊びであることを告げられる。ギフンとオルナムは、力を使う遊びでなかったことに安堵し、同盟を結ぶパートナーという意味合いをもつカンブになることを誓った。しかし、彼らの思惑とは裏腹に、今回は協力プレーではなく、ペアを組んだ二人で勝負するというルールとなっていた。相手のビー玉を全て奪った者が勝者となり、その方法は暴力以外ならペアの間で自由に決めてよいという。ただし、勝負しないと言う選択肢はなく、30分以内にペア二人ともが勝利条件を充たしていない場合は両方とも脱落扱いとなる。ここまで説明を受けたプレイヤーたちの間には、どちらか片方が死ぬという残酷な現実を突きつけられたことで重苦しい雰囲気が漂っていた。

アブドゥルと勝負することになると知ったサンウは、彼との賭けに何度も負けて激高して彼を罵倒する。土下座して勝負せずに両方とも生き残れる方法があると嘘をついて彼に懇願し、ビー玉を一旦預けてプレイヤーの年齢を確認してくるように言う。これに従ったアブドゥルからビー玉を入れた袋を預かった際に中身全部を小石にすり替え、彼がその場を離れた隙にゲームクリアした。ドクスは、それまで仲間だったはずのペアの男に「都合がいいからお前を利用していただけ」などと罵倒されていたが、ビー玉を掘った穴に投げ入れることができればビー玉を獲得できるというゲームで勝利し、ゲームクリアした。友情プレーで勝負を乗り切ろうと考えていたセビョクとジヨンの二人は、なるべく長く二人で過ごすために制限時間ギリギリまで会話をして暇を潰していた。お互いにゲームに参加するまでの波乱万丈な人生について語ると、一発勝負でより遠くにビー玉を投げた方が勝者となるという単純なルールでゲームをすることに決める。最初にセビョクが投げた後、ジヨンはわざとビー玉を足元に落としてセビョクに勝ちを譲った。動揺して涙ながらにやり直しを迫る彼女に対し、ジヨンは、自分は死ぬつもりでゲームに参加しており、弟を助ける目的があるセビョクこそ生き残るべきだと語った。脱落が決定したジヨンから「必ず生きて出てね」と激励を受けたセビョクは、せっかく出来た親友に向けて進行係が銃を撃つ音を耳にしながら、悲痛な気持ちで会場を後にした。

一方、ギフンはオルナムに痴呆の症状が出て、肝心なところで勝負ができなくなってしまったことに苛立ちを隠せないでいた。制限時間が迫る中、勝負しようという彼の提案を拒んでうろつく彼を引き留め、ようやくゲームを始めることに成功する。彼は、差し出された相手の手の中にあるビー玉の数を言い当てれば、そのビー玉を獲得できるという条件の下でゲームを始めた。しかし、勝負に負けて自分の持っていた最後のビー玉を引き渡さなければならなくなった彼は、オルナムが痴呆を発症しているのをいいことに自分が勝ったと嘘をつき、オルナムからビー玉全てを回収しようとする。最後の1個を手にしようとしたところ、オルナムは痴呆のふりをしていたことを暴露し、ギフンが嘘をついたことを指摘する。項垂れて後悔する彼に向け、オルナムは「私たちはカンブだ」と言って彼を抱きしめると、最後のビー玉を手渡して脱落した。

最終的に第4ゲームの参加者38人のうち22人が脱落し、残りプレイヤー数は16人へと減少していた。ゲームに不参加で脱落したかに思われたミニョであったが、運営の意向により待機室で生き残っており、彼女を合わせると17人となった。しかし、ビー玉遊びで最愛の夫を亡くして絶望していた背番号69番の女性プレイヤーが首つり自殺したことで、結局残りプレイヤー数は16人となった。時を同じくして、運営サイドではフロントマンを通じてウサギの仮面を被ったオーナーの下に外国からVIPたちが到着したとの知らせが入っていた。ジュノは、VIPルームから出てきたホストを人質にとってホストに扮し、さらに捜索を進めていた。

終わりと始まり

第5ゲームへと勝ち進んだプレイヤーたちは、衣装部屋に案内され、1~16までの数字が振られたユニフォームをどれか選んで着替えるよう指示される。サンウが14番、セビョクは15番を選び最後に1番と16番が残ると、ギフンは背番号96番の男性プレイヤーに1番のユニフォームを譲ってほしいと懇願され、16番のユニフォームを身につけることとなった。会場に案内されたプレイヤーたちは、第5ゲームが飛び石渡りであることを知らされる。プレイヤーたちの目前にある左右2本のガラス板の橋があり、制限時間16分以内に1マスおきに設置されたガラス板を渡り切らなければならないという内容だった。一歩進むごとに右か左のどちらかのガラス板を飛び石の要領で渡らなければならず、ガラス板には通常ガラスと強化ガラスの2種類があって、通常ガラスを踏んだ場合は板が割れて墜落死する仕組みとなっている。そして、ユニフォームの番号は橋を渡る順番を意味しており、2種類のガラス板は一見しても区別がつかないような代物であるため、番号が若い者ほど不利になるようなルールだった。

VIPたちが観戦する中でゲームは開始し、1番のユニフォームのプレイヤーから次々とガラス板を踏み割って転落死していった。前のプレイヤーが全員死亡して一番先頭になったドクスは立ち止まって後続のプレイヤーを道連れにしようとする。彼の後ろにいた背番号322番の男性プレイヤーのチョン・ミンテは後ろにいたミニョに突き飛ばされ、ドクスと同じ板に乗り入れたところを突き飛ばされて墜落死する。ミニョはドクスに裏切られたことを恨んでおり、ドクスより先行すると嘘をついて彼と同じ板に乗り入れると、彼を道連れにして墜落死した。33年のガラス製造業者としての経歴をもつ背番号17番のイ・サンヒは光の当たり具合で強化ガラスを見分けることができたため、後続のサンウらは順調に飛び進むことができた。しかし、ガラスを見分けるプレイヤーがいることをVIPたちが面白く思わなかったことから、運営サイドは照明を落としてしまう。制限時間が1分を切り、ガラスを見分けられなくなったサンヒに業を煮やしたサンウは、彼を後ろから突き飛ばした。サンヒは最後の通常ガラスを突き破って墜落死し、後続のセビョク、ギフンはギリギリ橋を渡り終えてクリアした。その後全てのガラス板が爆破され、セビョクは腹にその破片が突き刺さって重傷を負う。

第5ゲームでは13人が脱落し、残ったプレイヤーはサンウ、セビョク、ギフンの3人となった。ギフンはサンヒを突き飛ばした件についてサンウに詰め寄るが、彼はギフンに向けてお人好しが過ぎると言って反論し、二人の間に険悪なムードが立ち込める。その後、最終ゲームを前にして、三人は豪華なディナーを振る舞われた。セビョクは重傷を負ったためにまともに食事ができず、その様子をサンウに察知される。食事後に進行係から食事に用いたステーキナイフを渡された三人は、それを最終ゲームで使用することになることを把握した上で、待機室のベッドへと向かっていった。

同じ頃、ジュノはゲイのVIPに見初められて仮面を外すよう促される。控室でVIPに正体を明かされそうになったジュノは、彼を殺して潜水具を身につけると、開廷洞窟に潜って島外へ逃げ延びようとする。しかし、VIPを殺したことをフロントマンに知られて追跡され、ついにフロントマンに見つかってしまう。ジュノは追跡から逃げるように別の島へと移動するが、ボートでやってきたフロントマンと進行係に崖の上に追い込まれてしまった。フロントマンが初めてマスクを外して素顔を見せると、それはジュノの実の兄ファン・イノだった。行方を捜していた兄がゲームの支配人となっていたことにショックを受け、茫然と立ち尽くしてしまう。イノは彼に投降するよう命じたがこれに応じなかったため、彼の右肩を打ち抜き、ジュノは崖下へと転落していった。

待機室では、ギフンが負傷したセビョクを守ってサンウに対抗するため、彼女に手を組むことを提案していた。重傷で意識がもうろうとし始めていた彼女は、「早く家に帰りたい」と弱音を吐き、「生き残った方が互いの家族の面倒を見る」とギフンと約束した。彼女の容体が悪化していることを憂いたギフンは、進行係に彼女の治療をするよう求める。しかし、彼がスタッフを呼びに行った一瞬の隙をついて、サンウはセビョクの首にナイフを突き立てて殺害してしまった。怒りと興奮が抑えきれなくなったギフンはサンウに襲い掛かるが、入ってきた進行係に阻止されてしまった。

翌日、VIPが観戦する中、最終ゲームとなるイカゲームが実施された。その内容は、三角・四角・丸で形作られたイカ型の陣内で攻守に分かれて行う陣取り合戦だった。イカの頭部に描かれた円形のゴールゾーンに攻チームが踏み込めば攻チームの勝利となり、陣外に攻チームが押し出されてしまうと守チームの勝利となる。陣取りの方法に制限はなく、暴力も許されていたため、どちらかが続行不能になった場合、他方の勝利が確定する。続行不能とは、即ち死を意味していた。「攻」側をギフンが選択したことから、「守」側にはサンウがつくこととなり、最後の死闘がスタートする。賞金よりも幼馴染のサンウの命を重く見たギフンは、二人でゲームの中断を申し入れることを提案した。しかし、後に引けなくなっていたサンウはこれを拒絶し、陣内に立ち入ったギフンを殺しにかかる。ギフンは何とかナイフを取り上げてサンウを戦えない状態にまで追い込むと、再度ゲームの中断を申し入れることを提案した。しかし、サンウは母親のことを彼に託すと、ナイフで自分の首を掻き切って自殺してしまった。ギフンは彼を抱きかかえて泣き叫ぶと、亡くなっていった犠牲者たちの想いを胸に、ゴールゾーンへと足を踏み入れた。

ギフンが銀行口座を確認すると、456億ウォンの賞金が振り込まれていた。彼は賞金を手にようやく帰宅するが、閑散とした室内を歩き回っていると、そこには病死して冷たくなっている母親の姿があった。幼馴染も助けようとした母親をも失って悲しみに明け暮れるギフンは、賞金に一切手をつけることなく、ゲーム参加前よりもさらに自堕落な生活を送っていた。1年後、彼の下に運営から招待状が届く。クリスマスイヴの夜、指定された場所にゲームの主催者がいるというため彼が赴くと、そこには第4ゲームで射殺されたはずのイルナムの姿があった。彼は脳腫瘍であと数時間の命の為、満を持して彼に正体を明かしたのだと言う。彼は窓の外を見て、雪の降る街角で倒れている男が夜中の12時を過ぎても生きていられるか賭けをしようと持ち掛けたが、憤ったギフンに「お前は誰だ」と問い詰められる。彼は、自分が事業に成功を収めて大金を手にした大富豪で、経済的安定と引き換えに退屈な日々を送っていたことから、刺激を求めてゲームを開催したのだと告げた。そして、12時を過ぎる前に街角で倒れていた男は警察に救助され、ギフンは賭けに勝利する。イルナムは頻りに「せがれが」と言って息子がいることを吐露し、その誕生日が「今日」である24日に近い事などを話していたが、12時ちょうどに息を引き取った。

多くの犠牲者を出したデスゲームが金持ちの娯楽でしかなかったと知ったギフンは、その日から何かが吹っ切れたように賞金を使って活発に動くようになった。手始めにセビョクに伝えられていた彼女の弟の養育施設を訪ねると彼を引取り、露店でたい焼き屋を営むサンウの母親に彼と大金を渡して故郷を後にする。こうして残された家族の面倒を見るというセビョクやサンウとの約束を果たして過去と決別した彼は髪を赤く染め、娘のガヨンに会うためロサンゼルスに行くこと決意する。空港に向かう途中で、1年前に出会ったボクナムが同じ場所で男性におはじきの勝負を仕掛けてゲームに勧誘しようとしているところを目撃する。再びデスゲームの悲劇が繰り返されようとすることを知った彼は、ボクナムを追いかけるが、彼は地下鉄に乗って逃げてしまった。彼が残していった招待状を手にした彼は、飛行機に乗ろうとしていたところを引き返した。多額の賞金を手にし、多くの命が目の前で失われていく光景を目にしてきたギフン。しかし、それでもなお彼は残虐なゲームを繰り返すことができる運営サイドへの執着を捨てきれなかった。そして彼は、新たなゲームへ参加することを決意するのだった。

『イカゲーム』の登場人物・キャラクター

主要人物

ソン・ギフン(演:イ・ジョンジェ)

主人公

日本語吹替:坂詰貴之
背番号456番のプレイヤー。数年前に事業に失敗して多額の借金を背負い、妻とは離婚して娘とは離れ離れになった。生活の面倒を見てくれている母親が倒れたことで、人生逆転を狙うためにイカゲームへの参加を決意した。幼馴染のサンウを含めた多くの犠牲者の命と引換えに多額の優勝賞金を手にして帰宅するが、既に母親は病死しており、過去と決別して生きていくことを誓う。

チョ・サンウ(演:パク・ヘス)

日本語吹替:中川慶一
背番号218番のプレイヤー。ギフンの幼馴染で、ソウル大卒のエリート。証券会社でチーム長を務めていたが、顧客の金に手をつけた挙句先物取引で失敗して多額の借金を背負い、横領の容疑で追われる身となった。人生に絶望して練炭自殺を図ろうとするが思いとどまり、借金返済のためにイカゲームへの参加を決意した。

ファン・ジュノ(演:ウィ・ハジュン)

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