ガンダム外伝の意外な面白さ

筆者本人は70年代生まれで、ガチガチなガンダム原理主義(UCシリーズしか認めない主義)であるわけだが、どうにも近年のガンダムはリメイクと外伝が面白いらしく、人の勧めもあり、愛読に至る。
中でもいわゆる70年代のガンダム好きのおっさんが面白いと思える作品を紹介したい。

作品の独自解釈が面白い。『カイ・シデンのメモリー』

カイ・シデンのメモリーのシリーズは計四冊。Ζガンダムの時のものとそれ以降のものに分かれる。
ジャーナリストとなったカイ・シデンが一年戦争の「正体」を探り、それにまつわる人物にインタビューをしていくエピソードが綴られる。
中でも特筆すべきが、「アムロがディジェに乗った理由」である。おそらくおもちゃ屋の都合でしかないモビルスーツに、当時の政治背景と状況証拠からここまで具体的な理由に昇華した作者に敬意を払いたい。
他にも「V作戦の本当の目的」「初心者のアムロがガンダムを上手に使えた理由」など、考えさせるところも多い。

ゲームのコミカライズに光あり。機動戦士ガンダム戦記。

元々は3Dアクションゲームであった『ガンダム戦記』(2002 PS2)のコミカライズであったが、こちらはゲームと異なり不殺敢行。戦争という特殊な状況下で敵同士であっても信頼できる関係の構築をテーマに描かれている。
ありがちな話ではあるが、同時に王道でもあるため、普通に面白く読める。

外伝の外伝 それでもまとめた努力は素晴らしい 『GUNDAM LEGACY』

2000年代にでたガンダムのゲーム、『ガンダム戦記』『宇宙閃光の果てに』『ジオニックフロント』のキャラクターを一つの物語にまとめて出して、かつ整合性が残ったままで書いた、外伝の外伝エピソード(三巻に収録)。それ以外のものも少なくないので、これらのゲームに思い入れがある場合、一読するのもいいかもしれない。尤も、2005年のカードビルダー(アーケードゲーム)あたりの総括と言えなくもない。
個人的には『戦慄のブルー』あたりを出してほしかった。

ブライトは今後も不幸な人生になります。『虹にのれなかった男』

ブライトが参謀本部に椅子を用意されなかった理由がてんこ盛り。
『ガンダムUC』でも、苦労人ポジションであることには変わりないが、この後にもっときつい不幸が待っていることが「確定」している男の話です。息子のことですけどね。
確かに歴代艦長、部隊を率いた人としては最終的な地位が低すぎるとは思いますが、その理由が明白になる一冊。
頼まれたんなら仕方がない(笑)

最終巻までメカバトルなし。それでも話は突き抜けている。『ギレン暗殺計画』

ガンダムはメカニックで語られることが多いロボットアニメだが、この作品…主人公が刑事(ジオン所属)。とある事件の捜査からギレン暗殺への糸口と、それに隠された壮大な謀略を暴くミステリー作品である。
アムロもガンダムも出てこないし、モビルスーツでさえ終盤に出てくるぐらいの「ガンダム」外伝作品だが、まぎれもないガンダムに関わる作品である。逆にガンダムを構成する要素は無数にあると実感させられた作品でもある。

兵器に思想あり。アニメでは決して語れないよもやま話。『ジョニー・ライデンの帰還』

前作とは打って変わって、メカのよもやま話。ジョニー・ライデンの名を知らない旧世代のガンダムファンいないであろうが、その設定をどこまでも追及した話。今回はメカニックの話満載です。
ガンペリーの設計思想
アッガイの設計の秘密
ジオン水陸両用モビルスーツがその後引き継がれなかった理由
ジオンの技術が連邦より10年進んでいた理由
その技術が流出した過程
などなど
ガンダムの世界観を再構築していく物語が楽しめます。

ガンダムを使った作品は数多くある。『オリジン』や『UC』のようにメインストーリーを再構築したものの魅力も捨てがたいが、あえて外伝をふれることで、ガンダムの世界観が再構築されるかもしれない。ガンダムの構成要素はメカニックや登場人物の魅力、物語の奥深さと様々あるが、語る人が尽きないということこそ、コンテンツが長く続く最大の原因なのかもしれない。

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