異世界おじさん(いせおじ)のネタバレ解説・考察まとめ
『異世界おじさん』とは、ファンタジー風の異世界で大冒険を繰り広げて帰還したおじさんと、彼の甥っ子のユニークな日常を描いた、殆ど死んでいるによるWebコミック。いわゆる「異世界転生物」のお決まりの展開を物語に取り込んだコメディ作品である。
大学生のたかふみは、17年ぶりに植物状態から回復したおじさんの世話を親戚から押し付けられる。面倒に思いつつ病室に通うたかふみだったが、おじさんが昏睡中に本物の異世界で冒険していたことを知って驚愕。おじさんの異世界での経験と技術に興味を惹かれていく。
『異世界おじさん』の概要
『異世界おじさん』とは、ファンタジー風の異世界グランバハマルで大冒険を繰り広げて17年ぶりに帰還したおじさんと、彼の甥っ子であるたかふみのユニークな日常を描いた、殆ど死んでいるによるWebコミック。
いわゆる「異世界転生物」のお決まりの展開を物語に取り込みつつ、現実世界に帰還したおじさんの起こす珍妙な騒ぎを解決していくコメディ作品である。1話ごとに作中で1ヶ月が経過するという明確な時間の流れが存在し、登場人物の年齢や関係もそれに合わせて変化している。アニメ化が決定しており、2022年7月より放送開始となる。
たかふみこと大学生の高丘敬文(たかおか たかふみ)は、17年ぶりに植物状態から回復したおじさんこと嶋㟢陽介(しばざき ようすけ)の世話を親戚から押し付けられる。面倒に思いつつ病室に通うたかふみだったが、おじさんが口にする「昏睡中に本物の異世界で冒険していた」という話が事実であることを、彼がさらりと魔法を披露したことで理解する。
この技術は金になると考えたたかふみは、おじさんに動画配信者になることを勧める一方、彼の語る異世界の話に夢中になっていく。それはよくある異世界転生物のアニメのような華々しいものではなく、無様で、惨めで、しみったれていて、しかしおじさんの自分本位なようで他人を見捨てられない性格が現れた波乱万丈の物語だった。
『異世界おじさん』のあらすじ・ストーリー
異世界からの帰還
おじさんこと、高校生の頃にトラックに跳ねられて植物状態だったたかふみの叔父が17年ぶりに目覚めた。親戚たちからこの世話を押し付けられたたかふみは、面倒だと思いながら彼の病室に赴く。
「17年間、グランバハマルという異世界にいた」と語るおじさんの話を当初は信じていなかったたかふみだったが、彼がグランバハマルで修得したという魔法を見せられたことでその話が真実なのだと理解する。おじさんの処遇を巡って醜く言い争った末に一家離散した自分の家族に見切りをつけ、たかふみは動画配信者としての仕事をおじさんに紹介した上で彼とルームシェアすることとなった。
おじさんがグランバハマルで修得した魔法や集めたアイテムに興味津々のたかふみだったが、特に彼が興味を抱いたのがおじさんの異世界紀行だった。おじさん曰く、「異世界での生活は地獄だった。特にしつこくつきまとっては“勘違いするな”だの“お前のためじゃない”だの言ってくる女がいて散々苦しめられた」らしいが、たかふみからすればそれは好意の裏返し、つまりは“ツンデレ”にしか思えない。
おじさんの記憶を魔法で再現してもらったところ、やはりそのエルフのような容姿の少女は彼に対する分かりやすいほどの好意を発していた。根っからのゲームオタクだったおじさんは、彼女の好意にまったく気づいておらず、あまつさえ女心を逆撫でするようなことばかり繰り返す。それでもその少女ことツンデレエルフはおじさんと一緒に旅を続けていたらしく、おじさんに本気で入れ込んでいたことがうかがえた。無意識に新しい生き方を示したことで、おじさんはメイベルという引きこもりの少女からも慕われていたようで、たかふみは彼らの関係がどのような終わり方を迎えたのかを思い頭を抱える。
たかふみと藤吉の日常
ある日たかふみは、藤吉という名の幼馴染の女性と再会する。久々に懐かしい相手と顔を合わせたことに盛り上がったたかふみは、藤吉を自分の部屋へと招くが、そこで彼女はおじさんと遭遇。見るからに怪しいその言動を警戒し、たかふみに「あの人から離れた方がいい」と深刻そうな様子で忠告するようになる。しかしそのおじさんが魔法でたかふみと藤吉の小学生時代の姿を映像化したり、ツンデレエルフに変身する姿を見て、彼女もまたおじさんが本当に異世界で冒険してきたことを知る。
一方のおじさんは、藤吉がたかふみのこととなるとかなり露骨な反応を見せることに気づき、彼女が甥に恋をしていることを察する。年長者としてこれをフォローしようとするおじさんだったが、彼自身女心については大いに心得違いをしまくっており、その配慮はことごとく的を外す。鈍感青年、幼馴染との関係を進めることに戸惑う娘、それを見守るようで見守れていない中年男の関係は、今日も足踏みを続けるのだった。
グランバハマルでの大冒険
いつしか藤吉はたかふみたちの暮らす部屋に日参するようになり、3人でおじさんの異世界での生活の話を聞いたり、魔法で再現したその映像を見るのが日常となっていく。そんな中、メイベルの先祖が日本から異世界転移した武士で、神から強力な武器を授かったことが明らかとなり、「おじさんも神から何かもらったのではないか」とたかふみは指摘する。
果たしておじさんが転移した当時の記憶を見てみると、実際に神らしき声が「望む力を与える」と話しかけてはいたものの、何を勘違いしたのか中国語を用いていた。当然おじさんには理解できず、当時グランバハマルの人間に魔物と勘違いされて襲われていたために「言葉が分かれば説明できるのに」と考えた結果、“グランバハマルの言葉の翻訳能力”を与えられる。それでも「言葉を話せる珍しい魔物として売り飛ばされた」というおじさんの過去を知り、たかふみと藤吉は彼に深く同情する。しかし怪我の功名というべきか、おじさんの得た“翻訳能力”は精霊に対しても効果を発揮し、彼が強力な魔法使いとして覚醒する要因にもなっていた。ツンデレエルフとの出会いも転移して間もない頃のことで、魔物に追い詰められていた彼女を精霊との対話で得た魔法で助けたのがきっかけだった。
日本に戻る方法を求めるおじさんの旅は、「どれだけ人々のために力を振るっても、顔の醜さのせいで怪物扱いされる」という過酷で悲惨なものではあったが、ツンデレエルフやメイベルのような理解者もまた存在していたことを知り、たかふみと藤吉は少しだけ安堵する。
一方で彼の破天荒な旅路は周囲の人々に少なからず変化をもたらしており、幾度か魔物に襲われているところを助けてはその時の記憶を消して立ち去ることを繰り返していたアリシア・イーデルシアという女性は、「おじさんが魔物を倒した」ことを誰にも説明できなかったためにその手柄を世間から押し付けられたあげく、“勇者”と祭り上げられるようになっていたのだった。
再会と新たな出会い
ある日、藤吉がスマホを忘れていったことに気付いたたかふみは、それを返そうとおじさんと一緒に彼女の大学に向かう。そこで見知らぬ男が藤吉に馴れ馴れしく話しかけているのを見たたかふみは、冷淡な風を装いつつ「あの男がまともな人間かどうか確かめる」と言い出す。おじさんから精霊の加護を受け取ったたかふみが2人の前に降り立って話しかけると、意外にも相手が旧知の仲の人物であることに気付く。藤吉の弟の千秋(ちあき)が、「一緒に家族旅行に行こう」と姉を誘っていただけだったのである。
安堵するたかふみだったが、藤吉は彼が自分のために男を追い払おうとしてくれたことにまんざらでもなさそうな反応を見せる。そこに高校時代からの藤吉の友人である沢江(さわえ)が現れ、彼女の反応を見てたかふみとの仲をあれこれと推測。恥ずかしがった藤吉がたかふみを連れ出すも、沢江はすっかり2人が交際中かその直前の状態にあると思い込む。
旅と戦いの痕跡
たかふみと藤宮は、おじさんのグランバハマルでの冒険譚の記録を映画のようなものとして楽しむことを日常の一部とするようになっていった。
精霊と直接会話できる能力を活かしたおじさんの冒険は、やがてグランバハマルの政情にまで影響を及ぼし、とある王国の国防に関する陰謀へと発展していく。アリシアを勇者に仕立て上げたのも、「勇者が倒れるほどの危機」を演出しようとする騎士団長の思惑あってのことだった。アリシアや彼女の仲間たちと交流し、見捨てておけないと考えたおじさんは、この陰謀を暴こうと王宮に乗り込む。
そこで待っていたのは、騎士に就任したメイベルだった。メイベルは魔法で精神を操られており、命じられるまま暴れ出すが、おじさんはそれが神官長の仕業だと気付いてこれを止める。騎士団長が本気で国を憂い、それゆえにアリシアたちを犠牲にしてでも国を守ろうと考えていたことを知ると、おじさんは彼に「こんなヤツに国を良いようにされたままでいいのか」と問う。部下たちからも「真っ当な方法で国を守っていきたい」と乞われた騎士団長は、ついに重い腰を上げ、神官長を排して自らの力で国と民を守っていくことを決意する。
これを見たおじさんは、「困ったことがあれば自分を呼べ」と言い残し、カッコつけようと竜に変身して飛び去っていく。一方メイベルは、おじさんと知り合いであることが王国にバレてしまい、「正体不明の魔物(=おじさん)と親密な人間は信用できない」と騎士をクビになってしまった。
おじさんはおじさんで、竜に変身した結果精神までその姿に引っ張られ、人間としての自我を失ったまま長い時間を過ごすこととなった。噂を聞きつけたツンデレエルフが正気に戻してくれたはいいものの、自分が一月もの相田まったく風呂に入っていなかったことを知ったおじさんは、体を洗おうと近くの温泉に向かって歩き出す。熟練の冒険者なら一月体を洗わないくらいよくあることだと呆れるツンデレエルフだったが、おじさんから不潔なものを見るような眼差しを向けられると怒り出し、自分も体を洗おうと彼を慌てて追いかける。
噂の温泉は、おじさんと同じように日本から転移してきた人物が建てた宿になっていた。ここにはアリシア一行も泊まりに来ており、襲ってきた魔物を相手に共に奮闘することとなる。そんな中、アリシアはおじさんと急接近し、「また厄介なのが出てきた」とツンデレエルフを激怒させる。
アリシアは魔物に連れ去られそうになっていたところを保護された過去を持ち、それ以前のことを覚えておらず、だからこそ“記憶”をとても大切にしていた。そんな彼女は、おじさんに幾度も記憶を消されてきたことを知ると、自分にはもう2度とそんなことをしないでほしいと頼み込んでくる。
地球へと至る道
その後もおじさんはツンデレエルフやメイベル、アリシアと関わりながら旅を続けていく。おじさんが自分以外の女性とも親しくなっていくことに不機嫌そうな態度を見せるツンデレエルフだったが、彼女の口から「私だけ名前で呼んでもらっていない」という言葉で出てきたことで、まだお互い正式に名乗っていなかったことに気付く。2人は今さらながらに名前を教え合うも、ツンデレエルフの本名はあまりに長くておじさんにはとても覚えられず、その瞳の色に着想を得て“翠(すい)”というあだ名を彼女に贈る。自分だけの呼び名をもらったツンデレエルフは、これにまんざらでもなさそうな様子を見せるのだった。
この頃、おじさんは「地球とグランバハマルの間に通路を作るには、神のような強大な力が必要なのではないか」との考えから、危険そうな遺跡に片っ端から挑戦することを繰り返していた。ある時、“粗末にすれば大きな災いが起こる”とされる祠を破壊した際、おじさんはそこに封じられていた強大な魔力の塊に襲われて窮地に陥る。ツンデレエルフやメイベル、アリシアたちの援護でどうにか体勢を立て直したおじさんは、「実体のない相手と戦うのは面倒だ」として、かつて自身で封じた魔炎竜を解放。魔力の塊を全て食わせた上でこれを倒すという、無謀な作戦に打って出る。
魔炎竜はかつて戦った時以上の力で暴れ回り、おじさんも苦戦を強いられる。ツンデレエルフが作戦を立て、メイベル、アリシア、エドガーやライガも力を尽くしたことでなんとかこれを撃破することに成功したおじさんは、彼女たちの協力に深く感謝する。一方、予想した通りに強大な力同士の激突により次元に穴を開けられることを確認したおじさんは、「日本に帰る手段」についてある程度の筋道を立てるものの、彼と別れたくないツンデレエルフに思い切り邪魔される。
そんな一部始終をおじさんの魔法で再現した映像を見届けたたかふみは、ようやく念願の本格的なファンタジーバトルを見ることができたと内心で満足していた。おじさんが目覚めて以来、それ以前では考えられなかった日々を過ごすこととなったが、今ではすっかり慣れて楽しんですらいる。今後もおじさんの冒険の話を堪能させてもらおうと考えるたかふみだったが、魔炎竜との戦いの後におじさんが全財産を没収された上に投獄されてしまったことを知り、彼のあまりに波乱万丈な異世界生活に頭を抱えるのだった。
『異世界おじさん』の登場人物・キャラクター
現実世界
おじさん
CV:子安武人
本名嶋㟢陽介。17歳の時にトラックに跳ねられ、以後17年間植物状態になっていた。物語の第1話が始まる少し前に目覚めるも、当初は日本語すらまともに話せない有様で、「誰が陽介を引き取るのか」で親戚が押し付け合いを始めていた。
実は植物状態にある間、その精神はグランバハマルという本物の異世界で大冒険を繰り広げており、現地では知る人ぞ知る隠れた英雄となっていた。目覚めた当初日本語が話せなかったのも、グランバハマルでの生活が長過ぎてそちらの言葉を使う癖が抜けなかったためである。
グランバハマルの人間は美形が多く、現代世界で平均程度の容姿の持ち主でしかないおじさんは「信じられないほどブサイク」という扱いで、モンスターと間違われて殺されそうになったこともある。このため冒険者としては相当な実力の持ち主だが、本人にその自覚は無く自己評価も極めて低い。修得した魔法を病室で使ってみせることで、たかふみに「おじさんの話は本当だ」ということを納得させ、以後彼のアドバイスで動画配信者としてデビュー。当面の生活の糧を得て自活する。
17年間現実世界で活動してこなかったため、スマホなどの機器は使いこなせず、最新の日用品を見るたびに「これはどう使えばいいのか」と頭を抱える。とある老舗ゲームメーカーのゲームをこよなく愛しており、同社がハード事業から撤退したことを知った時は驚愕と絶望にすさまじい衝撃を受けていた。
たかふみ
CV:福山潤
本名高丘敬文(たかおか たかふみ)。1人暮らしの大学生。年齢や名字が違う点からして、おじさんからすると姉の子に該当すると思われる。
目覚めたはいいが親戚の誰も引き取りたがらないおじさんの世話を押し付けられ、渋々ながら彼を見舞うようになる。なお、おじさんの処遇を巡る話し合いの場で「家族として言っちゃいけないこと言い合った」結果、彼自身の一家は離散している。当初はおじさんの語る異世界の話を夢か幻想の類だと決めつけていたが、彼が実際に魔法を使うところを見せたことで本当の話なのだと驚愕と共に受け入れる。
その後おじさんに動画配信者として金を稼ぐことを勧め、彼の日々の生活のサポートをする意味もあってルームシェアするようになる。おじさんが話す異世界での大冒険に興味津々である一方、そこで彼が味わった艱難辛苦があまりにも凄惨であることから、聞き過ぎてしまった自分の記憶を消してほしいと願ったこともあった。
おじさんが異世界で冒険を共にした女性たちからかなり明確な好意を寄せられていたことを察しているが、女性経験の無さからおじさんがそれにまったく気付いていなかったことを残念がっている。一方、自身も女性の好意に疎く、幼馴染である藤宮から特別な存在として意識されていることをまるで理解していない。
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