イカロスの娘(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『イカロスの娘』とは、1981年から1982年に小学館『ビッグコミックスピリッツ』に連載された全2巻のまんがで著者は御厨さと美(みく さとみ)。飛行機を操縦する魅力に取りつかれた15歳の天才少女が操縦免許を取得するため米国と日本を舞台に活躍する。飛行学校や飛行場での操縦の様子、アラスカ大地震での活躍、父との絆、初恋が描かれている。当作品はフィクションであるが、作品中に航空専門用語が多く使われ、実在の人物も登場する。また、1960年代の米国と日本を1980年当時の視点で描いている貴重な作品である。

女性飛行士。女性として初めて大西洋単独横断飛行をした。1937年に赤道上世界一周飛行に向かい遭難している。その遭難について色々な説が現れその中の一つに日本軍関与説がある。

VC(ベトコン)

南ベトナム解放民族戦線

ベトナム解放戦線。南ベトナム解放民族戦線ともよばれる。米国はベトコンと呼んだ。南ベトナムで結成された反米民族統一戦線のこと。

『イカロスの娘』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

日野「採点ミスです、『アイ・ダント・ホールド・ウイズ・イツ』」

1度目の帰国の後、高校での英語の試験で唯一間違いとされた問題。日野は、採点ミスと抗議する。彼女は「アイ・ダント・ホールド・ウイズ・イツ」を「そいつは承服できねえ」と訳した。採点した教師に「採点ミスです、『アイ・ダント・ホールド・ウイズ・イツ』」というが、大学入試にこのような下品な訳は通用しない、採点ミスではないと突っぱねられる。その「アイ・ダント・ホールド・ウイズ・イツ」はテキサス訛りの言葉であり、米国航空関係者の多くが好んで使っていた。このことで日野は、大学に合格する事を優先しておとなしい日本語訳文を選ぶのか、それとも米国の航空業界のニュアンスを選ぶべきのか悩む。「アイ・ダント・ホールド・ウィズ・イツ」の訳文をめぐる先生とのやり取りは、日本での大学生活か米国でパイロット免許を取るかのどちら側に進むか、彼女は自分が何になりたいのかを改めて考えきっかけとなる。そして自分が日本で大学に行きたいとは思っていないこと、そして自分がパイロットになりたいのだとはっきり分かり、渡米を決意する。

日野「私は、地上にいられない女、決めたの!あなたも決心して!今が『デシジョン・ハイト』(決定高度)よ」

「デシジョン・ハイト」とは、着陸する時、パイロットが滑走路に進入を続けるか、断念して進入をやり直すかを決定する高度の事である。アラスカ大地震の発生で日野が住むアンカレッジが壊滅した情報を聞いたドンは日野さやかを愛していることに気づく。そして倒壊した日野の家の近くに彼の飛行機で到着したドンは、日野に「愛してしまったんだ」と告白する。ところが日野は、いま愛の告白することより飛行機を使って被災者の救援を優先させるべきだと主張する。その時日野が言った言葉が「私は、地上にいられない女、決めたの!あなたも決心して!今が『デシジョン・ハイト』(決定高度)よ」。デシジョン・ハイトは復航か着陸かを決定する最後のポイントを意味する言葉である。彼女は自分が地上にはいられない女であり、ドンの妻として地上で働く女ではない。デシジョン・ハイトを超え、地上には下りずに復航することを決めているとドンに訴える。日野は彼の愛の告白を拒否した。そして一人でドンの飛行機に乗り込み、上空から救援活動を始める。

日野「芸事習いに行くんじゃないんだ、もっと大きいことを考えてるのよ、私は!」

日野は日本の大学に進学しない、高校を退学し、米国で事業用航空免許を取ると決心していた。父親の弱みをついて、渡米資金600万円貰う約束を取り付けた。父の弱みとは愛人が沢山いる事、そしてその一人一人の住んでいる場所を日野が知っていることである。父は渡米費用を出すことに納得できない、それ以上に娘の身の安全が心配で仕方ない。ある日父親は娘が米国で強姦される夢を見る。渡米費用を出すことを約束させられたが、それでも娘に渡米を思いとどまるよう免許はそのへんの飛行クラブでとれると説得を試みる。それに対し日野は「芸事習いに行くんじゃないんだ、もっと大きいことを考えてるのよ、私は!」と言った。当時の日本には、女性は仕事を嫁に行く前に腰掛程度の期間だけするモノという認識があった。しかし、この日野の「芸事習いにいくんじゃないんだ」という発言はそのブレインロックを吹き飛ばす威力があり、結局父親と源三の気持ちを変えた。

『イカロスの娘』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ドン・シェルドンによる植村直巳マッキンリー登頂の支援

タルキトナ歴史協会博物館

タルキトナはマッキンリーへの登山基地として有名な小さな町である。ここから多くのクライマーが出発している。アラスカで一二を争う優秀なブッシュパイロットが彼らを支援した。ブッシュパイロットのドン・シェルドンは、植村直巳がマッキンリー登山する時に支援したと言われる。タルキトナ歴史協会博物館はドン・シェルドンや世界の有名な登山家たちの思い出の品を展示する。

『風に賭ける』アラスカの山岳飛行士ドン・シェルドンの生涯 ジェームズ・グレイナー著

『風に賭ける』アラスカの山岳飛行士ドン・シェルドンの生涯 ジェームズ・グレイナー著

『イカロスの娘』に登場するドン・シェルドンは実在の人物である。彼は1950年代から1960年代にかけて、マッキンリー山に着陸する技術を開拓した。タルキトナから彼は登山者、ハンター、猟師などを陸上輸送ではアクセスできない場所に運ぶタルキトナ航空サービスを運営した。長年にわたり民間及び軍事の両方で数多くの救助活動を支援し、その支援に大したアラスカから功績証明書を授与された。彼の飛行機にはスキー、ゴム製の車輪、フロートなど様々な着陸装置が装備されていた。そして彼は伝説的なブッシュパイロットとして皆に慕われた。彼のアラスカの原野を飛び回った軌跡を知ることが出来る図書。

『イカロスの娘』アナログLP

『イカロスの娘』アナログLP

ビクター音楽産業株式会社からアナログレコードが発売された。

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